現場取材|新たな価値を創造する
かんでん Update
2024.1.09

現場取材|新たな価値を創造する

中期経営計画の取り組みの柱の1つ「サービス・プロバイダーへの転換」。

徹底してお客さま視点に立ち、ニーズや課題と向き合うことで、お客さまに新たな価値を提供し続ける企業グループへの転換をめざす関西電力の姿を追った。

脱炭素と安定供給ニーズが増大

執行役常務 槇山実果 写真

執行役常務 槇山実果

「ゼロカーボン社会の実現に向けて、電化や再生可能エネルギーなど脱炭素電源へのニーズが拡大。エネルギーのプロとしてお客さまに多様なソリューションを提供できるチャンスが到来している」。こう切り出したのは、ソリューション本部を率いる槇山実果執行役常務だ。

電力自由化以降、新電力の参入により価格競争が激化し厳しい状況が続いてきたが、新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢の影響を受けて燃料価格の変動性が増大。安さだけでなく長期的な安定面を考慮して電力会社を選ぶお客さまが増えており、脱炭素と安定供給を両立するエネルギーのトータルマネジメントが求められるようになってきた。

こうした経営環境のもと注力しているのが、新たな価値を創造する「サービス・プロバイダーへの転換」。徹底したお客さま起点のもとで、暮らし、ビジネス、コミュニティ等の領域において、お客さまや社会のお役に立つサービスやソリューションを創出・提供することで、真のお客さま満足の追求と利益最大化を実現することがミッションだ。

まず、手ごたえを感じているのが、エネルギー分野での脱炭素ソリューション。法人のお客さまに対し、ゼロカーボン実現に向けた計画策定から具体策の実行まで、お客さまの実態に合わせたソリューションを提供する。「製造プロセスに高温の熱を必要とする電化が困難だった産業分野からも相談が増えている。2050年カーボンニュートラル実現には、サプライチェーン全体での取り組みが急務。ワンストップで各社の状況に合わせたソリューションを提供し、脱炭素社会の実現に貢献したい」

取り組みの柱 ゼロカーボンパッケージ

*系統電力のCO2をオフカット。排出原単位の逓減に従い、必要な証書購入量は減少していくと想定

スピード感を持ち一歩先のサービス開発を

世界のEV市場が急速に進展するなか、モビリティ関連サービスにも力を入れている。商用車のEV化を支援するほか、2025年大阪・関西万博では、大阪メトロが運行するEVバス100台に対し、EVバスの運行計画と連携して、充電時間や充電量を最適制御するエネルギーマネジメントの実証を行う。充電方式も従来の有線式の充電方法に加え、無線式の充電方法である走行中給電を活用した技術実証も実施する。また、万博を見据え「空飛ぶクルマ」の充電設備の整備にも取り組む。

EVの充電については、空調などの建物需要を考慮しながら、契約電力が上がらないように充電計画を立てることがお客さまのエネルギーコストを抑制する上で重要。また、太陽光の発電量が多い時間帯や電力の市場単価が安い時間帯に充電すれば、社会全体のエネルギーコストの低廉化に貢献する。「これらは、当社が長年培ってきたエネルギーマネジメントのノウハウをフルに活用できる分野。グローバルに戦う自動車メーカーやITのスタートアップ企業などと協業しながら、新時代のエネルギー・プラットフォームの担い手になっていきたい」と槇山常務。

他にも、デジタル化の推進により活況を呈すデータセンター事業をはじめ、情報通信、生活・ビジネスソリューションなど幅広い分野で事業開発を行っていく。

「お客さまに新しい価値を提供するには、求められるものを提供するだけでなく、お客さまが思いもかけなかった一歩先を見越したサービスの開発が重要。多様な企業と競争・協業し新たなサービスを生み出すには、今までにないスピード感や情報感度が求められる」と話す槇山常務は、率先して社外の人と対話し、世の中の動きをリアルに感じとるよう東奔西走。メンバーも外部の人からインスピレーションを得て能力を高めてほしいと促す。

「メンバー一丸となり、新しいサービスを開発し、できるだけ多くのお客さまに提供することで、将来の『あたりまえ』を形にしていきたい」。槇山常務は明るい声で抱負を語った。

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