ルポ|地域発イノベーション【石黒浩|メディカロイド|クボタ|スペースワン】

提供:2025年日本国際博覧会協会

ACTIVE KANSAI
2021.8.31

ルポ|地域発イノベーション【石黒浩|メディカロイド|クボタ|スペースワン】

クボタ|農業を魅力あるビジネスに──スマート農業

農業分野もICT(情報通信技術)やロボット技術で変化を遂げている。離農する農家からの農地委託などにより一農場当たりの耕作面積が大規模化。ICTやロボット技術の普及により、データに基づく農業や自動運転といったスマート農業が急速に進んでいる。

スマート農業にいち早く取り組んできたのが、大阪に本社のあるクボタだ。14年にPCやスマホを用いた圃場(ほじょう)(水田、畑など農作物を栽培する場所)管理や作業記録、農機から取得した作業データなどの営農情報を一元管理する「KSAS」(クボタスマートアグリシステム)を構築。16年からGPS位置情報を利用して自動操舵する田植機・トラクタ・コンバインを順次販売し、効率的かつ付加価値の高い農業へのアプローチを加速している。

自動運転コンバインと自動運転トラクタを連携させた
圃場内同時作業実証実験

提供:クボタ

アグリロボコンバイン

稲を刈り取るアグリロボコンバインの場合、田んぼの外周に沿って2~3周程度、人が操作して刈取りをすることでマップが自動生成され、残りの部分を自動運転で刈り取る。安全センサはまだまだ高価なため、人が乗って安全監視する必要はあるが、田んぼのぬかるみや凹凸に関係の無い高精度な走行制御と、無駄のないルート算出機能などにより、熟練作業者以上の効率的な刈取りができると農家の方々に大変喜ばれているという。また、コンバインには収穫量と米のおいしさを決めるたんぱく質含有量をリアルタイムで計測するセンサが搭載され、食味を付加価値とした仕分け販売や次年度の施肥設計に生かす取組みなど、データに基づく農業が進んでいる。

田植機とトラクタの有人監視下における無人自動運転は実現しており、今後は遠隔監視による完全無人化の実現に向けた開発が進むと予測される。収穫機技術部の仲島鉄弥は「完全無人化が実現すれば、管制センターでの監視や24時間作業も夢ではなくなる。熟練の技に頼ることなく、慣れない人でも従事できるようになる」と見る。スマート農業で就農する若者が増えれば、農業のイメージは大きく変わるだろう。

仲島 鉄弥
仲島 鉄弥
クボタ収穫機技術部
https://www.kubota.co.jp/

スペースワン|宇宙への玄関口 和歌山に小型ロケット打上げ射場

農業をはじめ多分野で活用が期待される小型衛星を宇宙に運ぶ小型ロケット打上げ射場が和歌山県串本町に誕生する。この射場から打ち上げられるのが、現在開発が佳境に入っている、スペースワンの小型ロケット「カイロス」だ。

ロケット発射場の完成イメージ図

ロケット発射場の完成イメージ図 提供:スペースワン

小型衛星の重量は100㎏前後から数㎏まで、大きさも段ボール箱からペットボトル程度まであり、光学センサなど電子部品の小型化・高性能化により、低コスト化と量産が可能になった。地球観測(リモートセンシング)による農業・漁業・林業・自然災害などの監視や衛星経由の高速インターネットサービスへの利用が見込まれている。

小型衛星の打上げは、大型衛星の空きスペースを借りて打ち上げる“相乗り”で行われてきたため、大型衛星の打上げスケジュールに合わせざるを得なかった。近年は、小型衛星を使った「宇宙ビジネス」に進出する民間企業が増え、より利用しやすい小型衛星専用の発射場が望まれていた。この状況を好機と見て、18年に発足したのが小型衛星の商用打上げサービスを提供するスペースワンだ。太田信一郎代表取締役社長は「お客さまの希望するタイミングで、希望する周回軌道に運ぶ“オンタイム・オンオービット” の宇宙輸送サービスを行う」と同社設立の目的を語る。

発射場の適地として選ばれたのが、本州最南端に位置する和歌山県串本町。「南方に島や陸地がなく開放されているという地理的条件に加え、住民や自治体、団体など地域の皆さんが歓迎してくれたことが発射場設置の決め手になった。発射場を観光や教育などの場として広く活用していただき、和歌山そして関西地域の盛り上がりにつながれば嬉しい」と太田社長。

この夏に発射場の土木工事等を終え、その後、発射設備の設置や各種試験を経て運用開始、将来的には年間20機の打上げを目指している。和歌山からロケットが宇宙に飛び立つ日が楽しみだ。

太田 信一郎
太田 信一郎
スペースワン代表取締役社長
https://www.space-one.co.jp/
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