地域版グリーン成長戦略

うめきた2期プロジェクト 都市公園全景(完成予想イメージ)

ACTIVE KANSAI
2021.4.30

ルポ|地域版グリーン成長戦略【うめきた2期|稲垣冬彦︱富田浩文︱大出 剛】

国による「2050年カーボンニュートラル」宣言を踏まえて策定された「グリーン成長戦略」は、産業構造や経済社会を変革し、次なる成長につなげるための羅針盤だ。国は方向性を示すが、実践するのは地域。ゼロカーボン化へ着実に歩みを進める関西地域での動きを追った。

うめきた2期|自然とテクノロジーが融合した大阪の未来都市モデル

大阪の未来都市モデル

都市公園南エリア(完成予想イメージ)

2020年12月、大阪最後の一等地と言われる「うめきた2期」の建設工事が始まった。「都心にこれだけ広大な『みどり』が整備されるのは類を見ない」と話すのは、うめきた2期開発事業者の代表企業である三菱地所の山本遼。

うめきた2期は「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」をまちづくりの目標に掲げ、街区中央部には4.5haの都市公園を、民間宅地内にはオフィス、ホテル、商業施設、住宅等の都市機能を整備。うめきた1期として13年に開業したグランフロント大阪の西側がみどり豊かな街に生まれ変わる。

ランドスケープデザインは、アメリカ・シアトルに拠点を置き世界で活躍する「GGN」がリード。土地の歴史や自然環境、生態系などを継承しながら、「大阪本来の豊かに潤った大地」を蘇らせる。公園は、大規模災害時には避難者の安全確保や帰宅困難者の一時避難スペース等の役割も果たす。

大阪の未来都市モデル

上/うめきた2期地区全景(完成予想イメージ)
左上/南街区賃貸棟(左:東棟、右:西棟)
外観(完成予想イメージ)
左下/南街区賃貸棟低層部外観(完成予想イメージ)
完成予想イメージはいずれも2020年12月時点のイメージパースであり、今後変更となる可能性があります。
(提供:うめきた2期地区開発事業者)

屋上緑化や最先端技術の導入により、環境負荷の低減やエネルギー効率化にも取り組む。地域冷暖房システムを導入、エリア内でエネルギーを融通できる構造にし、効率的に利用する。また地下水を多く含む地層(帯水層)から熱エネルギーを採り出して、建物の冷暖房を効率的に行う帯水層蓄熱も日本で初めて本格導入。街全体でエネルギーと資源の循環システムを構築し、CO2削減を目指す。

「SDGsの取組みが社会的に求められるなか、環境に関する先進的な取組みにおいても世界に発信できる都市空間にしていきたい」。24年夏の先行まちびらきが待ち遠しい。

*Gustafson Guthrie Nichol Ltd.
1999 年にキャサリン・グスタフソン、ジェニファー・ガスリー、シャノン・ニコルの 3 人が創立したランドスケープデザイン事務所。2017 年にランドスケープの権威に贈られるASLA 賞を受賞するなど、世界でも注目される。

山本 遼
山本 遼
三菱地所うめきた開発推進室兼グランフロント大阪室
https://umekita2.jp/

稲垣冬彦|大気からCO2だけを直接回収する夢の技術

植物がCO2を取り込むように、CO2を回収する技術開発が進んでいると聞き、神戸へ向かった。

大気中のCO2を直接回収するダイレクト・エア・キャプチャ(DAC)だ。DACの考え方自体は古くからあり、海外では既にプラント化されている。アミンという化合物をCO2の吸収剤に使うわけだが、アミンは親水性のため大気中の水分を一緒に取り込んでしまうのが弱点だ。CO2だけを取り出すためには加熱する必要があるが、加熱エネルギーの約8割が水分加熱に使われてしまい、効率が悪い。

水を含まない吸収剤をつくれないか——常識を覆す研究に取り組み、アミンに水を弾く成分を加えて大気中のCO2だけを吸収する吸収剤を開発したのが、稲垣冬彦・神戸学院大学教授だ。

「ヒントになったのは、創薬技術。水分がほとんどの人の体内で、水を弾き、標的となる場所で薬の効果を発揮させるため、緻密な設計がなされている。吸収剤の開発には、この技術を応用した」。結果、従来のアミン吸収剤に比べ含水率が10分の1以下に抑えられ、加熱エネルギーの大幅な削減が期待される。

 実用化にはコスト削減が課題だが、回収したCO2は地中や海中へ埋設するほか、高純度CO2としてドライアイスなどの材料にも活用できる。将来CO2をメタンやメタノールに変えてエネルギーとして利用する構想も視野に入っている。

「火力発電所などから出るCO2を回収・貯留するCCSは日本がトップレベルにある。DACでも海外勢を逆転し、ゼロカーボン化に貢献したい」。関西弁が好きで神戸に来たという稲垣教授は、関西からの技術発信に向け“全集中”の毎日だ。

CO2回収・貯留技術

吸収剤開発の様子

CO2回収・貯留技術

研究室で吸収剤の構造を説明する稲垣教授

CO2回収・貯留技術
稲垣冬彦
稲垣冬彦
神戸学院大学薬学部教授
1978年愛知県生まれ。金沢大学大学院自然科学研究科博士課程修了。薬学博士。金沢大学准教授を経て2019年より現職。
https://www.inagakilab.com/
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