プレスリリース

2010年6月11日
関西電力株式会社

美浜発電所2号機の燃料集合体漏えいに係る原因と対策について

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力50万キロワット、定格熱出力145万6千キロワット)は、定格熱出力一定運転中の4月19日、1次冷却材中の希ガス(Xe−133)の濃度が、前回測定値から上昇していることを確認したため、燃料集合体に漏えいが発生した疑いがあるものと判断し、監視を強化しました。
 1次冷却材中のよう素(I−131)濃度は運転上の制限値に比べて十分に低い値でしたが、漏えい燃料の特定調査を行うため4月24日に原子炉を停止し、1次冷却材中の放射能濃度を低減させた後、原子炉に装荷された燃料集合体(121体)を使用済燃料ピットに取り出し、全数についてシッピング検査*1を実施しました。
 その結果、原子炉内で隣接して装荷されていた2体の燃料集合体(KABA10、KABC13)に漏えいを確認しました。
 漏えいを確認した2体について水中カメラによる外観目視検査を実施したところ、2体が隣接する面にある燃料棒3本(KABA10:2本、KABC13:1本)の第4支持格子下部で、燃料棒表面に傷のようなものを確認しました。また、3本のうち2本(KABA10:1本、KABC13:1本)には、燃料棒表面に白色の模様を確認しました。

  • *1: 漏えい燃料集合体から漏れ出てくる核分裂生成物(キセノン-133、ヨウ素-131など)の量を確認し、漏えい燃料集合体かどうか判断する。

平成22年4月19日23日6月1日お知らせ済み]

1.漏えい燃料の調査結果
(1)超音波による調査
  • ・漏えい燃料棒を特定するため超音波による調査*2を実施した結果、燃料集合体KABA10およびKABC13で漏えい燃料棒を1本ずつ確認しました。これらは、外観検査で傷のようなものを確認した燃料棒でした。
(2)ファイバースコープによる調査
  • ・漏えい燃料棒2本について、ファイバースコープを用いて詳細に目視点検を実施したところ、いずれの燃料棒においても第4支持格子の下で、燃料棒表面に削り取られたような傷を確認しました。また、KABC13の漏えい燃料棒1本の第5支持格子と第6支持格子との間で、二次的な水素化*3によると思われる燃料棒被覆管の膨らみを確認しました。
  • ・このファイバースコープの調査で、KABC13の漏えい燃料棒に隣接する燃料棒の第5支持格子内に異物を確認しました。
  • ・なお、外観検査で傷のようなものと白色の模様を確認したものの漏えいは認められなかったKABA10の燃料棒1本についても、ファイバースコープで調査した結果、第4支持格子の下で、燃料棒表面に削り取られたような傷を確認しました。白色の模様については、燃料棒表面に膨らみが認められなかったことから、燃料棒表面のクラッド*4の付着むらと判断しました。
  • *2:漏えいが発生した燃料棒の内部には水の浸入が予想されるため、超音波が燃料棒内を伝播する際の減衰を検出することで、燃料棒内部の水の有無を判断し、漏えい燃料棒を特定する。
  • *3:何らかの原因により燃料に1次破損が生じると、冷却水が燃料棒内に浸入して水素が発生する。被覆管は水素を吸収し、1次破損箇所から離れた場所で膨らみが発生する。
  • *4:1次冷却材中において、配管等の金属材料の酸化により生じる腐食生成物のうち、水に溶けないで存在する粒子状の金属酸化物の総称。
2.異物に関する調査結果
(1)異物の寸法、性状
  • ・異物は、長さ約22mm、幅約4mm、厚さ約0.3mmのゆるやかに湾曲した板状であり、表面には全体的にスケール(水に含まれる不純物が付着したもの)が見られ、一部に金属光沢がありました。また、成分分析の結果、材質はステンレスであることがわかりました。形状と材質から、配管等の保温材の外側に巻くステンレス板(以下「外装板」という)の可能性が高いと推定しました。
  • ・燃料棒の傷と異物の関係を見るため、模型により異物と傷を合わせてみた結果、それらの位置がほぼ一致したことから、今回の傷は異物との接触により生じたものと推定しました。
(2)混入時期、経路
  • ・混入時期については、異物表面の放射線量の測定結果から、前回定期検査時(平成21年4月3日〜平成21年7月23日)に混入したものと評価しました。
  • ・混入経路について調査した結果、異物は、燃料集合体下部ノズルの流路孔や、支持格子と燃料棒のすき間を通ることができない形状・寸法であったため、燃料下部から1次冷却材の流れにのって混入した可能性は低いものと判断しました。
  • ・このため、燃料上方の原子炉キャビティ*5廻りについて調査したところ、キャビティ廻りの床面には異物落下防止の柵が設置されていましたが、キャビティ近傍の蒸気発生器に設置された点検用架台(以下「SG点検架台」という)と架台下方のコンクリート壁との間に異物落下防止措置がなされていない開口部が認められました。
  • ・SG点検架台を点検したところ、グレーチング床の支持部に、保温材の修繕工事に伴い発生したと思われる外装板の切れ端等があることを確認しました。
  • ・また、前回定期検査の原子炉への燃料装荷中に、原子炉格納容器内の点検のため、当該架台を人が通行した実績があることを確認しました。
  • *5:原子炉容器の上部に設置しているプール。燃料取替え時に、ほう酸水を満たすことにより、燃料から放出される放射線を遮へいする。
3.推定原因
  •   前回定期検査の原子炉への燃料装荷中に、SG点検架台のグレーチング床の支持部にあった異物が、点検架台を通行する人の振動等により、SG点検架台とコンクリート壁との開口部から原子炉キャビティへ落下し、原子炉内に装荷されていた燃料集合体KABA10の第5支持格子に引っかかりました。
     その状態で隣接位置にKABC13を装荷した後、原子炉起動のために1次冷却材ポンプを起動したことにより、1次冷却材の流れにのって異物が第4支持格子の下に移動し、燃料棒とこすれて傷を発生、進展させました。
     その後、化学体積制御系統の空気抜き配管からの漏えいにより3月19日に原子炉を停止し、4月6日に再起動しましたが、この際の1次冷却材圧力の変動により、摩耗傷が進展していた1本目の燃料棒に漏えいが発生したものと推定しました。
     また、原子炉の再起動により、異物が第4支持格子下部の別の位置に移動したことで、新たな燃料棒とこすれて傷が発生、進展し、2本目の燃料棒の漏えいとなったものと推定しました。
4.対 策
  • ・漏えいが確認された燃料集合体については、再使用しません。
  • ・原子炉に装荷していた他の燃料集合体(119体)について、水中カメラによる外観点検を実施し、傷や異物がないことを確認しました。
  • ・原子炉容器の底部および下部炉心構造物について、水中カメラによる外観点検を実施し、異物がないことを確認しました。
  • ・SG点検架台の清掃を実施し、異物がないことを確認しました。
  • ・次回定期検査において、SG点検架台下部の開口部から異物が落下しないよう、金属板で開口部を塞ぐ措置を行います。なお、今回の燃料装荷時にはSG点検架台への人の立ち入りを禁止します。
  • ・現場作業終了時に作業場所周辺も含め確実に清掃を行い、異物がないことの確認を再徹底します。さらに燃料装荷前に、原子炉キャビティおよびその周辺について、異物がないことを確認することとしました。
  • ・本事象を社員および協力会社に周知し、燃料集合体に対する異物管理の重要性を再認識させます。

 美浜発電所2号機は、今後燃料装荷等の作業を行い、6月下旬に原子炉を起動する予定です。

以 上

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