プレスリリース

2004年7月9日

大飯発電所3号機の定期検査状況について(原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいの調査状況)

 大飯発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力118万キロワット、定格熱出力 342万3千キロワット)は、平成16年4月20日から第10回定期検査を実施していますが、5月4日、原子炉容器上部ふたの管台70箇所の外観目視点検準備を行っていたところ、制御棒駆動装置取付管台1箇所(No.47)の付け根付近に白い付着物(1次冷却水に含まれるほう酸)を確認しました。ほう酸は当該管台の周囲にのみ認められたことから、当該管台からの漏えいであることが確認されました。
 また、他の管台(69箇所)についても点検を行ったところ、5月5日、温度計取付管台1箇所(No.67)の側面および付け根付近にも、付着物が確認されました。

平成16年5月6日 お知らせ済

 その後、当該管台からの漏えい箇所を特定するため、漏えい経路として考えられる管台および上部ふたと管台との溶接部について、サーマルスリーブを切断して、ヘリウムリークテスト※1、渦流探傷検査(以下「ECT」)、浸透探傷検査(以下「PT」)、超音波探傷検査(以下「UT」)などの検査を行いました。 

1.制御棒駆動装置取付管台(No.47)

  • へリウムリークテストの結果、原子炉容器上部ふたと管台との溶接部で漏えいが確認されたことから、当該溶接部についてECTを実施したところ、溶接部の270°付近に有意な信号指示が確認されました。
  • ECTにより有意な信号指示が確認された付近について、約0.5mm程度表面を手入れ(切削)し、PTを行ったところ、微小な線状および点状の浸透指示模様が確認されました。
  • 浸透指示模様が確認された箇所を目張りし、再度へリウムリークテストを実施した結果、漏えいは認められませんでした。このことから、漏えいは浸透指示模様が確認された位置で発生したものであり、それ以外に漏えいはないと判断しました。
  • 浸透指示模様が確認された箇所について、金属組織観察(スンプ観察※2)を行った結果、浸透指示模様の位置に径方向の割れが認められ、形状は結晶粒界※3に沿った直線状の割れであることが確認されました。
  • さらに、当初の表面より、約1mm、約3mmの手入れ後、金属組織観察を行ったところ、割れの長さは長くなり、一部の割れはつながっていることが確認されました。割れの形状としては、結晶粒界に沿った枝分かれした割れが認められました。
  • 管台内面からECTおよびUTを行った結果、管台母材部においては、割れは認められませんでした。また、UTにより、割れが認められた270°付近で径方向の欠陥と推定される信号指示が認められたほかは、有意な信号指示は認められませんでした。さらに、上部ふた外表面より当該管台の周囲についてUTを行った結果、上部ふた母材部で割れ等の欠陥は認められませんでした。  

 以上のことから、当該管台での漏えいは溶接金属内での径方向の割れが貫通し、漏えいに至ったものと推定しました。

※1  ヘリウムリークテスト:
  漏えいの可能性のある部分の内面側の圧力を下げた状態にして、ヘリウムガスを外面から吹きつけ、内面の漏えい箇所から漏れ出てくるヘリウムガスを検知することで、漏えいの有無を確認する試験。
※2 スンプ観察:
  金属組織を調べるため、金属の表面を磨いた後、検査面に膜(フィルム)を貼り付けて微小な凹凸を転写させ、転写した膜(フィルム)上の金属組織を光学顕微鏡で観察する方法。
※3 結晶粒界:
   金属を構成する結晶と結晶の境界。

 

2.温度計取付管台(No.67)

  • ヘリウムリークテストの結果、漏えいは認められませんでした。
  • 管台内面よりECTやUTを実施した結果、管台母材部および溶接部に有意な信号指示は認められませんでした。
  • 当該管台の点検記録を確認した結果、平成3年の建設試運転時において、上部のシール部で1次冷却水(ほう酸水)が漏えいした事象がありました。

 以上のことから、当該管台については、建設試運転時に漏えいしたほう酸が十分に拭き取られず、漏えい跡が残っていた可能性が高いと考えます。     

 なお、No.47管台で認められた漏えいについて、引き続き、原因調査を継続していきます。
 本事象により定期検査工程が遅れております。本格運転開始時期(当初6月下旬予定)等、今後の工程については現時点では不明です。

以 上

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