プレスリリース

1999年11月1日

BNFL製MOX燃料の製造時検査データに関する調査結果について

1.経緯
  当社は平成11年9月13日に、高浜発電所3号機用に製造しているMOX燃料のペレットについては、全数を製造時に自動外径測定し仕様外品を除外しているものの、製品の品質保証のために当社に提供する検査データ(以下、検査データ)のデータ採取を一部行わず、過去の検査データを流用していたものがあるという連絡をBNFLから三菱重工業を通じて受けた。
  事実関係及び対応経緯は以下のとおり。

平成 7年12月20日  当社とメーカ(三菱重工業)で16体のMOX燃料加工契約締結
平成 8年 1月 8日  メーカとBNFL間で加工契約締結
平成10年 1月21日  高浜4号機用8体をBNFLのMDF工場で加工開始
      12月 9日  高浜3号機用8体の加工開始
      12月17日  高浜4号機用8体の加工完了
平成11年 8月20日  BNFLの品質管理員が、同社内の検査データを基にメーカ向け品質管理認定書を作成していたところ、高浜3号機用MOX燃料のあるロットのペレット外径の検査データに不審な点があることに気づき調査を開始。
      9月11日 BNFLよりメーカにデータ疑義に関するFAX連絡。
(BNFLは英国時間で9月10日の夜にFAX連絡したが、時差によりメーカには翌日土曜日のFAX到着となり、メーカがFAXを確認したのは週明けの9月13日)
      9月13日 メーカから当社に対しデータ疑義に関する連絡。
当社からBNFLに状況確認。
      9月14日  当社から通産省、運輸省、福井県、高浜町に状況連絡。
通産省、福井県、高浜町、福井県議会から調査実施等の要請を受ける。
現地に調査員を派遣。
当社から状況についてプレス発表。
      9月21日 調査状況について、当社から通産省、福井県、高浜町に報告。プレス発表。
      9月24日 中間報告をとりまとめ、当社から通産省、福井県、高浜町に報告。プレス発表。
      9月28日  通産省及び当社から福井県議会、高浜町議会に説明。
      10月 1日  MOX燃料輸送船発電所港到着。MOX燃料輸送容器受入れ。
      10月 4日  MOX燃料を高浜4号機使用済燃料貯蔵ピットに保管開始。
      10月 7日  MOX燃料8体の保管完了。
      11月 1日  調査結果及び再発防止対策をとりまとめ、当社から通産省、福井県、高浜町、福井県議会、高浜町議会に報告。プレス発表。
(本日)


2.調査結果
(1)ペレット外径データについて。
概要をまとめると下記のとおり。
 a.ペレット外径測定方法
   ペレット(1ロットあたり約3000個)は製造工程でレーザーマイクロメータで全数外径が自動測定され、測定値は自動的に記録、保存されている。
   また、検査として、1ロットから200個のサンプルを抜き取り、上記測定と同型のレーザーマイクロメーターで測定し、手動で記録している。

   *1:ロットとは、UO及びPuOの原料粉末をブレンダーで混合する際に、 一回で混合された単位を1ロットという。

 b.ペレット外径データの確認結果
  自動外径測定データの確認
   調査の結果、全てのペレットは適切に選別され、ペレットの外径は仕様値を満足しているものと判断した。
  検査データのデータ流用の有無の調査
   高浜3号機用全193ロット及び高浜4号機用全199ロットについて当該ロットとそれ以前に測定された全てのロットとのデータ一致数を分析した。
高浜3号機用の22ロットはデータの一致数が200個中140個以上一致と他のロットに比べて異常に多く、当該データ測定の検査員の面談結果からも既に測定されていた検査データの流用が行われたものと判断した。
   一方、高浜4号機用については、上記の22ロットのようなものは見られないが、一致数が200個中66個とやや大きいものが1ロットあることが解った。このロットについては、自動外径測定の約3000個のデータと比べたところ、平均値やばらつきが類似しており、また検査員からの申し入れにより当社が直接行った面談結果からもデータ流用はされていないものと判断した。

(2)ペレット外径検査以外の検査データの信頼性
 ペレット外径検査以外の検査項目は添付1の項目のとおりである。高浜4号機用燃料に不正があったか否かの調査結果については、9月24日の中間報告のとおりであるが、高浜3号機用燃料についても、4号機同様に以下の考え方に照らし調査を行った。

 a.製造時に当社またはメーカによる立ち会いが行われているか、データが独立した組織で相互に採取されている等、第三者により確認されている
 b.データの処理が自動化され、検査データに対して人の意思が介在しない。
 c.写真、チャート、信頼できる機関の証明等、元データの証拠となるものがある。
 d.検査データ自身が記録者の手書き、手入力等、証拠性が薄いものは、データの不自然さ等の確認を行う。

上記考え方に基づき高浜4号機及び3号機の調査結果を整理したもの添付1に示す。本表に示すとおり、ペレット外径以外の検査データについては信頼できると判断する。



3.問題発生要因と再発防止対策
  今回のデータ流用問題については、事実関係の調査とともに問題発生の要因及び今後の対策についてBNFL、メーカ及び当社で検討を行った。
  発生要因と今後の対策を以下にまとめた。

