プレスリリース

2004年5月17日

原子力発電所の運営状況について

 当社原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1. 運転状況について(平成16年5月16日現在)

*: 大飯発電所3号機第10回定期検査は、原子炉容器上部ふた制御棒駆動装置取付管台からの漏えいに伴い、 現在原因調査を行っており、本格運転再開時期が当初予定の6月下旬から遅れる見込みです。

2.保全品質情報について(平成16年4月分)

*: 実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則および電気関係報告規則に基づく報告事象や安全協定の異常時報告事象に該当する事象を含め、保安活動向上の観点から、産官学において情報共有することが有益である事象

(1) 法令に基づく報告事象や安全協定の異常時報告対象のうち重要な事象
       該 当 な し


(2) (1)に至らない軽微な事象
発電所名 件   名 発生日 事象概要・対策等
大飯発電所1,2号機 A廃液蒸発装置の廃液濃縮液ポンプ入口配管からの漏えいについて(原因と対策)  (添付図-1,2) 3月24日  平成16年3月24日、大飯発電所1、2号機共用設備であるA-廃液蒸発装置※1の「A濃縮液ポンプシール水流量低」の警報が発信しました。同装置は循環運転中であり、直ちにA-廃液蒸発装置室内を点検したところ、室内の床面に水溜りを確認したため、18時30分にA-廃液蒸発装置の循環運転を停止するとともに、19時47分にA-廃液濃縮液ポンプを隔離し、漏えいの停止を確認しました。 
 漏えいした水の量は約700リットル、放射能濃度は約4.0×102Bq/cm3で、全て装置室の堰内に収まっており、フロアドレンタンクに回収されました。
 漏えい箇所の調査するため、濃縮液ポンプ入口ラインの配管の保温材を取り外したところ、ポンプ入口配管外面に約90mmと約15mmの2本の割れを目視により確認しました。
 この事象による環境への影響はありません。

※1 廃液蒸発装置:放射性液体廃棄物を減溶処理するため、蒸気の熱により廃液を沸騰させ、蒸発せずに残った濃縮廃液をアスファルト固化装置へ送 る装置。
  (平成16年4月15日 お知らせ済み)

1.調査結果
 割れが認められた配管については、切り出した後、分析施 設にて破面観察など詳細な調査を行いました。
<配管表面の調査>
配管外面の浸透探傷検査を実施した結果、当初2箇所とし ていた割れは1箇所(約90mm)のみであることが判明しま した。 
配管の表面の詳細観察の結果、漏えい箇所付近の配管表面 は変色(こげ茶色)していました。さらに、配管表面の組 織調査等を実施した結果、配管自体が鋭敏化※2していまし た。これらの状況等から、当配管が過去に高温(500℃以上) になったことがあるものと推定されました。
配管材料の成分分析の結果、問題のないことを確認すると ともに、同一の製作配管に変色等の異常が認められなかっ たことから、配管据付時に変色等の異常はなっかたものと 考えられます。※ 2鋭敏化:ステンレス鋼等が高温になると金属粒界にクロム炭化物が析出し、耐食性を低下させる(腐食しやすい状態となる)現象。
   
<破面観察>
配管の破面観察の結果、内面側に長さ約100mm、外面側に 長さ約90mmの割れが確認され、配管内面から外面へ材質 の結晶粒界に沿って進展する粒界腐食※3割れの痕跡が確 認されました。
  ※3粒界腐食:材質の結晶粒界に沿って発生する腐食。
 
<運転履歴調査>
廃液蒸発装置の運転履歴を調査した結果、廃液蒸発装置の 排気ラインは、常時開放されており、装置の停止時は装置 内の濃縮廃液中の溶存酸素量が多い状況でした。また、そ の環境下で、配管内面にスラッジ(付着物)が存在する場 合、配管内表面とスラッジのすき間に局所的な腐食環境が 形成(すき間腐食※4)されることが判明しました。
 
※4 すき間腐食:
酸素が溶存するすき間内(配管表面とスラッジ間)に塩素イ オン(Cl-)、硫酸イオン(SO42-)が濃縮して低pH環境(酸性)となり、腐食が進行する現象。
 さらに、配管が鋭敏化した原因を調査した結果、以下のことが判明しました。 
当該系統には、配管内の濃縮廃液が固化するのを防ぐため、配管外面にはヒーター(電熱線)が巻かれています。漏えい部付近には配管サポートがあり、熱が逃げやすいため、他の部位(4本)より多くの電熱線(8本)が敷設されていました。
配管内に濃縮廃液が入っていない状態で、配管ヒータ温度 調節装置に不具合が発生し、ヒータ入熱が継続した場合、当該部は高温状態になることが判明しました。
なお、「A濃縮液ポンプシール水流量低」警報発信については、ポンプに異常が認められないことから、ポンプ入口配管からの漏えいにより、ポンプ入口側圧力が低下し、配管内に気泡が発生したため、ポンプ内部圧力の変化等を引き起こし、シール水が流れにくくなり警報が発信したものと推定されました。
   
