プレスリリース

2009年4月17日
関西電力株式会社

原子力発電所の平成21年度保守運営計画について

 当社は、原子力発電所の平成21年度保守運営計画を策定し、安全協定に基づき、福井県、立地町等に提出しました。

1.運転計画の概要
(1)定期検査計画について【表−12参照

 定期検査計画については、「高い作業品質の確保」を目指し、メーカ、協力会社の方々のご意見・ご要望を踏まえた各種の労働安全・作業品質改善方策を取り入れています。
 設備保守については、耐震裕度向上工事をはじめとする信頼性維持・向上対策工事や、600系ニッケル基合金部の耐食性向上に向けた予防保全対策工事などを、引き続き積極的に実施してまいります。
 発電停止期間(定期検査:解列〜並列)は、今年度中に定期検査を終了する予定の9プラントの平均で、約3ヶ月を予定しています。

(2)発電計画について【表−1参照

 定期検査計画に基づき発電所を運転すると、当社原子力発電所の総発電電力量は約682億kWh(時間稼働率※1:約80.5%、設備利用率※2:約79.7%)となる見込みです。

  • ※1 時間稼働率: 1年間の暦日時間数(365日×24時間)に対し、実際に発電した時間数の割合。
  • ※2 設備利用率: 定格電気出力で1年間運転した場合の発電電力量に対し、実際に発電した電力量の割合。定格熱出力一定運転による発電電力量増加分を含む値。
(3)定期検査における新燃料取替計画について【表−3参照

 各プラントの定期検査において、装荷されている燃料の一部を新燃料に取り替えます。
 このうち、美浜発電所3号機および大飯発電所1号機から4号機の新燃料は、全て高燃焼度(55,000MWd/t)燃料とすることを計画しています。

2.原子炉設置変更許可申請計画

 平成21年度は、新たに予定している原子炉設置変更許可申請計画はありません。

3.主要設備の増設および改造工事計画の概要表−2参照

 保全計画に基づき、設備の信頼性維持・向上対策や運用および保守性向上対策として、表−2に示す工事を計画しています。なお、主要な工事としては以下のとおりです。

(1)大飯発電所3号機原子炉容器Aループ出口管台溶接工事【図−1参照

 大飯発電所3号機第13回定期検査(H20.2〜H20.11)において、傷が認められ研削した原子炉容器Aループ出口管台部について、600系ニッケル基合金で肉盛溶接(埋め戻し)後、接液部に耐食性に優れた690系ニッケル基合金を用いて肉盛溶接を行います。

(2)原子炉冷却系統設備小口径配管他取替工事【図−2参照

 国外事例を受けた予防対策として、原子炉冷却系統設備のうち、酸素型応力腐食割れの感受性が高いと考えられる通常運転時に高温水が通水されている系統に接続する閉塞分岐ラインについて、計画的に耐腐食性に優れる材料に取り替える(SUS304→SUS316)とともに、ソケット溶接箇所は突合わせ溶接に変更します。また、作業性を考慮し、弁も併せて取り替えます。 
 今年度は、高浜発電所1、2、3号機、大飯発電所1、2号機で実施する計画です。

(3)充てん配管1系列撤去工事【図−3参照

 弁シートリーク型熱成層に起因した高サイクル熱疲労に対する信頼性向上の観点から、2系列ある充てん配管のうち、使用していない1系列の充てん配管、隔離弁等を撤去します。
 今年度は高浜発電所3号機、大飯発電所3、4号機で実施する計画です。

  • ※ 弁シートリーク型熱成層
    閉止した弁の上流側から下流側に漏れ出た低温水(滞留していた水)が、弁の下流側で常時流れている高温水と合流する状態で生成される部分。
(4)耐震裕度向上工事【図−4参照
  • ○美浜発電所3号機周辺斜面対策工事
     耐震裕度を向上させるため、原子炉建屋周辺斜面にアンカー等を設置することで、斜面の安定性を向上させます。
  • ○支持構造物補強工事
     耐震裕度を向上させるため、耐震Sクラスのクーラや配管等について、支持構造物の補強工事を行います。
     現在、美浜発電所2号機、高浜発電所2号機、大飯発電所2号機で実施中であり、美浜発電所1、3号機、高浜発電所1、3号機、大飯発電所1、3、4号機についても今年度実施する計画です。
(5)耐震対応強化工事(新潟県中越沖地震を踏まえた対応)

 新潟県中越沖地震を踏まえ、消防自動車車庫の増設、観測用地震計の新設や取り替え等を行います。
 現在、美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所で実施中です。

