電力の安定供給は電力会社にとって変わることのないミッション。関西電力グループでは昨冬の需給逼迫時の状況と対応を教訓に、供給力確保のため、具体的な対策を講じている。
2021年冬に臨む関西電力グループの取組みとは──
宮本 信之・関西電力執行役常務
発送電分離が実施され、新体制で初めて迎えた昨冬、電力量(kWh)が逼迫する近年にない事態に陥った。2020年12月~21年1月、寒波による気温低下で電力需要が急増したこと、複数の電源トラブルが発生したこと、火力発電所の発電量が増加し、燃料の在庫レベルが低下したこと等、複数要因が重なり、関西エリア全体の需給が逼迫。需給が最も厳しくなった1月12日には最大189万kWの電力融通を受けることとなった。
「昨冬は、お客さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変ご迷惑とご心配をお掛け致しましたこと、お詫び申し上げます」、そう切り出したのは関西電力執行役常務の宮本信之。
「関西電力と関西電力送配電は発送電分離で別会社になったが、需給逼迫時を含めた非常時に一体となって対応することが行為規制上も認められており、昨冬は両社一体となって対応を行った」
需給逼迫を乗り切るため電源のフル活用と燃料の緊急調達(関西電力)、自家発電の焚き増し要請・広域機関への需給逼迫融通の要請(関西電力送配電)、効率的な電気の使用のお願い(両社)等々、さまざまな対策を行った結果、なんとか停電という最悪の事態は避けられたが、綱渡りのような日々だったという。
「当社のような旧一般電気事業者は、自らのお客さまへの供給、エリア全体の需給を維持するための調整用電力の供出に加え、余力があれば全量卸売市場に出さねばならない。この3つの責務のバランスに苦慮しながら日々緊迫した対応を行った」
あれから1年。需給逼迫を回避するためにどのような対策をとっているのか。
「kWh(電力量)不足による需給逼迫はこれまで想定されていなかったこともあり、その場合の広域機関や事業者の役割が不明確な部分もあった。その反省に立ち、国の電力・ガス基本政策小委員会の検討も進んでいるので、制度面での対策は充実しつつある」
具体的には、各事業者のkWh(電力量)確保状況を把握するため、広域機関が2~4カ月前にモニタリングを実施すること、kWh(電力量)余力が不足する場合は発電設備の焚き増し等の需給対策を送配電事業者と広域機関とで協議することが決まっている。
同時に関西電力では、1年前に最も苦労した燃料調達のほか、発電所の計画外停止を防ぐため、熟練技術者による重点点検で設備の僅かな異常兆候を発見、対処するとともに、不具合時の早期復旧体制確立に努めている。
「昨冬、あの手この手で燃料確保に奔走するなかで、これまで経験したことがない交渉も行った。それらをオプションとして備えておくことで、より効率的で柔軟な燃料調達を行っていきたい。また、関西電力送配電として、需給逼迫時にはその解消に向けてご協力頂けるよう小売電気事業者、発電事業者および自家発保有事業者への情報の出し方等を工夫していきたい」
さらに昨冬の経験を踏まえ、関西電力と関西電力送配電のキーマンで構成する会議体を立ち上げ、対策等について検討を進めてきた。
「さまざまな体制を整え、昨冬と同じ轍を踏まぬよう対策を講じているが、依然として予断を許さない。国や広域機関と連携しながらも、最後にお客さまの暮らしや地域社会を守るのは、ライフライン事業者である我々だという覚悟を持って万全の準備で臨む」──宮本は決意を滲ませた。
高出力運転で安定供給を支える関西電力 赤穂発電所
火力発電所の巡視点検