プレスリリース

2004年11月16日

原子力発電所の運営状況について

当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1. 運転状況について(平成16年11月15日現在)
発電所 電気出力(kW) 運転状況 備  考
美 浜
発電所  
1号機 34.0万 停止中
美浜発電所3号機2次系配管破損事故に係る点検に伴う停止中。
「2次系配管点検結果について(タービン動補助給水配管の肉厚不足)」詳細は2-(1)のとおり。
2号機 50.0万 停止中
美浜発電所3号機2次系配管破損事故に係る点検に伴う停止中。
 
3号機 82.6万 事故停止中[第21回定期検査]
2次系配管破損事故(H16.8.9発生)により停止中(引き続き、H16.8.14~ 第21回定期検査)。
事故発生以降の状況等は都度お知らせ済み。
高 浜
発電所   
1号機 82.6万 運転中                             
(H16.11.14 運転開始30年)                    
 
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 第15回 定期検査中[調整運転中]
(H16.8.10~11月下旬定)原子炉起動10月26日、調整運転開始10月28日~。             
「蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果について」 詳細は2-(1)のとおり。
大 飯
発電所   
1号機 117.5万 運転中
第19回定期検査中(H16.6.4~)に美浜発電所3号機2次系配管破損事故を受け、2次系配管の点検のため停止していましたが、10月16日に調整運転を再開、11月10日に本格運転を再開しました。
「2次系配管点検結果について」 詳細は2-(2)のとおり。
2号機 117.5万 運転中  
3号機 118.0万 第10回 定期検査中(H16.4.20~ )
5月.4日、原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいを確認、現在、許認可手続実施中。本格運転再開時期は当初予定の6月下旬から遅れております。 
「原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいについて」 詳細は2-(1)のとおり。
4号機 118.0万 第9回 定期検査中[調整運転中]
(H16.9.25~12月上旬予定)原子炉起動11月3日、調整運転開始11月5日~。 
「2次系配管点検結果について」 詳細は2-(2)のとおり。

2.保全品質情報について(平成16年10月分)
実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則および電気関係報告規則に基づく報告事象や安全協定の異常時報告事象に該当する事象を含め、保安活動向上の観点から、産官学において情報共有することが有益である事象
(1) 法令に基づく報告事象や安全協定の異常時報告対象のうち重要な事象   
発電所名  高浜発電所4号機 発 生 日 9月6日(第15回定期検査中)
件  名 蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果について (添付図-1
事象概要
および
対 策 等

 定期検定期検査中、3台ある蒸気発生器の伝熱管全数(既施栓管を除く10,097本)について、検出精度、および深さ測定精度を向上させたマルチコイル型(インテリジェント)渦流探傷検査(ECT)を行った結果、339本の伝熱管のUベント部において、判定基準(20%)をわずかに超える有意な信号指示が認められました。
  有意な信号指示は、伝熱管外表面の減肉指示で、平成2年まで旧振止め金具が取り付けられていた位置に確認されました。また、従来方式のECT(DF-ECT)による検査を行い、過去の検査結果と比較したところ、減肉は進展していないことを確認しました。
  全ての信号指示は、先行してマルチコイル型(インテリジェント)ECTによる蒸気発生器の伝熱管検査を実施した高浜発電所3号機(第15回定検、H15.12~16.3)での信号指示と同様の特徴を示していました。なお、高浜発電所3号機においては、有意な信号指示が認められた伝熱管1本を抜管して調査した結果、旧振止め金具取付位置の伝熱管外表面の摩耗減肉であることが確認されています。
  これらのことから、これまで実施していた通常のECTでは判定基準内としていたものが、マルチコイル型(インテリジェント)ECTでは、判定基準をわずかに超える有意な信号指示として検出されたものと推定しました。
  対策として、信号指示が認められた伝熱管339本に閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととしました。

9月7日10月26日 お知らせ済)

発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 5月4日(第15回定期検査中)
件  名 原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいについて (添付図-2) 
事象概要および対 策 等

 定期検査中、5月4日、原子炉容器上部ふたの管台70箇所の外観目視点検準備を行っていたところ、制御棒駆動装置取付管台1箇所(No.47)の付け根付近に白い付着物(1次冷却水に含まれるほう酸)を確認しました。ほう酸は当該管台の周囲にのみ認められたことから、当該管台からの漏えいであることが確認されました。
  また、他の管台(69箇所)についても点検を行ったところ、5月5日、温度計取付管台1箇所(No.67)の側面および付け根付近にも、付着物が確認されました。

5月6日お知らせ済)

 制御棒駆動装置取付管台(No.47)の漏えい箇所を特定するための検査を行いました。その結果、へリウムリークテストにより、原子炉容器上部ふたと管台との溶接部で漏えいが確認されたこと、渦流探傷検査(以下「ECT」)により、溶接部の270°付近に有意な信号指示が確認されたこと、また、浸透探傷検査、スンプにより、浸透指示模様の位置に半径方向の割れが認められ、形状は結晶粒界に沿った直線状で枝分かれした割れであることが確認されたことから、漏えいは溶接金属内での半径方向の割れが貫通し、漏えいに至ったものと推定しました。
  なお、温度計取付管台(No.67)については、ヘリウムリークテスト、ECT、超音波探傷検査を実施しましたが、漏えいや有意な信号指示は認められず、点検記録を確認した結果、平成3年の建設試運転時において、上部のシール部で1次冷却水(ほう酸水)が漏えいした事象があり、その漏えいしたほう酸が十分に拭き取られず、漏えい跡が残っていた可能性が高いと推定しました。                         

