現場取材|安定供給を守る
かんでん Update
2021.12.27

現場取材|安定供給を守る

契約して終わり、ではない

関西電力 エネルギー需給本部 灘儀 修一郎

関西電力 エネルギー需給本部 灘儀 修一郎

「昨冬の需給逼迫は、まさに数十年に一度の緊急事態。国内外から燃料をかき集め、なんとかギリギリ乗り切ることができた」

1年前の対応をそう振り返るのは、関西電力エネルギー需給本部の灘儀修一郎。05年の入社以来、ほぼ一貫して火力燃料の調達業務に携わってきたエキスパートだ。1年前の需給逼迫時には、石油火力の緊急フル稼動に伴う燃料調達に奔走した。

LNGが逼迫したそもそもの発端は、海外LNG設備のトラブルで供給量が減少したこと。当初は国内在庫の取崩しと追加調達で賄える計画だったが、「電源トラブルや寒波による電力需要の急増など、悪条件が幾つも重なり、LNGが足りなくなってしまった。そこでLNGが届くまでの2カ月を石油火力でしのぐべく、緊急調達を行うことになった」

海外から調達した石油は国内基地に一旦貯蔵した後、内航船で発電所へ輸送する。この作業が12月末から約1カ月にわたって続き、灘儀も連日配船手配や荷役調整などにあたったという。

関西電力 赤穂発電所での燃料受入

関西電力 赤穂発電所での燃料受入

「石油火力が減少した昨今、内航船を確保するだけでも難しい。しかも5000kl程度の内航船は風の影響を受けやすいので、風況が悪いと出入港もできない。風予報アプリ片手に、出荷を前倒ししたり、逆に少し待ってもらったり、細かい調整を日々繰り返した。燃料調達は契約交渉も大事だが、発電所に届かなければ意味がない」と、使命感を持って取り組んでいる。

大型船でLNGを輸送

大型船でLNGを輸送

輸送されてきたLNGを貯蔵するLNG基地

輸送されてきたLNGを貯蔵するLNG基地

安定供給を守る要衝

灘儀の現在の所属は燃料トレーディンググループ。LNGのスポット調達や余剰分販売などを行うグループのマネジャーとして、国内外の情報収集や分析、LNG船のオペレーション管理などを担当している。

「今冬はヨーロッパでガス価格が高騰し、アジアも連れ高になっている。日本周辺だけを見ていても対応できず、世界の情勢を広く収集・分析し、日々方向性に修正を加えながら、素早く調達行動や収益化につなげていかなければいけない」

LNG調達先の分散化

燃料部門全体でも、昨冬の需給逼迫を教訓にした取組みが進行中だ。燃料ポートフォリオの定期見直しや、大型電源トラブルなどのリスクを想定した調達シミュレーションは以前から行っているが、緊急用燃料の事前確保など、不測の事態に備えた対策のさらなる拡充に努めている。

「燃料部門は、お客さまへ安全に安定的に電気をお届けするための要衝。昨冬の需給逼迫を乗り切れたのも、社外関係者の皆さまに年末年始返上でご協力いただき、士気高く取り組んでいただいた結果だと思う。経営理念『あたりまえを守る』を地道に実践し、これからも電力の安定供給を下支えしているという誇りを持って仕事をしていきたい」。灘儀は表情を引き締めた。

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