プレスリリース

2008年12月19日
関西電力株式会社

高浜発電所4号機の原子炉起動および調整運転の開始について

高浜発電所4号機 第18回定期検査の概要

1. 今回の定期検査を利用して実施した主要な工事
 (1)耐震裕度向上工事  (図−1参照)
   既設設備の耐震性を一層向上させるため、伝送器および、安全注入系統や余熱除去系統などの配管の支持構造物28箇所の強化工事を実施しました。

 (2)高サイクル熱疲労割れに係る対策工事  (図−2参照)
   国内外PWRプラントにおける高サイクル熱疲労割れ事象(温度ゆらぎによる疲労)を踏まえ、対策工事を実施しました。
 2系列ある充てん配管のうち、熱疲労が発生しやすい、使用していない1系列の充てん配管、隔離弁等を撤去しました。
 また、AおよびB余熱除去冷却器バイパスライン合流部の2箇所について、熱疲労が抑制できる合流部形状に変更するとともに、応力集中が小さい溶接形状に変更しました。
 さらに、余熱除去系統入口部1箇所と出口部1箇所において、熱疲労を抑制するため、配管ルートを変更しました。


2. 今定期検査中に実施した保全対策について
 (1)600系ニッケル基合金溶接部の応力腐食割れに係る点検・予防保全工事
(図−3参照)
   国内外PWRプラントにおける応力腐食割れ事象を踏まえ、600系ニッケル基合金が使用されている原子炉容器冷却材出入口管台、蒸気発生器出入口管台の溶接部について、超音波探傷検査や渦流探傷試験を実施しました。
 その結果、蒸気発生器入口管台の溶接部において、応力腐食割れによる傷が認められたことから、補修工事を実施しました。(末頁の6参照)
 原子炉容器冷却材出入口管台および蒸気発生器出口管台の溶接部では異常は認められませんでした。
 予防保全対策として、蒸気発生器出口管台の溶接部については、溶接部表面の残留応力を低減させるため、ショットピーニング工事*1を実施しました。


*1: 金属表面に金属の玉を高速度でたたきつけることにより、溶接部表面の引張残留応力を圧縮応力に変化させる。

 (2)2次系配管の点検等  (図−4参照)
  1 当社の定めた「2次系配管肉厚の管理指針」に基づき、2次系配管 1,619箇所について超音波検査(肉厚測定)を実施しました。
その結果、必要最小厚さを下回る箇所および次回定期検査まで必要最小厚さを下回ると評価された箇所はありませんでした。
     
  2 今定期検査開始時に計画していた263箇所の配管について、炭素鋼から耐食性に優れたステンレス鋼又は低合金鋼に取替えました。

 (3)格納容器ガスモニタ取替工事
   格納容器ガスモニタについて、伝送装置が製造中止となったことから、今後の保守性を考慮して、現在の電離箱式*2から同等の性能を有するプラスチックシンチレーション式*3のものに取り替えました。

*2: 放射線により電離箱内の格納容器内にあった空気(サンプルガス)が電子とイオンに電離し、それぞれプラスの電極、マイナスの電極に集まる。各電極の電子、イオンが電離電流として、監視盤へ送信される。
*3: 放射線が容器(プラスチックシンチレータ)内に入射すると微弱な光を発する。発生した光を増加させるとともに、電気信号に変換し、監視盤へ送信される。


3. 蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果 (図−5参照)
   蒸気発生器3台の伝熱管全数*4について渦流探傷検査を実施した結果、C−蒸気発生器の伝熱管1本で高温側管板*5部に、有意な信号指示が認められました。
 原因は、過去の調査結果から、蒸気発生器製作時に当該伝熱管を管板部で拡管する際、伝熱管内面で引張残留応力が発生し、これと運転時の内圧とが相まって、伝熱管内面から応力腐食割れが発生したものと推定されました。
 対策として、当該伝熱管を使用しないこととし、閉止栓(機械式栓)を施工しました。


*4: 既施栓管を除きA−SGで3,247本、B−SGで3,249本、C−SGで3,262本、合計9,758本。
*5: 蒸気発生器内の伝熱管が取り付けられている部品。伝熱管と管板で、1次冷却材と給水(2次側水)の圧力障壁となる。

9月22日10月3日 お知らせ済み]


4. 燃料集合体の取り替え
   燃料集合体全数157体のうち77体(うち60体は新燃料集合体)を取り替えました。また、燃料集合体の外観検査(50体)を実施した結果、異常は認められませんでした。


5. 次回定期検査の予定
   平成21年度冬頃  

6. 定期検査中に発生した安全協定に基づく異常事象
 蒸気発生器入口管台溶接部での傷について (図−6参照)
   蒸気発生器(全3台)の1次冷却材入口および出口管台の600系ニッケル基合金溶接部の応力腐食割れ予防保全工事の前に当該溶接部内面について渦流探傷試験を実施したところ、A、BおよびC号機の入口管台溶接部で有意な信号指示が36箇所で認められました。有意な信号指示が認められた箇所について、超音波探傷試験を実施したところ、最大深さが約16mmと評価されました。
 当該箇所の型取観察などを実施した結果、傷は複数の枝分かれや折れ曲がりの特徴が認められ、グラインダ施工跡が認められました。これらのことから、日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機での調査結果と同様、応力腐食割れの感受性のある600系ニッケル基合金溶接部で、高温の1次冷却材水質環境、グラインダ施工による引張応力が重畳して発生した応力腐食割れであると推定されました。
 対策として、傷が認められた箇所は、内表面全周を切削装置で一様に切削し、深い傷については、部分的にグラインダで切削して全ての傷を除去しました。
 その後、深く切削した部分は600系ニッケル基合金で補修溶接を行い、その上で全周を耐食性に優れた690系ニッケル基合金で肉盛溶接を行いました。
 また、念のため、溶接部内表面についてバフ施工を行い引張残留応力の低減を図りました。

以  上

本文へ戻る

プレスリリース