企業の持続的な成長を実現するのは社員一人ひとり。皆が心身ともに健康で、働きやすさを実感しながら、個々の多様性を活かして活躍できる環境づくりを進める、関西電力グループの取り組みを追った。
人財・安全推進室長 坂田道哉生産年齢人口の減少やAI・DXの実装進展により、仕事の進め方や人に求められる力が大きく変化しつつある。
「変化する環境下においても、一人ひとりが心身ともに健康で、熱い思いを持って活き活きと働き、最大限のパフォーマンスを発揮することが企業の持続的な成長に繫がる。その鍵を握るのが社員のウェルビーイングだ」。人財・安全推進室長の坂田道哉はこう切り出した。
関西電力では、2000年以降採用数を一時的に抑えていた影響で社員の年齢構成に占める中間層の人財が相対的に少ない。「目の前の業務に忙殺されると、本来発揮できる力や熱量を損なう恐れがある。採用を強化するとともに、業務の高度化・効率化により、付加価値の高い仕事に注力できる環境を整え、働く魅力を高めていくことが必要」
関西電力グループは2021-2025年度の中期経営計画のもと「強靭な企業体質への改革」を進め、経営基盤の強化を図ってきた。特にここ2年は、4つの“高める”「個の能力を高める」「組織の能力を高める」「仕事の魅力を高める」「働き方の魅力を高める」を掲げ、社員の成長意欲やエンゲージメントを高める取り組みを進めてきた。

「個の能力を高める」では、副業支援や多様なキャリアに自発的にチャレンジできる社内公募制度を拡充し、自律的なキャリア形成を支援。2024年度には自己啓発費用の補助や、社内外の端末でいつでも受講可能な学習プラットフォーム導入により、社員の成長意欲を高めてきた。2025年度は、キャリアや貢献、成長に関するコミュニケーションを集中的に勧める「コミュニケーションweeks」を開始し、上司が部下の成長に真剣に寄り添い、成長を後押しする機会を充実させた。加えて、経営課題や新分野の事業開発に取り組むプロジェクト責任者を公募するプロジェクトリーダーチャレンジを導入。ほか、評価制度の見直しや段階的な定年延長などを行ってきた。
「組織の能力を高める」では、キャリア採用の拡大や副業人財受入れ等により人財の多様性を高め、多様な価値観や発想を組織の力へと変えてきた。また仕事とプライベートの両立支援制度も充実させ、2024年度には不妊治療休職、孫の看護休暇を導入している。
「働き方の魅力を高める」では、スーパーフレックスタイムや、事由・回数の制限なく活用可能なテレワーク等の制度を整備しており、働き方の柔軟性を高めている。心身ともに健やかに働けるための健康経営の取り組みにも注力している。
2025年度で中期経営計画を締めくくり、関西電力グループは次のフェーズへと歩みを進めていく。「激しく変動する事業環境のなか、変わらずに大切にしていきたいのは、社員にとって、会社に来るのが楽しいと思えること」だと強調する。
「価値観の多様化や生産年齢人口の減少、AIの急激な社会実装により、関西電力グループの力の源泉である人財に求められる役割や能力も、大きく変わっていくだろう。状況変化に素早く対応しながら人財戦略・施策を進化させ、社員が健康第一で、挑戦を楽しめる関西電力グループを築いていきたい」と坂田室長は締めくくった。
人財・安全推進室 人財戦略グループ 奥村穣里仕事に対するフィードバックは意欲に繫がり、成長を加速させる原動力だ。関西電力グループでは2025年度から上司と部下がキャリア形成や成長について集中的に話し合う機会を「コミュニケーションweeks」として実施。キャリアを考えるにあたり「もっとフィードバックが欲しい」「挑戦に対する評価をしっかりしてほしい」という社員の声を受けて始まった取り組みだ。「個の能力を高めるには、上司からのフィードバックが不可欠」と人財・安全推進室 人財戦略グループの奥村穣里は説明する。24年に食品メーカーから転職し、前職でも経験してきた人事業務を担当。コミュニケーションweeksの旗振り役として取り組みやすい仕組みづくりに力を注いだ。
実施時期は、3~4月と9~10月の年2回、上司と部下がじっくり話し合う機会をつくる。その時のサポートツールとして、部下が自身の強みや課題を記載する自己評価シートや、フィードバック時の注意点やポイントをまとめた上司向けサポートブックを用意した。
発電所などの第一線職場では、安全・安定運転の継続が重要。だからこそ「コミュニケーションweeks」を設定し、定型業務の改善など挑戦を評価する機会が大切だ。「コミュニケーションweeks」は部下からの気づきを聞き、職場をより良くするきっかけにもなる、という上司からの声もあった。
奥村自身もこれまで以上に上司からフィードバックを受ける機会が増えたと言う。「自分の強みを言葉にしてもらえることが自信になり、こうすればもっと伸びるといった成長ポイントを伝えてもらうことで、仕事のやりがいや挑戦への意欲に繫がっている」と奥村は話す。
プライベートも含めたキャリア相談がしやすくなり、相互理解が深まり、心理的安全性が高まるという効果もある。
「コミュニケーションを価値あるものにするには、上司だけでなく部下の姿勢も重要。自分自身がキャリアをどう描くかを持っていなければサポートも難しいのでは。人事担当としての視点に加え、社員としての視点を大切にしながら取り組みを進めていきたい」。2年目の「コミュニケーションweeks」に向けて挑み続ける。
コミュニケーションが職場業務の改善にも繫がる