<配管表面の調査> |
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配管外面の浸透探傷検査を実施した結果、当初2箇所とし
ていた割れは1箇所(約90mm)のみであることが判明しま した。 |
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配管の表面の詳細観察の結果、漏えい箇所付近の配管表面
は変色(こげ茶色)していました。さらに、配管表面の組 織調査等を実施した結果、配管自体が鋭敏化※2していまし
た。これらの状況等から、当配管が過去に高温(500℃以上) になったことがあるものと推定されました。 |
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配管材料の成分分析の結果、問題のないことを確認すると
ともに、同一の製作配管に変色等の異常が認められなかっ たことから、配管据付時に変色等の異常はなっかたものと 考えられます。※
2鋭敏化:ステンレス鋼等が高温になると金属粒界にクロム炭化物が析出し、耐食性を低下させる(腐食しやすい状態となる)現象。 |
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<破面観察> |
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配管の破面観察の結果、内面側に長さ約100mm、外面側に
長さ約90mmの割れが確認され、配管内面から外面へ材質 の結晶粒界に沿って進展する粒界腐食※3割れの痕跡が確
認されました。 |
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※3粒界腐食:材質の結晶粒界に沿って発生する腐食。 |
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<運転履歴調査> |
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廃液蒸発装置の運転履歴を調査した結果、廃液蒸発装置の
排気ラインは、常時開放されており、装置の停止時は装置 内の濃縮廃液中の溶存酸素量が多い状況でした。また、そ の環境下で、配管内面にスラッジ(付着物)が存在する場
合、配管内表面とスラッジのすき間に局所的な腐食環境が 形成(すき間腐食※4)されることが判明しました。 |
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※4 |
すき間腐食:
酸素が溶存するすき間内(配管表面とスラッジ間)に塩素イ オン(Cl-)、硫酸イオン(SO42-)が濃縮して低pH環境(酸性)となり、腐食が進行する現象。
さらに、配管が鋭敏化した原因を調査した結果、以下のことが判明しました。 |
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当該系統には、配管内の濃縮廃液が固化するのを防ぐため、配管外面にはヒーター(電熱線)が巻かれています。漏えい部付近には配管サポートがあり、熱が逃げやすいため、他の部位(4本)より多くの電熱線(8本)が敷設されていました。 |
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配管内に濃縮廃液が入っていない状態で、配管ヒータ温度 調節装置に不具合が発生し、ヒータ入熱が継続した場合、当該部は高温状態になることが判明しました。 |
なお、「A濃縮液ポンプシール水流量低」警報発信については、ポンプに異常が認められないことから、ポンプ入口配管からの漏えいにより、ポンプ入口側圧力が低下し、配管内に気泡が発生したため、ポンプ内部圧力の変化等を引き起こし、シール水が流れにくくなり警報が発信したものと推定されました。 |
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2.推定原因 |
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漏えいが発生した原因としては、配管内の濃縮廃液中に酸素が溶存していたことから、配管内面とスラッジのすき間に局所的な腐食環境が形成されたことに加え、配管材料が鋭敏化し耐食性が低下したことから、粒界腐食が進行し、貫通に至ったものと推定されました。 |
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配管材料が鋭敏化した原因としては、配管内の濃縮廃液を抜き取った後に、配管ヒータ温度調整装置に不具合が発生し、ヒータ入熱を継続していた可能性を否定できず、これにより、当該配管が異常加熱されたものと推定されました。 |
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3.対策 |
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漏えいした配管を同寸法・同材料の配管に取り替えるこ
ととしました。 |
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廃液蒸発装置停止時には、同装置から排気ラインに至る
弁を「閉」運用として酸素の持ち込みを防止することと しました。 |
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廃液蒸発装置点検時の操作手順書に、配管内の濃縮廃液を抜き取る前にヒータ電源を切るよう明記しました。 |