7月9日 お知らせ済)

 その後、制御棒駆動装置取付管台(No.47)の溶接部の割れについて調査を行いました。
1. No.47管台の割れの発生メカニズムの調査
 溶接部表面を手入れ実施後割れを観察したところ、結晶粒界に沿った比較的直線状の割れが認められ、割れの特徴として、溶接金属表面よりも内部の方で割れが長く、結晶粒界に沿った割れであることが確認されました。 
  割れの発生は運転中に発生した1次冷却水中の環境下における応力腐食割れ(以下「PWSCC*1」という)あるいは溶接欠陥等の可能性が考えられることから、割れの初期発生メカニズム究明のため、調査を実施した結果、割れの特徴等から、初期に発生した割れは溶接施工不良等による欠陥の可能性についても否定できないものの、当該管台270°付近において、溶接部の表面仕上げ(バフ仕上げ)が行われていなかったことに起因して、溶接部表面に比較的高い引張り残留応力が発生していたことにより、PWSCCが発生した可能性が高いことが確認されました。
*1:PWSCC: 1次冷却水中の環境下で発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ
  (材料の強度および腐食環境、発生応力の3要素が重なって発生する割れ)

2.No.47管台の割れの進展メカニズムの調査 
 管台溶接部内部において、PWSCCの特徴である結晶粒界に沿った枝分かれした形状の割れが認められていることから、運転環境下において、割れが進展し、貫通に至るかどうかの解析評価を行った結果、初期の割れが生じた状態においては、大飯3号機のプラント運転時間(約10万時間)でも割れが溶接部内部を進展し、貫通に至る可能性があることが確認されました。
 
 
 これらのことから、管台溶接部において、表面仕上げが不十分であったことに起因して発生したPWSCCを起点として、1次冷却水中の環境下において溶接金属内をPWSCCが進展し、貫通に至ったことにより、漏えいが発生したものと推定しました。なお、初期の割れについては、溶接施工不良等による欠陥の可能性についても否定できません。 
  対策として、以下について実施することとしました。
(1)原子炉容器上部ふたの補修等 
・当該管台溶接部について、1次冷却材圧力バウンダリ*2としての健全性を確保するとともに、PWSCCの進展防止のため、耐食性に優れた690系ニッケル基合金を用い管台溶接部全表面に溶接補修を実施することとし、そのための工事方法等に関して国の安全性確認を受けるため、電気事業法に基づく許認可手続きを開始します。
・長期的な信頼性確保および保守性の観点から、次々回定期検査時に、管台部(溶接部および母材部)に耐食性に優れた690系ニッケル基合金を用いた原子炉容器上部ふたに取り替えることとします。また、原子炉容器上部ふた取り替え後、管台部をサンプリングし、詳細な調査を行います。
*2: 原子炉圧力容器や、1次系配管など、事故時に冷却水を高温・高圧に保持するための、圧力を保持する器壁や管壁の総称
(2)今後の点検、漏えい監視の強化等 
・原子炉容器上部ふたの取り替えを行うまでの間、運転中において、原子炉容器上部ふた管台部からの漏えいを早期検知するため、漏えい監視装置を設置します。 
・次回の定期検査時に、原子炉容器上部ふた管台部全数について、保温材を取り外して外観目視点検を行い、漏えいの有無を確認します。
(3)原子炉容器上部ふた管台部に600系ニッケル基合金を使用している大飯4号機、
   高浜3号機、高浜4号機の対応
・定期検査中の大飯4号機および高浜4号機については、管台部全数について外観目視点検を行い、漏えいがないことを確認しました。高浜3号機については次回定期検査時に、管台部全数の外観目視点検を行い、漏えいの有無を確認します。なお、管台部全数の外観目視点検については、当面の間定期検査毎に実施します。
・高浜4号機および大飯4号機は今定期検査中に、また高浜3号機については次回定期検査時に、念のため、漏えい監視装置を設置し、漏えい監視の強化を図るとともに、690系ニッケル基合金を用いた原子炉容器上部ふたへの取り替えを計画します。
 
10月19日 お知らせ済)
発電所名  美浜発電所1号機 発 生 日 10月19日(停止中)
件  名  2次系配管点検結果について(タービン動補助給水配管の肉厚不足) (添付図-3
事象概要および対 策 等

 美浜発電所3号機2次系配管破損事故に伴う点検停止中のところ、10月15日に発生した日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機の「A低圧給水加熱器ドレンタンク常用水位制御弁下流側配管からの漏えい」事象を受け、漏えい発生箇所と同じ1箇所について、既に肉厚測定を実施し、計算必要厚さを十分満足していることを確認しました。 
  また、漏えい発生箇所と類似箇所である制御弁下流側配管のうち、過去に点検実績のない箇所、および余寿命が10年未満の箇所の合計15箇所について点検を行うこととしました。

