社員の心身の健康や働きがいなどの視点からウェルビーイングへの注目が高まっている。
多様性の実現、働き方改革、心理的安全性の高い組織づくり、健康社会の実現──
ウェルビーイング実現に向けた取り組みを追った。
ウーマンズ パビリオンの施工管理チーム
ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier
©VICTOR PICON ©Cartier

大阪・関西万博で、女性のエンパワーメントをテーマにさまざまな発信を行った「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」。その建設を支えたのも女性たちだ。施工を担当した大林組では、女性中心の施工管理チームを組織。「女性が少数の建設業界で、総合建設会社である当社が、ウーマンズ パビリオンをきっかけに女性活躍を牽引したいという思いがあった」と、パビリオンに関わった大林組の赤松真弥さんは振り返る。現場所長以外の技術者4人全員が女性で組織された施工管理チームは、優れたリーダーシップを発揮して仕事を推進。男性が主導することが多い建築現場で女性が指揮を執ることに対する、社内外の漠然とした不安を払拭する事例になった。
どんなキャリアを望むかは人それぞれだが、「女性が現場で経験を積んでステップアップできる環境を整えるのは会社側の役割が大きい」と赤松さんは話す。

自身は周囲のサポートを得ながら仕事と家庭を両立してきたものの、建設業界で女性が働き続ける難しさに問題意識を抱いてきた。特に気になったのは、社内での縦横のつながりの薄さだ。現場事務所では、女性が1人ということも少なくない。身近に相談できる相手がおらず、悩みを抱えて現場勤務を離れる人も。そこで赤松さんは社内の同志とともに、2020年に同社大阪本店の全女性社員が参加する社内ネットワーク「NOON(Neo Obayashi Open Network)」を組織。仕事やキャリアをはじめ、さまざまな相談や情報共有ができる環境を皆で整えてきた。万博での女性施工管理チームの成功も、次世代のモデルの1つになるだろう。また赤松さんは、万博での出会いを機に、組織を超え全国のリーダーが集まるAtoW(Action to W)を立ち上げた。Wは、Wellbeing、Will、Wellness、Workを指し、全ての働く人が納得して充実したキャリアを築ける社会をめざし活動している。
全国の女性リーダーが集まる「AtoW」を組織
女性のエンパワーメントをテーマとしたイベントを実施
社会全体で女性活躍が進んできているなかで、「女性活躍のその先にあるダイバーシティのあり方をめざしていきたい」と赤松さん。長く男性が主導する職場と見られてきた建設業界で、万博での成果も踏まえ、さらに多様性を実現していくことが期待される。

キリンホールディングスが実施する「なりキリン研修」が働き方改革の好事例として注目されている。育児、親の介護などが必要になった時、どのように仕事と両立させるかを疑似体験し、当事者の立場を理解しようとする取り組みだ。
「なりキリン研修は、将来ママになった時に働き続けられるのかという若手営業女性の不安から生まれた。背景には営業職において、女性の両立モデルが少ないという問題意識があった」と話すのは人財戦略部 Well-Beingチームの瀧本真優さん。5人の女性社員が企画し、育児や介護など幅広いライフイベントとの両立を支援する研修として2017年にトライアル実施、19年から本格的に社内展開している。
研修中は周囲に「なりキリン宣言」を実施
参加者は1カ月間育児中や介護中という想定で時間制約のあるなかで働く。子供の発熱など保育園からの急な呼び出しも想定。事務局から月に1~2回ランダムに電話があり、電話を受けたらすぐに業務を終えて帰宅するルールだ。研修内容とキリンという社名を掛けたネーミングの面白さが「なりキリン研修」の浸透に一役買っている。
「多様な立場や働き方を理解し、支え合う意識づくりが社内に根づいてきた」と瀧本さん。自分がやっていないことを経験してみることで大変さを理解し、サポートやマネジメントのヒントを得られる。研修時はノー残業が基本なので、仕事の効率化にも繫がっており、「働き方は変えられると実感した」という参加者の声もある。「研修終了後、意識や働き方がリバウンドしてしまわないように、継続的な意識改革を行っていきたい」
