水力事業本部 水力エンジニアリングセンター日本の高度成長期、1963年に完成した黒部ダム・黒部川第四発電所(くろよん)の建設は困難に挑むチャレンジ精神を育んだ。2019年9月に運転を開始したラオスのナムニアップ1水力発電所のダム建設は「第二のくろよん」とも称され、海外で関電スピリットを発揮する絶好の機会となった。
ナムニアップ1水力発電所は、関西電力が海外で開発を主導した初の大型水力発電所で出力は29万kW。タイとラオスに電力を供給し、地域経済の発展に貢献している。
「海外での水力事業は、日本で培った技術を発電所の建設や運用・保守に生かして現地の電力安定供給に貢献できること、CO2排出量の削減にも寄与することに意義がある」と話すのは、海外の水力事業に長く携わってきた中村和男。ナムニアップ1水力発電所のプロジェクトではダムと発電所建設工事で設計・施工管理を担当。加えて、工事全体の調整役として予算管理や労務管理など技術以外のさまざまな業務に奔走した。発電所の運転開始後は現地スタッフへの技術指導や技術課題への対応などの支援を行った。
ナムニアップ1水力発電所は、関西電力とタイ電力公社、ラオス国営投資会社が出資する事業会社によるIPP事業*1。事業会社がダムと発電設備を建設し27年間運用した後、ラオス側に譲渡するBOT方式*2を採用しており、長期的な収益確保に加え、人材育成の場としての役割も期待されている。「国内で大規模な水力発電の開発が難しいなか、海外プロジェクトは技術継承、若手育成に繫がる絶好の機会」
※1 自前の発電施設でつくった電気を電力会社に販売する事業
※2 事業会社が施設を建設し、一定期間管理・運営を行って資金を回収した後、公共に施設を譲渡する方式
ラオス ナムニアップ1水力発電所中村の今の仕事は、新たな海外水力プロジェクトを獲得すること。ナムニアップ1水力発電所プロジェクトでの経験は今の仕事にも生きているという。中村はルールやしくみが整備されていないなかで、財務・法務・労務などの知識を学び、事業会社のルールを自ら構築していった。身に付けた幅広い知識は政府や事業パートナーとの交渉の土台になっている。
ダム建設では、移転することになった少数民族の行事に参加するなど、信頼関係づくりに努めた。今も現地に行くときは簡単な現地語を覚えていくという。
水力発電は自然条件に大きく左右される難しい事業で、入念な調査が不可欠。ナムニアップでも10年以上調査と計画に費やした。「それだけに課題を乗り越えて形にしていく過程には大きなやりがいがある。現地で電気のない生活を体験すると電気のある『あたりまえ』の貴重さを肌で感じる。電気を必要としている国に届けられるよう新たなプロジェクトを進めていきたい」
「今日もこれから海外へ向かう」という中村。新たな海外水力プロジェクトの実現に向けた挑戦は続く。
関西電力 ソリューション本部関西電力グループは、エネルギー事業で培ってきた知見や地域との信頼関係を生かし、地域の持続的な成長とゼロカーボン化の実現に貢献するまちづくりに、一体となって取り組んでいる。
その1つが、2024年にオープンしたJR大阪駅北西部の大規模再開発「グラングリーン大阪」だ。関西電力は、計画段階から参画し、まちのコンセプト「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」の実現に向けたエネルギーやDXの検討を進めてきた。グラングリーン大阪では、エネルギー設備として、国家戦略特区制度を活用*1した全国初の帯水層蓄熱をはじめ、下水熱や地中熱の利用、バイオガス発電など、先導的な省CO2技術を導入。地域冷暖房やコジェネーションシステムとあわせ、環境負荷の低減につながるまちづくりを実現した。設備の導入、運用管理、メンテナンスは総合エネルギーサービスを担う関電エネルギーソリューションが担当。まち全体のエネルギー効率の向上に向けたエネルギーマネジメントに取り組む。「さまざまな省CO2技術の導入により年間576トンのCO2排出削減*2ができている。エネルギーで地域の皆さまの暮らしに関わってきた関西電力グループだからこそできるサービスでゼロカーボン社会を実現していきたい」と関西電力ソリューション本部の髙宮紀子は話す。
※1 国家戦略特区による規制緩和として建築物用地下水の採取に係る特例を適用
※2 サステナブル建築物等先導事業の実績報告
グラングリーン大阪で導入した帯水層蓄熱
髙宮が入社して、最初に関わったまちづくりは、関西電力本店が位置する大阪・中之島三丁目共同開発だ。2004年に完成した関電本店ビルは「環境共生のモデルビル」を打ち出し、周辺ビル群とともに、河川水を利用した地域冷暖房システムを導入した。「エネルギーを通じて環境との共生を実現することが関西電力グループのまちづくりの根底にある」と髙宮。
関電不動産開発 開発事業本部 都市開発事業部1997年に始まった中之島三丁目共同開発。現在、その総仕上げとして進められているのが、関電本店ビル東側の木質デザイン×環境配慮型オフィスビル。これを手掛けるのが関西電力グループで不動産事業を担う関電不動産開発だ。
