持続可能な社会実現へ。関西電力グループK4 Venturesが出資するベンチャー企業inaho、Ubie。関西電力が提供する社会貢献活動促進サービス「モアクト」に参加するゴールドウイン/オールバーズ、オムロン ソーシアルソリューションズ──
それぞれ社会課題解決に取り組む現場を訪ねた。
左右2本の収穫ハンドでトマトの房をはさみ、
農業の担い手不足が深刻化するなか、テクノロジーで支援するのがinahoだ。2050年には日本の農家数は2020年比84%減、生産額は52%減という試算もあるなか、「生産性向上に加え、新規就農への支援が不可欠」と代表取締役の菱木 豊さんは切り出した。
代表的な製品の1つは、ミニトマト収穫ロボット。AIが果実の熟度を判断してロボットで自動収穫するもので、オランダで導入試験が始まっている。国内農家では、マルチ台車ロボットの導入が進む。畑を自動走行する台車に人が乗車、収穫などの作業を行う。作業する人の負担が軽減し、効率も上がると好評だ。
ミニトマト収穫ロボット
収穫などの作業をサポートするマルチ台車ロボット
新規就農支援サービスにも力を注ぐ。農業は、設備投資が必要なうえ、技術習得に時間がかかることが参入障壁になっている。inahoでは、農業研修、農業用ロボットなど各種設備導入、販売サポートなど、技術習得の支援から生産管理のコンサルティングまでのサービスをワンストップで提供。「ベテラン農家の技術が100点だとして、新規参入者でも我々がサポートすることで70~80点からスタートできる。事業の予見性が高まり、参入しやすくなる」。AIやロボットによる自動化・省力化により、人材の確保が難しいなかでも対応できる。
AIが果実の熟度を判断する
「AIやロボットだからこそできることがたくさんある」と菱木さんは言う。例えば、作付けエリアごとの作物の熟度データを解析すれば、収穫見通しが立てやすくなる。欠品を恐れて控えめに契約し、余剰が出れば廃棄ということがなくなる。研究機関とともに、ロボットで収穫しやすい大玉トマトの開発を行うなどスマート農業を促進するための取り組みにも注力する。「自動化・省力化で生産性を上げること、参入しやすく事業継続していける環境を提供することで、農業を持続可能なものにしていきたい」と菱木さん。農業の未来のために、テクノロジーの活用に期待がかかる。

AIが対話で適切な医療行動を支援

「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに、医師とエンジニアが創業したUbie。2025年9月、医療AIパートナー「ユビー」の提供を開始した。
気になる症状がある時、まずインターネットで検索する人が多いが、無数の情報から最適な対応を選ぶのは難しい。Ubieの調査では、生活者の約7割が体調不良時の受診や治療などの各段階でなんらかの困りごとを抱え、適切な医療行動が取れない“医療迷子”になっているという。医療AIパートナー「ユビー」は、AIとの対話を通じて利用者が適切な医療にたどり着けるようサポートし、“医療迷子”の解消をめざす。
同社は、気になる症状から関連する病名を調べられる症状検索サービスを2020年から提供してきた。この知見をもとに開発した医療AIパートナー「ユビー」は、症状検索に留まらず、受診科の選択など次の一歩となる情報を共有。服薬履歴や受診歴のほか、AIとの対話を通じて個人の健康状態や関心事も記憶し、適切な医療行動が取れるよう伴走する。信頼性を確保するため、常に医師が監修した最新の医学情報ソースを活用するほか、大病院などの医療機関からフィードバックを受けるなどして情報や機能をアップデートしていく。「早期発見・早期治療は命を助けることだけでなく、医療費の適正化にも寄与する可能性がある」と医師で共同代表取締役の阿部吉倫さん。
阿部さんは、医師時代に血便を放置し48歳で亡くなった患者さんの事例をきっかけに創業し、「患者さんが最速で最適な医療にアクセスできる世の中をつくっていきたい」と話す。将来的には、蓄積した治療データをもとにした効果的な医療提供と適切な保険制度の改善に資するデータプラットフォームにすることも視野に入れている。
身近な医療課題の解決から社会保障への貢献まで、AI技術を活用したサービスに期待が高まる。