(1)測定装置
 a.問題発生要因
   ペレット外径の検査データ取得のための抜取検査では、測定、記録とも手作業であり、データ流用を行う余地のある装置が採用されていた。
   過去の検査データを簡単にコピーできる状態であった。
 b.再発防止対策
   ペレット外径測定装置については、検査結果が自動で入力、記録されるシステムに改善する。
   記録された過去の検査データを現場の検査員が呼び出せないようコンピュータのアクセスシステムを制限する。

(2)人的要因
  a.問題発生要因
   検査業務に関する教育不足から、検査データ取得のための測定の目的、重要性の認識が欠如していた。
   作業手順を守るという技術者としてのモラルに欠ける点があった。
  b.再発防止対策
   BNFLの検査員、運転員へのMOX燃料製造の重要性、検査の位置付け・重要性、要領書遵守の重要性、キャスクデータ問題の反映事項、プルトニウムを取り扱う際の臨界管理等の安全確保に係る教育を実施する。
   これまでの検査員の資格認定を一旦取り消し、全員の再訓練、資格認定試験により、資格を再認定する。資格認定の際には、訓練担当者による評価や管理職による面談評価などを実施する。また、適切な頻度で資格取得者の適性判定を行う。

(3)品質保証体制
  a.問題発生要因
   品質保証のための検査を製造部門が実施しており、かつ、検査員は運転員としても作業を行っていたことから、その検査の重要性の認識、意義付けが希薄となった。
   測定する検査員と記録を行う運転員の2人のみで行う作業であり、データ流用を行う余地のある作業管理、検査体制であった。
   BNFLのなかでデータ流用を早期に発見する品質保証体制となっていなかった。
   当社、メーカの立会検査、品質監査ではデータ流用を検知、防止する体制ができていなかった。
   昨年のキャスク中性子しゃへい材データ問題については、BNFLも関連しており、当社からも再発防止の連絡をしていたが、BNFL内で作業員までの徹底がされていなかった。また、当社としても徹底されていないことを見逃していた。
  b.再発防止対策
   検査員の所属を製造部門から品質保証を行う部門に変更し、製造部門に対する検査員の独立性を高める。
   検査員が前直において作成された検査作業記録について、記載の抜けのないこと、認定された検査員が実施していること、検査結果の妥当性等の確認を行う。
   品質管理員が現場に出向き、各検査項目について少なくとも1回/週の頻度で検査実施状況及び検査データを監視し、検査が適正に行われていることを確認する。
   品質管理員が毎日検査データを回収し、確認する。
   BNFLでは、品質監査にあたって、これまでISO9002の要求事項に基づき監査を行っていたが、運転管理やデータ処理にも焦点を当てる。
   メーカはBNFLに常駐監督者を派遣し、当社はBNFLの立会検査の頻度を増加する。
   各種検査データについては、速やかにメーカを通じ当社に提出させ確認する。

(4)組織、業務管理
  a.問題発生要因
   BNFLの中に管理職が頻繁に現場を訪れ、作業員の作業状況監督、意志疎通を図るような雰囲気に欠ける点があった。
  b.再発防止対策
   管理職は、現場巡視の頻度を増やし、作業状況の管理の充実を図る。
   検査員や運転員の小グループ毎に管理職が定例打ち合わせを行い、作業への反映事項、モラル意識の喚起等を全員に周知するとともに会話や意志疎通の充実を図る。
(5)社内及び関係メーカ、協力会社の品質保証計画への反映、確認
   社内及び当社の原子力発電所の運営に関係するメーカ、協力会社の品質保証計画に、作業手順を遵守すること並びに製品の重要性、検査の位置付け・重要性及び関連不具合事象の反映事項に関する教育の実施を盛り込むよう指導し、これらが確実に実施されていることを品質監査で確認する。
4.まとめ

(1)高浜4号機用燃料については、調査の結果、199ロットのすべてについて、ペレット外径の検査データの流用は行われておらず、定められた手順どおりに検査が行われていたことを確認した。
  また、念のため、その他の検査についても不正の行われる余地はないか、手順どおりの検査が行われていたか調査した結果、問題ないことを確認した。
  高浜4号機用燃料8体については、今後、国による輸入燃料体検査を受検し、合格したのち高浜4号機への装荷を行う。

(2)高浜3号機用燃料については、調査の結果、193ロットの内22ロットについて、ペレット外径の抜取検査を実施せず、既存の検査データを流用したものと判断される。
  データ流用が行われた22ロット分のペレットのうち、4ロット分は、組立済の燃料集合体4体の中にすべて組み込まれている。残り18ロット分については、燃料棒の状態で保管されている。
  また、念のため、その他の検査についても不正の行われる余地はないか、手順どおりの検査が行われていたか調査した結果、問題ないことを確認した。
  当社、メーカ及びBNFLで検討、調整した結果、データ流用のあった22ロット分のペレット及び燃料棒は今後の高浜3号用燃料の製造には使用せず、新たにペレットから製造することとする。組立済の集合体についても、データ流用のあったロットを含む燃料棒が組み込まれていることから、この燃料棒を引き抜き、新たなペレットから製造した燃料棒を挿入することを検討したが、専用の治具を作成してその機能を確認する必要があること、製造に要する期間は新たに集合体を作成する期間と同等であることから、新たに作成したペレット、燃料棒及び部材を用いて組み立て直すこととする。
  今後、高浜3号機用燃料の製造にあたっては、再発防止が確実に行われることを監査し、メーカの常駐監督者の配置等により確認して、今回のようなデータに関する不正が二度とないよう万全を期する。

以 上  

<参考資料>

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