10月19日 お知らせ済)

 タービン動補助給水系統のB補助給水流量調整弁下流側配管の肉厚測定の結果、配管の一部が法律に基づき国に報告する対象となる厚さ(5.8mm)を下回っていることを確認しました。(測定最小値 5.6mm)
  当該配管以外の14箇所については、法律に基づき国に報告する対象となる厚さを満足していることを確認しています。
  B補助給水流量調整弁下流側配管を切断し、内面観察等の調査を実施した結果は以下のとおりです。

1. 調査結果
(1)配管内面観察結果
 エロージョン・コロージョン特有の鱗片状模様はなく、減肉は認められませんでしたが、切削(シンニング)加工跡を確認しました。
※ シンニング: 配管突合せ溶接部を平滑化するために、接合部内面を切削すること。これにより配管の肉厚は他の部分より薄くなる。


(2)寸法計測結果
・肉厚測定で最小値が測定された箇所は、シンニング加工部であることを確認しました。
・配管内径を計測した結果、当該調整弁の内径の方が配管内径よりも約6mm大きく、当該調整弁の内径にあわせて、配管内面がシンニング加工されていたことを確認しました。
・当該配管のシンニング加工部の偏心状況を確認したところ、肉厚測定で最小値が測定された対面の肉厚測定値は約7.2mmと厚くなっており、偏心して加工されていたことを確認しました。
(3)建設時の施工管理の調査
  当該配管は、昭和45年の建設時に現地で溶接されていますが、開先加工装置で加工する際の芯だし(中心決め)は、目視で実施していたことから、シンニング加工時に偏心が発生する可能性があると推定されました。
2.同系統のシンニング加工部の肉厚測定
 追加点検として、当該調整弁上流側配管およびA補助給水流量調整弁上流側配管について肉厚測定を実施した結果、A補助給水流量調整弁上流側配管の一部が、法律に基づき国に報告する対象となる厚さ(5.8mm)を下回っていることを確認しました。(測定最小値 5.7mm)
  当該配管についても、切断し調査を行ったところ、B補助給水流量調整弁下流側配管と同様にシンニング加工跡が確認され、その一部について、法律に基づき国に報告する対象となる厚さを下回っていることを確認しました。
  また、当該配管のシンニング加工部の偏心状況を確認したところ、肉厚測定で最小値が測定された対面の肉厚測定値は約7.8mmと厚くなっており、偏心して加工されていたことを確認しました。
  これらのことから、原因は、配管内面観察結果等から、配管内面シンニング加工後の配管厚さが、法律に基づき国に報告する対象となる厚さに対して余裕が少なかったところに、配管と開先加工装置との間にわずかに芯ずれが生じたことにより、法律に基づき国に報告する対象となる厚さを部分的に下回る部位が生じたものと推定しました。
10月25日 お知らせ済)

その後、対策として、法律に基づき国に報告する対象となる厚さを下回った2箇所の配管については、同種材料の配管に取り替えました。 

(10月26日完了)


(2) (1)に至らない軽微な事象
発電所名  大飯発電所1号機 発 生 日 第19回定期検査中
件  名  2次系配管点検結果について   
事象概要
および
対 策 等

 定期検査の調整運転中において、美浜発電所3号機2次系配管破損事故を受け、9月24日~10月15日の間、原子炉を停止し、美浜3号機で破損した配管と同位置にあるオリフィス下流部他14箇所について点検を実施しました。
  その結果、全て計算必要厚さを満足していることを確認しました。
  なお、「配管減肉に関する調査結果」報告書(8.18提出)の報告内容に関する調査の過程において、前回定期検査(H15. 4~7)で測定した配管に余寿命が短いため肉盛補修を行っていた箇所(低圧第4給水ヒータドレン管レジューサ部)が確認されたことから、当該部について、肉厚測定を行った結果、計算必要厚さを満足し、次回の定期検査までの間は問題がないことを確認しましたが、肉盛補修を行っていたこと、および余寿命が0.3年と評価されたことから、当該配管を同材料・同寸法の配管に取り替えました。

10月8日 お知らせ済)

発電所名  大飯発電所4号機 発 生 日 第15回定期検査中
件  名  2次系配管点検結果について   
事象概要
および
対 策 等
 定期検査において、当初2次系配管283箇所の点検を計画していましたが、美浜発電所3号機2次系配管破損事故を踏まえ、805箇所を追加し、合計1,088箇所について、点検(肉厚測定)を実施しました。
  その結果、計算必要厚さを下回る部位が1箇所確認されたことから、当該配管を同材料・同寸法の配管に取り替えました。なお、この1箇所以外の部位については、全て計算必要厚さを満足していることを確認しました。
  また、余寿命を評価した結果、次回定期検査で余寿命が5年を下回ると評価された部位は12箇所あり、現時点での余寿命は最も短いもので、3.1年と評価されました。これらの部位については、次回定期検査において、点検または配管の取り替えを実施する予定です。(11月1日 お知らせ済)  
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