(6)格納容器再循環サンプスクリーン取替工事【図−5参照

 原子力安全・保安院文書に基づき、一次冷却材喪失事故時における格納容器再循環サンプスクリーンの有効性評価を実施した結果を踏まえ、事故時における非常用炉心冷却設備の機能維持を図るため、表面積を拡大したスクリーンに取替えます。
 今年度は、美浜発電所3号機、高浜発電所4号機、大飯発電所4号機で実施する計画です。

(7)原子炉容器出口管台予防保全対策工事【図−6参照

 原子炉容器出口管台の600系ニッケル基合金溶接部について、応力腐食割れの予防保全対策として、内面全周を切削した上で、690系ニッケル基合金を用いて溶接を行います。
 今年度は、大飯発電所4号機で実施する計画です。

(8)加圧器管台取替工事【図−7参照

 加圧器管台の応力腐食割れ予防対策保全として、1次冷却材と接液する溶接部が600系ニッケル基合金の部位について、耐食性に優れた690系ニッケル基合金に取り替えます。
 現在、美浜発電所2号機で実施中であり、美浜発電所3号機、高浜発電所3、4号機、大飯発電所1号機についても、今年度実施する計画です。

(9)洗たく排水処理設備の改造【図−8参照

 ドライクリーニング設備と水洗処理設備を併用して作業着等の洗たくを行っていますが、今後、環境への配慮の観点から、代替フロンを使用しているドライクリーニング設備を計画的に撤去し、全量水洗処理とします。これに伴い、排水処理装置を取替および設置します。
 現在、大飯発電所3、4号機で実施中であり、大飯発電所1、2号機についても、今年度実施する計画です。

(10)廃液蒸発装置他取替工事【図−9参照

 信頼性向上の観点から、廃液蒸発装置で処理した濃縮液による応力腐食割れ防止を図るため、廃液蒸発装置の型式を浸漬式から濃縮液に含まれる塩素分が濃縮されにくい強制循環式に変更し、濃縮液と接液する箇所の材料をより耐食性に優れた材料に変更します。また、濃縮液を移送する配管についても、より耐食性に優れた材料に変更します。
 現在、高浜発電所1、2号機で実施中であり、大飯発電所1、2号機についても、今年度実施する計画です。

(11)ほう酸回収系統改造工事【図−10参照

 [ほう酸回収装置増設工事、ほう素熱再生装置撤去工事、ほう酸補助タンク他設置工事]
 大飯発電所1、2号機ほう酸回収設備の信頼性向上および運転員の負担低減の観点から、ほう酸回収装置(現状1基)を1基増設し、ほう酸回収(処理)機能の強化を図るとともに、ほう酸回収装置増設スペース確保等の観点から、現状使用していないほう素熱再生装置を撤去します。
 また、ほう酸回収系統の運用性向上の観点から、ほう酸回収装置で処理した濃縮液(高濃度ほう酸水)の貯蔵容量を増強するため、ほう酸補助タンク1基を設置します。
 現在、大飯発電所1、2号機で実施中です。

(12)蒸気タービン取替工事【図−11参照

 国外で発生した低圧タービン円板の部分一体ロータの円板翼溝部における応力腐食割れ事象の予防対策として、低圧タービンを、部分一体ロータから全一体ロータへ取り替えます。
 取り替えにあたっては、最新の信頼性向上技術、効率向上技術(最終翼の長大化等)を適用します。
 今年度は、高浜発電所3、4号機で実施する計画です。

(13)大飯発電所気象観測装置設置工事【図−12参照

 鉄塔などの高所に設置された風向風速計などの点検保守負担低減のため、地上付近で測定が可能なドップラーソーダ式風向風速計を3、4号機海水ポンプ電気室の屋上に設置します。
 今年度は、大飯発電所で実施する計画です。

4.新燃料・使用済燃料輸送計画の概要
(1)新燃料集合体輸送計画【表−4参照

 美浜発電所1、3号機、高浜発電所1、2、3、4号機および大飯発電所1、2、4号機の9プラントで、次回定期検査以降の運転に必要な新燃料を確保するため、国内外から合計416体を搬入する計画です。

(2)使用済燃料集合体輸送計画【表−5参照

 高浜発電所1、2、4号機および大飯発電所1、2号機の5プラントで合計294体の使用済燃料を、再処理を目的に受け入れ施設へ搬出する計画です。
 また、大飯発電所4号機では、漏えい燃料(55,000MWd/t)1体を照射後試験のため、ニュークリア・デベロップメント(株)へ輸送する計画です。

5.低レベル放射性固体廃棄物輸送計画の概要表−6参照

 美浜発電所および高浜発電所で発生した低レベル放射性固体廃棄物2,400本(充てん固化体2,400本)を、受け入れ施設へ搬出する計画です。

以 上

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