プレスリリース

2008年10月10日
関西電力株式会社

高浜発電所4号機の定期検査状況について(A、B、C-蒸気発生器入口管台溶接部での傷の原因と対策)

 高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット)は、平成20年8月23日から第18回定期検査中であり、国内外で発生した600系ニッケル基合金溶接部での応力腐食割れ事象を踏まえ、3台ある蒸気発生器(SG)の1次冷却材出入口管台溶接部(計6箇所)について予防保全工事※1を実施する計画でした。
 この工事のため、事前に入口管台溶接部内面について渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、A-SG入口管台溶接部で7箇所、B-SG入口管台溶接部で8箇所、C-SG入口管台溶接部で21箇所の有意な信号指示(最大長さ A-SG:約14mm、B-SG:約30mm、C-SG:約33mm)を確認しました。
 SG入口管台溶接部においてECTによる有意な信号指示が認められた36箇所について、傷の深さを確認するため超音波探傷試験(UT)※3を実施した結果、A-SGで最大深さ約12mm、B-SGで最大深さ約13mm、C-SGで最大深さ約16mmの傷と評価しました。
 この結果、AからCの各SGで、当該部の板厚が電気事業法に基づく工事計画書に記載の板厚※4を下回ること※5が分かりました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

平成20年10月3日 お知らせ済み]

  ※1: 予防保全工事
出口管台溶接部内面(3箇所)については、ショットピーニング工事(小さな金属球を高速で叩き付けることにより、溶接部表面の引張残留応力を圧縮応力に改善する工事)を、入口管台溶接部内面(3箇所)については、内表面を一様に切削し、耐食性に優れた690系ニッケル基合金で肉盛溶接する工事を計画している。
  ※2: 渦流探傷試験(ECT)
材料表面に渦電流を流して、材料に発生する電磁誘導の変化から検査対象の傷を検出する方法。
  ※3: 超音波探傷試験(UT)
構造物に入射した超音波が欠陥に当たって跳ね返ってくる反響を観測することにより、欠陥の形態、形状、寸法を測定する方法。
  ※4: 工事計画書記載値
予防保全対策工事(690系ニッケル基合金を用いた肉盛溶接補修)に伴い、工事計画書記載の板厚を75.26mmから66.5mmに変更した。(8月18日に当社が変更手続きを実施)
  ※5: 各SG入口管台の元の板厚は、A-SGが約76.6mm、B-SGが約77.5mm、C-SGが約76.8mm。


 傷が発生した原因を調査するため、A、B、C-SGの入口管台溶接部内表面における傷部の、外観目視観察および型取観察等を行った結果は、以下のとおりです。

1.原因調査結果 
(1) 外観目視観察および型取観察
   カメラによる外観目視観察や型取観察の結果、傷の周辺は全体的にグラインダ施工※6やバフ施工※7による仕上げ跡が認められ、傷には複数の折れ曲がりおよび枝分れがあることが確認されました。
 傷の特徴は、過去600系ニッケル基合金溶接部で認められている1次冷却材環境下における応力腐食割れと同様であることを確認しました。
   
 
  ※6: グラインダ施工
溶接部表面等に対して、電動工具等に取り付けた円形状の砥石で研削または研磨を行うこと。
  ※7: バフ施工
溶接部表面等に対して、電動工具等に取り付けた砥粒を付着させた布ペーパーを何枚も円形状に組み合わせたもの(バフ)で、グラインダ施工より細かな研磨を行うこと。
   
(2) 製造履歴調査
   当該SGは、プラント建設時に設置されたものであり、昭和55年10月から昭和58年9月の間に工場で製作されていました。
 当時の製造方法や検査記録を確認するとともに、関係者への聞き取り調査を行った結果、SGの製作手順は日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機のSGと同様に、SG管台とセーフエンドを溶接した後、溶接で生じた溶接部表面の凹凸を除去するため、グラインダ施工(研削)およびバフ施工が行われていました。
 また、手直し溶接等を実施した場合は、溶接部表面を弾力性のある砥石※8によりグラインダ施工(研磨)した可能性があることを確認しました。
   
 
  ※8: 弾力性のある砥石
弾力性を持たせた砥石で、グラインダ施工(研削)と比較して滑らかな研磨加工ができる。
   
(3) 文献調査
   600系ニッケル基合金溶接部については、加圧水型軽水炉(PWR)の1次冷却材環境下で、約300MPa以上の引張応力が残留していた場合、応力腐食割れが発生する可能性があると推定されており、国内外で、今回と類似した部位に損傷が確認されています。
   
(4) 表面加工状態確認試験結果との比較による表面残留応力評価
   当該SG入口管台は、日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機と同様の製作手順であることから、敦賀発電所2号機の原因究明において実施された表面加工状態確認試験の結果と、今回の型取観察結果を比較しました。   
 その結果、傷の周辺の表面状態は、グラインダ施工(研削)後のバフ施工でグラインダ施工(研削)が残った部位や、グラインダ施工(研磨)した部位と同様であることを確認しました。 
 これらの部位では、内表面に、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生する可能性がある約300MPaを超える引張残留応力が発生することが確認されています。
   
(5) 調査結果のまとめ
   外観目視観察や型取観察結果等から、傷は複数の折れ曲がりおよび枝分れが認められ、過去の1次冷却材環境下における応力腐食割れ事象と同じ様相を呈しており、溶接部内表面はグラインダ施工(研削)後にバフ施工が行われ、手直し溶接部等ではグラインダ施工(研磨)が行われたものと推定されました。
 また、敦賀発電所2号機の表面加工状態確認試験結果から、これらの部位では高い引張応力が残留し、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生している可能性が考えられました。
   
2.推定原因
   SG製作時、SG管台とセーフエンドとの溶接部内面の仕上げとして行ったグラインダ施工(研磨)した部位、またはグラインダ施工(研削)後にバフ施工した箇所でグラインダ施工(研削)の跡が残った部位の内表面に高い引張応力が残留し、1次冷却材環境下における応力腐食割れが発生したものと推定されました。
 また、割れは運転時の応力等により、軸方向に進展したものと推定されました。
   
3.対策
   SG管台溶接部の内表面を一様に切削後、残存する深い割れを部分切削で除去し、600系ニッケル基合金で肉盛溶接を行った上で、溶接部内表面全周に、より耐食性に優れた690系ニッケル基合金で肉盛溶接を行います。
 また、念のため、バフ施工を行い残留応力の低減を図ります。

以  上

  (経済産業省によるINESの暫定評価)
 
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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  INES:国際原子力事象評価尺度
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