プレスリリース

2008年1月18日
関西電力株式会社

高浜発電所2号機の定期検査状況について(制御棒クラスタ動作検査時の制御棒動作不良の原因と対策)

 高浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力82万6千キロワット、定格熱出力244万キロワット)は、定期検査中の平成19年10月1日に制御棒クラスタ動作検査を行っていたところ、制御棒1本が動作不良のため、ほぼ全引抜き位置にあることを確認しました。
 その後、当該制御棒について、手動にて挿入および引抜き操作を繰り返し行った結果、全挿入位置まで挿入されました。
 原因調査のため、原子炉容器上部ふたを開放し、当該制御棒および制御棒クラスタが挿入されていた燃料集合体、制御棒クラスタをガイドする制御棒クラスタ案内管、制御棒駆動軸および制御棒駆動装置について、カメラによる目視点検等を行いました。
 その結果、制御棒クラスタ下部案内管のCチューブ(断面がC型形状の管)と、Cチューブを通過する制御棒クラスタ表面に筋状模様を確認しました。また、制御棒駆動軸の表面では、通常はラッチが噛みあわない部位にこすれ痕を確認しました。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

平成19年10月2日10月10日10月26日 お知らせ済み]

 筋状模様の発生原因および制御棒動作不良との関係等を調査するため、当該制御棒、制御棒クラスタが挿入されていた燃料集合体および制御棒クラスタ案内管の詳細点検を行うとともに、他の燃料集合体や制御棒クラスタ案内管および原子炉容器内についても点検を行いました。

1.当該制御棒等の詳細点検結果
 (1)筋状模様等の調査
  Cチューブと制御棒クラスタの表面に認められた筋状模様を詳細に観察した結果、筋状模様は金属光沢があるこすれ痕であり、相対的な位置関係にありました。
  制御棒駆動軸表面のこすれ痕については、制御棒駆動装置が正常に動作した際、制御棒が拘束された状態となったため、制御棒駆動軸と制御棒駆動装置のラッチ爪のかみ合いが通常の位置からずれたことにより発生したものと推定されました。
 (2)設備変形等の調査
  制御棒、燃料集合体、制御棒クラスタ案内管を詳細観察した結果、Cチューブと制御棒クラスタの表面に認められた筋状の模様以外は、制御棒の動作不良を起こすような変形等の異常は認められませんでした。
 (3)異物発見と制御棒動作不良との関係の調査
  Cチューブ周辺から、粉末状および薄片状の物質と微小な金属片3個が発見されました。発見された金属片のうち1個にはこすれ痕のような金属光沢面がありましたが、残りの2個については、黒褐色でこすれ痕がないことから今回の動作不良には関係しないものと推定しました。
  異物を成分分析した結果、鉄材、コンクリート、塗料と推定しました。また、放射線量が低いことから、今定期検査中に混入したものと考えられました。
  実機を模擬した試験装置で制御棒動作不良の再現試験を行った結果、Cチューブと制御棒クラスタの隙間に異物がはさまると、制御棒の動きを拘束することや、制御棒の挿入と引抜き操作の繰り返しにより、異物がCチューブ内に引き込まれ、Cチューブと制御棒クラスタの表面に筋状のこすれ痕を生じさせることを確認しました。
  その他、当該燃料集合体の案内管の底部から繊維状の異物を回収しましたが、今回の動作不良には関係しないものと判断しました。


2.原子炉容器内等の点検
  残りの燃料集合体と制御棒クラスタ案内管を点検した結果、今回見られたような顕著なこすれ痕や異物は認められませんでした。
  原子炉容器内を点検した結果、燃料集合体を載せる下部炉心板上に半割れの座金、原子炉容器底部に粒子状物質が認められましたが、座金には燃料集合体が載っていた変色跡が見られたこと、粒子状物質はフッ素樹脂で柔らかく、粒径が小さい(粒径1mm程度)ことから、これらの異物は今回の動作不良と関係しないものと判断しました。


3.異物混入経路の調査
(1)Cチューブ周辺で発見された異物
  今定期検査中に実施した1次系機器の作業や、使用済燃料ピットエリアでの作業を対象に、鉄材、コンクリート、塗料が同時に発生し、系統内に混入する可能性がある作業を調査したところ、原子炉容器上部遮へい設置工事※1が該当しました。
  この工事では、原子炉キャビティ※2近傍のコンクリート壁に埋め込まれたアンカーボルトの切断撤去を行っており、原子炉キャビティへの異物混入防止が十分でない状況で作業が行われていました。
   
※1: 原子炉容器上部遮へい設置工事・・・原子炉格納容器周辺建屋屋上における、原子炉運転中の放射線量を低減させるため、原子炉容器の上部に遮へい体を追加設置する工事。
※2: 原子炉キャビティ・・・原子炉容器の上部に設置しているプールで、燃料取替え時にほう酸水を満たすことにより、燃料から放出される放射線を遮へいする。
(2)その他の異物
  発生源の特定には至りませんでしたが、過去に原子炉キャビティ近傍で行われた作業で発生した可能性があると考えられました。


4.推定原因
  今定期検査中に実施した原子炉容器上部遮へい設置工事で発生した切粉(鉄材、コンクリート、塗料が混在したもの)が飛散し、原子炉キャビティ壁突起物等に落下した後、原子炉キャビティの水張り、水抜きおよび1次冷却材ポンプの起動による水の流れ等によって、切粉が当該制御棒クラスタ案内管内のCチューブ上面に移動したと考えられました。
  その後、制御棒クラスタ動作検査時に制御棒を引き抜いた際に、制御棒クラスタとCチューブとの隙間に切粉が落下し、制御棒挿入操作時にCチューブに引き込まれ、動作不良が発生したものと推定しました。


5.対 策
(1)当該機器への対策
  当該制御棒クラスタ下部案内管を、既に原子炉容器内に設置している現在使用していない下部案内管と交換します。
また、当該制御棒クラスタおよび制御棒駆動軸を新品に取替えます。
(2)異物混入防止対策
  原子炉キャビティ近傍で異物飛散の可能性がある作業を行う場合には、グリーンハウスを設置する(作業箇所を完全に覆う)などの飛散防止措置を確実に行うとともに、原子炉キャビティ壁突起物や遮へい体および原子炉容器上部ふたに養生を行ないます。
  水張り前の原子炉キャビティ内の清掃にあたっては、これまで実施してきた床面以外に、異物が残留する可能性がある原子炉キャビティ壁突起物等についても清掃します。
  原子炉キャビティの上を通って運搬する必要がある機器や資材については、運搬前に異物の付着がないことを確認します。複雑な形状等のために、十分な確認ができない場合には、シート養生を行い異物が落下しないようにします。
  今回の事象を当社社員、関係協力会社に周知し、原子炉キャビティ近傍での作業における異物管理の重要性を再認識させることとします。


 当該機器への対策を実施した後、調整運転の開始前までに、全ての制御棒について挿入操作を行い、正常に動作することを確認します。
 なお、今後の工程については、蒸気発生器入口管台溶接部の傷にかかる原因調査結果を踏まえて決定することとしており、現時点では未定です。

以  上

  (経済産業省によるINESの暫定評価)
 
基準1 基準2 基準3 評価レベル
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  INES:国際原子力事象評価尺度
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