脱炭素化やデジタル化の潮流など関西電力グループを取り巻く事業環境は大きく変化。厳しい競争に打ち勝ち、持続的な成長を果たすには人財力強化が不可欠だ。関西電力グループの人財力強化に向けた取組みとは──
「発送電分離や脱炭素化、DXの加速など大きな変化が相次ぐなか、関西電力グループが持続的成長を実現していくには、従業員一人ひとりの成長を通じた人財基盤の強化が不可欠だ」
坂田道哉・人財・安全推進室長
電力会社を取り巻く環境変化と人財育成の必要性をそう語るのは、関西電力人財・安全推進室長の坂田道哉。同室では「ダイバーシティ推進」「『人財力』改革」「『働き方』改革・健康経営」を3本柱として、人財基盤強化に向けた施策を進めている。
その取組みの根底を担うのは、2018年に誕生した「関西電力グループアカデミー」。従来実施されていた各種研修や育成制度を刷新・体系化し、全従業員対象の「グループ経営理念学部」「基盤人財育成学部」「事業人財育成学部」と、選抜制の「次世代リーダー育成学部」の4学部で構成されている。
「アカデミーの役割は従業員の自律的なキャリア形成をサポートし、『人財力』を高めること」。そのために、さまざまなプログラムを用意しており、最近は価値創造研修、DX研修など、イノベーション・デジタル人財の育成に力を入れている。「当社役員による不祥事の反省を踏まえたコンプライアンスに加え、ハラスメントを含む人権問題も重要テーマに掲げ、意識醸成に努めている」と坂田は語る。
*1:経営企画室担当役員 *2:人財・安全推進室担当役員 *3:各事業部門長・関西電力送配電株式会社 社長
他にもさまざまな新制度の導入を進めており、キーワードは「多様性」だ。
「一人ひとりの『ちがい』を認め合い、活かせる会社でなければ、想定外の環境変化にも対応できない。ただ当社はチームワーク、適応力に優れたバランスの良い人が多い半面、バイタリティや創造的思考力はやや弱い。ここを強化していく必要がある」
具体策として、採用面では22年度から総合職とは別に“特定分野で高い活躍が期待できる人財”を採用する「新ビジネス創造コース」を設置したほか、23年度のキャリア採用予定数を前年度から倍増させ、幅広い経歴を持つ人財を募り組織活性化につなげる。
人財の育成・配属面では、グローバルビジネスや新規事業などに挑戦する社内公募制度「e-チャレンジ制度」を18年にスタートさせ、年々応募者が増加。21年度からは、発電所等の第一線職場の従業員の視野・経験を広げることを狙いとして、本店等の業務やプロジェクトに一定期間携わる「公募式短期駐在研修」も導入した。「いずれの制度も応募者のモチベーションは非常に高く、大きな可能性を感じている。ただ、公募制度で合格者を輩出した職場は優秀な人財が抜けることになり、どう両立させていくかは課題だ」。また、新制度の導入と併せて、発電所等の技術系人財の持つノウハウ継承も重要なテーマだ。
「OJTの強化や育成方法の見直し、指導者層への教育機会の充実を図ることで、専門技術の確実な継承や若手社員の早期戦力化を図る」と坂田は話す。
安全・安定供給を至上命題とするエネルギー事業の維持と、ときには失敗も大胆に許容することでなし得る新領域の創出。2つを両立させるためにも人財の多様性が大事と強調する。
「多様な人財が活躍する『働きがいのある会社』にするため、やれること、やるべきことは数多くある。そして働く誰もが『関西電力に勤めている』ことを誇れる会社にしたい」と坂田は力強く結んだ。
多様な人財の活躍が多くのビジネスアイデア創出につながる