ルポ│関西発! 世界で戦う
ACTIVE KANSAI
2024.4.30

ルポ│関西発! 世界で戦う

日の丸半導体の復権に向けて
業界支える京セラ

日本の半導体産業は競争力を失った——数年前までの定説が覆りつつある。政府の掲げる半導体戦略を追い風に関連各社が投資を拡大。半導体パッケージで業界をリードするのが京セラだ。

半導体パッケージは、ICチップが発する電気信号の入出力を行うケースで、ICチップの機能を最大限引き出す役割を担う。近年AIやデジタル化の進展に伴い半導体のさらなる能力向上が求められているが、ICチップの高度化・微細化は限界に達しつつあり、パッケージの技術開発を打開策にと期待が高まっている。「例えばチップレット。従来1つのチップに載っていた多様な機能を複数のチップでつくり、組み合わせ、あたかも1つのチップのように動かす技術。実現にはパッケージ技術の高度化が不可欠」と話すのは半導体部品セラミック材料事業本部の南 政明さん。

京セラが提供するのは、セラミックパッケージと有機パッケージだ。高い強度と耐熱性を持つセラミックパッケージは、5Gなど無線通信基地局、スマートフォンなどに使われており、最近はメタバースやロボティクス関連機器にも広がっている。高速伝導性や微細化に強みを持つ有機パッケージは、データセンターのサーバーやネットワーク機器に加え、自動車の先進運転支援システムでの採用が増えており、自動車分野ではトップクラスのシェアを誇る。

半導体部品有機材料事業本部の家倉和洋さんは「システム開発の提案、回路設計、シミュレーション、基板製造、実装までワンストップで提供でき、お客さまの多様な要望に応えられる技術力が当社の強み」と話す。セラミックパッケージは、日本、北米、アジアに生産拠点を持ち、各拠点でニーズに応えていくとともに、2026年には長崎県諫早市に新工場を設立する予定。有機パッケージは、京都綾部工場、鹿児島川内工場の生産設備を増強するなど、積極投資を続ける。 「AIや自動運転の進歩を見据え、デバイスメーカーの動きを先読みして開発を進めていく。日本の半導体産業復活に少しでも寄与できれば嬉しい」と控えめに話す南さんだが、かつて世界を席巻した技術立国日本の巻き返しに向けた強い意志を感じた。

南 政明
南 政明
京セラ 半導体部品セラミック材料事業本部 グローバルビジネス推進部責任者
家倉 和洋
家倉 和洋
京セラ 半導体部品有機材料事業本部 有機営業部マーケティング課責任者

学部全員留学
立命館大学・グローバル教養学部の人材育成

日本の国際競争力強化に向け人材育成の必要性が叫ばれる現在。学部全員留学というユニークなカリキュラムで注目されているのが、2019年開設の立命館大学グローバル教養学部だ。「国際経済の中心はアジア太平洋地域へとシフトしている。本学は、アジアやオーストラリアを新しいグローバルの軸と定義し、国際関係、文化、歴史、経営、ビジネスなどを学ぶ学部を設けた」と学部長の前川一郎教授。

グローバル教養学部のカリキュラム

グローバル教養学部のカリキュラム

大きな特徴は、オーストラリア国立大学と提携し、4年間で両大学の学位を取得できるデュアル・ディグリー・プログラムだ。4月入学の場合は2年生前期まで立命館大学・大阪いばらきキャンパスで学び、2年生後期から1年間オーストラリア国立大学に留学する。提携大学に留学し2つの学位をとれる仕組みは他大学にもあるが、立命館大学では学部生全員が対象。さらに25人の少人数教育で全ての授業を英語で実施。ディスカッションやプレゼンテーション形式の学びを多く採用し、物事を鵜呑みにせず深く考える力を養う。また学部生は寮生活が基本。同学部では定員100人のうち6割程度が留学生枠で、寮では日本の学生と留学生が共に暮らし、学び合う。「オーストラリア国立大学へ留学するには学力基準と英語スコア基準を達成する必要がある。加えてプレゼンテーションなどアウトプット型の授業を主体にしており、学生は本当によく勉強している。日本の学生は勉強しないというステレオタイプを打破できるカリキュラムと自負している」

同学部で学んだ学生は、高い英語力に加え、オーストラリア国立大学で学んだ知識、チャレンジ精神やバイタリティが多くの企業に評価され、学部第1期生である2023年度の卒業生は、外資系の大手IT企業やコンサルティング企業への就職を実現。「優秀な人材を輩出するとともに、グローバル社会の課題解決につながる研究を行い、世界に通用する学部、大学にしていきたい」と前川教授は意気込みを語ってくれた。

前川 一郎
前川 一郎
立命館大学 グローバル教養学部 学部長・教授
1969年生まれ。バーミンガム大学修士課程修了。2019年より立命館大学教授、2020年学部長。専門はイギリス帝国史。著書『歴史学入門―だれにでもひらかれた14講』など。
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