誰もが率直な意見を気兼ねなく発言できる「心理的安全性」の高い職場を実現したい。パナソニックグループの社員が自発的に集まり立ち上げたのが、有志コミュニティ「ここからはじめる心理的安全性の輪」だ。2024年に生まれたコミュニティには、これまで4,000人以上の社員が参加。「社内でのコミュニケーションに課題を感じていたことがきっかけ」と立ち上げに携わったパナソニック インダストリーの高山将一さん。
活動は、イベントを通じて関心のある人を集める「種まき」、業務外の研修で参加者の行動変容を促す「水やり」、部門トップを招いたイベントなどで経営層も巻き込んでいく「発芽」の3ステップで進め、全て自主的な活動として実施。研修では、座学に加え、それぞれの職場を変えるために何をするかを設定し、グループで取り組み、行動変容に繫げていく。イベントは社内外の人を招き、心理的安全性をテーマにした講演を実施。「経営層に声をかけ社外有識者との対談を行うことも。ボトムアップで組織を変えたい」と高山さん。
コミュニティ活動の結果、参加者のエンゲージメント指数が約10ポイント上昇したが、高山さんは、「客観的な指数よりも、気持ちが落ち込み気味だった人が、心理的安全性について学び実践することで、前向きになれたという声をもらったことが一番嬉しい」と話す。
心理的安全性を基盤に、次にめざすのは「挑戦文化」の醸成だ。ゴールが明確でなくても今ある手段でできることから始め、実践を重ねるなかで目的を具体化していくエフェクチュエーションという考え方がある。「この考え方を学んだ宇宙に興味がある参加者が、JAXAベンチャーを招き挑戦をテーマにしたイベントを実施し活況だった。小さなことでも成功体験があれば、本業でも挑戦しやすくなる」と高山さん。「月曜が楽しみになるような職場にしたい」という共通の思いで繫がった有志コミュニティの挑戦は続く。
日めくりカレンダーで
心理的安全性の高い職場風土を醸成
社内外の人を招きセミナーを実施

iPS細胞から作った心筋シート
提供:クオリプス
患者のQOL(Quality of Life)を向上させ、ウェルビーイングに貢献する再生医療が、実用化の段階に入っている。再生医療とは、培養した細胞や組織を移植し、病気やけがで失った機能を回復させるもの。「これまでは治らなかった病気やけがの治療の可能性が広がることが再生医療の最大のメリット」と話すのは、未来医療推進機構理事長の澤 芳樹教授。大阪大学で再生医療研究を進め、京都大学の山中伸弥教授との共同研究でiPS細胞由来の心筋シートを開発。心筋再生治療のファーストインヒューマン(人に初めて投与する段階の治験)を成功させたパイオニアだ。2019年には産学医連携の未来医療国際拠点「中之島クロス」を設置し、心筋細胞シートなどの開発・製造を行うスタートアップ「クオリプス」を設立した。
心不全の治療向けの心筋細胞シートとパーキンソン病を治療する細胞製品が承認され、iPS細胞を活用した日本の再生医療は世界をリードしている。近年はアメリカ、中国の追い上げが激しく、「iPS細胞は日本の科学技術で育ち、社会実装する段階にあるが、ビジネス化するしくみができていない。人の命を救う行為がビジネスに繫がることが医療産業の特徴であり、再生医療のビジネス化を担うのが中之島クロス」と澤教授。
中之島クロスはスタートアップを育て、人材育成を図っていく場だ。そのために、スタートアップを経営戦略等で支援する海外のインキュベーターを集めている。サイエンスに資金を提供してビジネスに変え、世界に貢献するエコシステムを、大阪モデルとして普及させていくのが目標だ。
「正しい再生医療の発展のためには、エビデンスと安全性・有効性の検証、法律の順守が必要。再生医療を日本の産業に育て、世界の人々のウェルビーイングに貢献していきたい」