「当社は不動産業界におけるゼロカーボンリーディングカンパニーをめざしており、それを具現化するモノづくりとして木質デザインに辿り着いた」関電不動産開発の吉田和司は“オフィスビルの木質化”という選択が最大の挑戦だったと話す。
建物の内外装に木質素材を採用するとともに、構造の一部にも木質建材を活用。木のぬくもりと安全性・機能性を両立したオフィス空間を創出する。また、木質素材を内外2層のサッシで挟み込む「木質アウトフレームダブルスキン」を採用することで内外共に木の構造を“見せる”デザインを採用するとともに日射遮蔽や空調負荷の低減など機能性にも優れた設計としている。河川水を有効活用した地域冷暖房システムの導入など、環境に配慮した設計や技術により、年間の一次エネルギー消費量を50%以上削減し、ZEB Ready認証*3を設計段階で取得している。
※3 高い断熱性能に加え、さまざまな環境配慮技術を採用することで年間の一次エネルギー消費量を50%以上削減した建築物に与えられる認証
関電本店ビル東側で建設が進む木質デザイン×環境配慮型オフィスビル中之島三丁目共同開発では、ダイビルと連携し、中之島にふさわしい街区形成に取り組んでいる。今回の計画では、関電本店ビル、ダイビル本館と2階レベルで接続する新たな歩行者デッキを整備し、土佐堀川から堂島川までをつなぐ歩行者ネットワークを形成。中之島四丁目の大阪中之島美術館をはじめとする既存の文化施設との回遊性向上を図る。
また、ダイビル本館の西側に位置する中之島四季の丘と連続する植栽を整備し、オフィス街の中で季節の変化を楽しめる中庭のような空間を創出する計画で、2028年に街区整備も含め完成予定だ。
31年には、なにわ筋線が開通し、中之島の西部に新駅が誕生する予定。大阪では南北軸に加えて夢洲から大阪城公園周辺地域までの東西軸が開発されつつあり、中之島はその結節点に位置しており、大阪のみならず関西経済における重要性も高まっている。
「都市開発の担い手として、持続可能で魅力ある中之島のまちづくりに貢献していきたい」と吉田。
「なにわ筋線の開通を見越し、まちづくりとエネルギー、さらにモビリティを組み合わせた『ゼロカーボンタウン』など、多様な都市機能を備えた最先端の魅力あるまちづくりに向けた議論が進んでいる。今後も地域の皆さまや関係者と協調しながら、地域やまちの新たな価値を創造し、育むことで、地域のさらなる発展に貢献していきたい」と髙宮。関西電力グループの挑戦は続く。
オプテージ ソリューション事業推進本部最後にオプテージを訪ねた。オプテージは関西電力グループにおける情報通信の中核企業としてDXやAXを支える社会インフラを担っている。
1985年の通信自由化を機に、長年電気事業用に通信設備・技術・人材を培ってきた関西電力は通信事業に参入。88年、光ファイバー事業会社である関西通信設備サービスを母体にスタートを切る。2000年、社名をケイ・オプティコムに変更し、ケーブルテレビ事業や携帯電話事業を含めて関西一円に広がる光ファイバー網を活用した個人向け通信事業を展開。03年には法人向け通信事業に乗り出す。19年、関電システムソリューションズの情報システム開発機能を統合し、オプテージが誕生した。
2024年から成長戦略の核と位置づけているのがデータセンター事業だ。自社の光ファイバー網と20年にわたるデータセンター運用で培ったノウハウを生かし、多様なアクセスポイントへ柔軟に接続できるコネクティビティデータセンターの開発を推進。26年1月、大阪市北区にオプテージ曽根崎データセンター(OC1)を開設した。
「サーバーラックのみを準備しているデータセンターと違い、既に光ファイバーを敷設しているためインターネットや他の事業者との接続に適している。オプテージ独自の光ファイバーネットワークを生かし、高速な通信サービスを提供できるのが特長」と話すのは、データセンタービジネス推進部の布本泰朗だ。建設には都心部の土地確保や省エネ技術導入など関西電力グループ各社と一体となって取り組んだ。
オプテージ曽根崎データセンター(OC1)サーバールームオプテージは26年度中を目途に福井県美浜町に生成AI向けコンテナ型データセンターの建設を進めている。こちらは生成AIの学習モデル構築に特化した郊外型データセンターだ。エンドユーザーにAIサービスを提供する都市部のデータセンターと光ファイバーでつなぎ、AI向けインフラのワンストップ提供を狙う。「生成AIの学習モデル構築に特化したデータセンターのため、都市部の設置は不要。当社の光ファイバー提供エリア内で柔軟なネットワークを提供できることや、自然災害の影響を受けにくいことなどを総合的に評価し、美浜町を選んだ」
AIの急速な普及や動画配信の増加などによりデータ通信量は右肩上がりで増えている。一方で、国内のデータセンター設備の約7割が首都圏に集中し、関西圏は3割に留まる。日本の通信インフラ強靱化には、首都圏のデータセンターのバックアップ機能が必要だ。オプテージはこうしたニーズをとらえ、大阪を中心に関西圏のデータセンター整備を進めている。
布本は「データセンター事業の成功がオプテージの次の成長につながる。重要な仕事に携わっていることにやりがいを持ち皆で汗をかいていきたい」と力を込めた。
福井県美浜町に開所するAI学習用データセンター