2.推定原因
漏えいが発生した原因としては、配管内の濃縮廃液中に酸素が溶存していたことから、配管内面とスラッジのすき間に局所的な腐食環境が形成されたことに加え、配管材料が鋭敏化し耐食性が低下したことから、粒界腐食が進行し、貫通に至ったものと推定されました。 
配管材料が鋭敏化した原因としては、配管内の濃縮廃液を抜き取った後に、配管ヒータ温度調整装置に不具合が発生し、ヒータ入熱を継続していた可能性を否定できず、これにより、当該配管が異常加熱されたものと推定されました。
   
3.対策
漏えいした配管を同寸法・同材料の配管に取り替えるこ ととしました。  
廃液蒸発装置停止時には、同装置から排気ラインに至る 弁を「閉」運用として酸素の持ち込みを防止することと しました。
廃液蒸発装置点検時の操作手順書に、配管内の濃縮廃液を抜き取る前にヒータ電源を切るよう明記しました。
大飯発電所3号機 1次冷却材中の放射能濃度の上昇について(燃料集合体漏えい検 査結果) (添付図-3,4,5) 2月25日(第10回定期検査中)

 定格熱出力一定運転中の平成16年2月25日、定例の1次冷却材中よう素濃度(I131)のサンプリング分析(3回/週)を行った結果、通常値(0.6Bq/cm)をわずかに上回る値(0.98Bq/cm)が確認されました。
 その後、1次冷却材中の放射能濃度測定頻度を増やして監視を強化していましたが、その濃度はほぼ一定の値で推移しているものの通常値を上回るレベルであったことから、3月2日、燃料集合体に漏えいが発生した疑いがあるものと判断しました。      
 なお、よう素濃度(I131)は運転上の制限値(40,000Bq/cm)に比べ十分低いもので、発電所の運転および安全上問題はありません。

3月16日4月15日お知らせ済み

【燃料集合体漏えい検査結果】 
 4月20日から実施している今定期検査において漏えい燃料集合体を特定するため、燃料集合体全数(193体)について燃料集合体シッピング検査※1を実施したところ、1体の燃料集合体に漏えいが認められました。 
 漏えいが認められた燃料集合体について、水中テレビカメラによる外観検査を実施したところ、特に異常は認められませんでした。 
 また、超音波による漏えい燃料棒の特定※2を行った結果、燃料棒1本に漏えいが認められました。なお、当該燃料棒についてファイバースコープにより詳細な観察を行ったところ、漏えいの原因となるような有意な傷等は認められませんでしたが、被覆管表面3箇所に局所的な、ごくわずかな膨れが確認されました。この膨れは、漏えい発生後に燃料棒内部に浸入した水により、被覆管内面の局所水素化※3が生じたものと考えられます。 
 これらのことから、燃料集合体の漏えいは、当該燃料棒に、偶発的に微小孔(ピンホール)が発生したことによるものと推定されます。 
 今後、当該燃料集合体は使用しないこととし、健全な燃料集合体に取り替えます。 

 また、燃料集合体外観検査において、漏えい燃料集合体以外の3体の燃料集合体下部ノズル部に異物が確認されたことから、異物を回収し調査を行います。

※1 シッピング検査:
漏えい燃料集合体から漏れ出てくる核分裂生成物(キセノ ン133)を検出し、バックグランドと比較することにより、漏えい燃料集 合対かどうか判断する検査。
※2 超音波による漏えい燃料棒の特定:
  漏えいが発生した燃料棒の内部には水か浸入しているため、超音波が燃料被覆管を伝播する際の減衰を検出する ことで、燃料棒内部の水の有無を判断し、漏えい燃料棒を特定する。 
※3 局所水素化:
漏えい発生後、燃料棒内に浸入した水が放射線で分解されて生 じた水素が、被覆管内表面に局所的に吸収されて水素化物を形成し、被覆 管が膨れる事象。   
  5月12日お知らせ済み


以 上

<参考資料>
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