ルポ|地域発イノベーション【石黒浩|メディカロイド|クボタ|スペースワン】

提供:2025年日本国際博覧会協会

ACTIVE KANSAI
2021.8.31

ルポ|地域発イノベーション【石黒浩|メディカロイド|クボタ|スペースワン】

IoTやロボット、AIなどの技術革新により社会は大きく変化。関西地域では、2025年の大阪・関西万博を前に、社会課題を解決するさまざまなイノベーションが生まれている。加速する関西地域の動きを追った。

石黒 浩|人間とロボットが共生する未来像 大阪・関西万博

2025年日本国際博覧会協会

提供:2025年日本国際博覧会協会

2025年大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。50年前の万博で描かれた高度な技術社会が既に実現した今、改めて生命の意味を考え、50年先の未来を形にして見せる場となる。なかでも人間と技術を融合させて「いのちを拡げる」パビリオンをプロデュースするのが、ヒューマノイドロボット研究者の石黒浩・大阪大学栄誉教授。1970年万博を象徴する「太陽の塔」の内部に仕組まれた生命の樹(原生動物から人間に至る生命の進化を示すオブジェ)の先にある、進化した人間の姿をロボット技術やアートで示したいと意欲を燃やす。

音声認識で人と自然に対話するアンドロイド
ERICA:ERATO 石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト

音声認識で人と自然に対話するアンドロイド
アンドロイドと人間が共演する演劇

アンドロイドと人間が共演する演劇
Geminoid™F:大阪大学と国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
石黒浩特別研究所による共同開発

アンドロイド「ERICA(エリカ)」

アンドロイド「ERICA(エリカ)」
ERICA:ERATO 石黒共生ヒューマンロボット
インタラクションプロジェクト

遺伝子工学や人工臓器の発達で、50年後には150歳ぐらいまで寿命が延び、体力や能力で差別されない社会が実現する、と石黒教授は予測する。パビリオンでは、そうした未来社会で可能になる多様な生き方や価値観をドラマ仕立てで見せる。劇作家とコラボし、30~50年後の学校、会社、病院、生活などのシーンを見せる予定だ。人間の俳優とアバター(遠隔操作ロボット)やロボットが共演する舞台としてリアルとバーチャルの会場を設定。その場にいなくてもアバターを使って体験、参加できる。アバターでの参加は、新型コロナウイルス後のイベントのあり方を示す先進例になるはずだ。

古代から人間は技術によって進化してきた。例えば、ワクチンやメガネも技術であり、技術なしでは人間は生きられない。その技術の結晶がロボット。「2025年大阪・関西万博で人とロボットが共生する未来像をわかりやすい形で見せ、ロボット社会、アバター社会の定着に繋げていきたい」。アンドロイドのいる研究室で話を聞いていると、教授の語る未来が垣間見えた気がした。

石黒教授とアンドロイドGeminoid™ HI-4
:大阪大学開発

石黒 浩
石黒 浩
大阪大学栄誉教授
大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー
1963年滋賀県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。大阪大学基礎工学研究科教授を経て現職。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所客員所長/ATRフェロー。
https://www.irl.sys.es.osaka-u.ac.jp/
http://www.geminoid.jp/ja/

メディカロイド|「hinotori™サージカルロボットシステム」国産初の手術支援ロボット

手術支援ロボット「hinotori(TM)サージカルロボットシステム」提供:メディカロイド

手術支援ロボット「hinotori™サージカルロボットシステム」提供:メディカロイド

20年12月、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センターで国産初の手術支援ロボット「hinotori™」を使った1例目の手術が成功した。ロボットを開発したのは神戸・ポートアイランドに本社を置くメディカロイド。産業用ロボットの実績を持つ川崎重工と検査・診断機器の大手シスメックスの共同出資による医療ベンチャーだ。

「hinotori(TM)」使用のようす

「hinotori™」は、内視鏡と左右の腕、予備の腕の計4 本のロボットアームを持つ。執刀医はコックピットに座り、内視鏡の画像を見ながら操作する。アームの手首を自由自在に動かすことができ、自分の手のように直感的に操作ができるのが特徴だ。アームの太さは人間の腕とほぼ同じ、関節数も通常のロボットアームより多い8軸にしたことでアーム同士や助手の医師との干渉を低減させ、より滑らかな動きを実現させた。また、ネットワークサポートシステムが標準装備されており、ロボットの稼働状況をモニタリングして手術中にリアルタイムでサポートを行うほか、今後はベテラン医師の手技をAIなどで解析して勘所を見つけ、医師の研修トレーニングなどにも活用していくという。

手術支援ロボットでは海外製の「ダヴィンチ」が先行するが、日本人医師が使用上不都合に感じる点があっても改善されることはほとんどなかった。「hinotori™」は国内外の医師の意見を聞き、細部にわたり改良を重ね、5 年がかりで製品化。開発にあたる臼木優は「これで完成というわけではなく、今後も医師と一緒に改善していく」と話す。

現在は泌尿器科の手術に用いられているが、今後他領域への拡大を目指す。将来的にネットワークサポートシステムを使えば、遠隔指導・支援も視野に入る。「現在、難しい手術は大学病院などの大病院に集約し、患者さんに来てもらっている。遠隔指導・支援が可能になれば、大学病院の専門医が他地域の医師をサポートしながら手術ができるわけで、大病院以外でも高度な手術が受けられるようになる」と開発責任者の北辻博明は将来性に思いを馳せる。医療のDXを担う手術ロボットとして「hinotori™」は羽ばたこうとし ている。

北辻 博明
左/北辻 博明
メディカロイド参与
右/臼木 優
メディカロイド開発部
https://www.medicaroid.com/top.html
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