対談【山地憲治×村尾信尚】気候変動とゼロカーボン化
対談
2021.4.30

対談【山地憲治×村尾信尚】気候変動とゼロカーボン化

山地 憲治 ✕ 村尾 信尚

苛烈さを増す気候変動を背景に世界がゼロカーボン化へ動くなか、日本は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表、関西電力も「ゼロカーボンビジョン2050」を発表し、対策を強化している。「気候変動とゼロカーボン化」について考えた──

脅威を実感するも不確実性に満ちた温暖化

山地 きょうのテーマは「気候変動とゼロカーボン化」。昨秋、首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、関西電力も2月に「ゼロカーボンビジョン2050」を発表した。温室効果ガスをどこかで排出するが、どこかで削減し、相殺してニュートラル、ゼロカーボンにする。気候変動とゼロカーボン化をめぐる現状をどう見ていますか?

村尾 私は2006年から18年までニュースキャスターを務め、日々この手のニュースを報道。この間、台風や西日本豪雨などさまざまな災害が起き、「過去に例を見ない」とか「命を守るために」という言葉が頻繁に出て、地球温暖化の脅威を肌で感じました。温暖化や気候変動は科学的にも証明されているのですか。

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山地 80年代からの気温上昇は観測された事実です。だけど、温暖化問題の特徴は不確実性。CO2排出量はエネルギー使用量などで推測できるが、光合成で植物が吸収し、海も吸収していて、大気に留まるのは排出量の半分程度らしい。それがどの程度溜まると、どの程度温度が上がり、どの程度被害が出るか。この連鎖の間に不確実性が数多くあり、はっきりしない。
とはいえ、「2050年カーボンニュートラル」は、世界全体で足並みを揃える必要性から正しい判断だと思います。2050年は早過ぎる感はありますが。

SDGsで地球益を守る半面、国益増進を図る

村尾 気候変動対策は、中国などアジア新興国が追い上げるなか欧州諸国が新たなフェイズをつくって優位性を持とうとしているようにも捉えられ、国連のSDGsなども雰囲気づくりを図っているように見えます。

山地 SDGsは、以前のMDGsより出来がいい。7番目にエネルギー、13番目に気候変動があり、貧困や食糧問題も含む17のゴールで、バランスがいい。

村尾 私が気候変動問題で気になるのは、途上国vs先進国の対立。従来CO2を排出してきたのは先進国であり、途上国が応分の責任を負わされるのは納得がいかないと。それはどう考えればいいですか。

山地 化石燃料を大量に使って温室効果ガスを排出し続けたのは先進国であり、責任があることは事実。だから、京都議定書では先進国だけに削減目標を課したが、パリ協定では全ての締約国が自主的な目標を掲げた。地球規模の問題だから、みんなをお盆の上に載せた点では成功です。
ただ、各国の発言を聞いていると「2050年カーボンニュートラル」ときれいごとは言っているが、世界中で太陽光や風力など再生可能エネルギーが増えれば、ヨーロッパは洋上風力を、中国は太陽電池を大量に売り込める。温暖化の国際交渉といえども、やはり国益が背景にある。

村尾 日本もSDGsを視野に、地球や社会をよくするとともに、国益を高めるような戦略が必要ですね。

SDGs(Sustainable Development Goals)
国連が定める2015年から30年までの「持続可能な開発目標」。17の目標と169のターゲットで構成されている。

MDGs(Millennium Development Goals)
国連が定めた2000年から2015年までに達成すべき「ミレニアム開発目標」。8つの目標を掲げた。

GOALS
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