ルポ|関西人の底力【奈良女子大学|京都先端科学大学|ダイキン|森下仁丹】
ACTIVE KANSAI
2021.12.27

ルポ|関西人の底力【奈良女子大学|京都先端科学大学|ダイキン|森下仁丹】

ダイキン|AI時代を勝ち抜く ダイキン情報技術大学

高度IT人材の獲得競争が熾烈化するなか、自社育成に舵を切っているのが空調メーカーのダイキンだ。「価格競争力の高い新興国メーカーが台頭するなか、個客に合わせた快適性を提供する高付加価値製品の開発が不可欠。そのためには、データを読み解き実装できるIT人材が必要だが、採用は容易ではない。そこで社内で育成することにした」。人事・労政・労務グループ長の今井達也さんは経緯をこう説明する。自社で育成すれば事業への最適化も図りやすいという目論見もあった。

ダイキン情報技術大学の授業風景(2017年)

ダイキン情報技術大学の授業風景(2017年)

2017年12月、「ダイキン情報技術大学」を開講。大阪大学と包括連携契約を結び、AI活用を推進する中核的な人材の育成に乗り出した。新入社員から経営層まで階層別のカリキュラムを組み、23年度末までに修了生1,500人を送り出す計画だ。注目は新入社員向けのカリキュラム。毎年約300人の技術系社員の中から100人を選抜。2年間の在学中は勉強に専念し、情報系大学院卒レベルの知識とスキルを身につける。1年目はIoTやAIの基礎および専門知識と空調・化学など事業関連の研修、2年目は現場で課題を見つけ解決するプロジェクトベースの研修に取り組む。

「どんなに専門性が高くても、現場が使いやすい技術を開発できなければ意味がない。プロジェクト研修では現場課題を聞き出すためのヒアリング力を高め、チームで取り組む力を身につけてもらう」。そう話すのはダイキン情報技術大学責任者の下津直武さん。プロジェクト研修から、製品の不具合事例をAIで分析して早めのメンテナンスにつなげる技術や、特許の抵触調査システムなどの新しい技術が生まれているという。

この春修了した3期生を含めて300人が既に現場に配属。活躍の場は開発だけでなく、営業・サービスや知財・人事部門と多岐にわたる。「短期間でリーダーに就く人やグローバルに活躍する人も出ており、手間ひまかけた社内育成の手応えを感じている」と今井さん。今後はIT人材の力と独自のものづくりを融合し、室内の温度差にメリハリをつけ集中力を高めるエアコンや、睡眠データを読み解き最適な寝室環境をつくるエアコンなど、既存の枠を超えたイノベーションに挑戦していく。空気で暮らしが変わる、そんな未来に期待が膨らむ。

今井達也
今井達也
ダイキン工業 人事本部 役員待遇
人事・労政・労務グループ長
写真:日本生産性本部 第5回生産性シンポジウムHPより
下津直武
下津直武
ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター
データ活用推進グループ 主任技師

森下仁丹|中高年のチカラが会社を変える 「第四新卒採用」の今

第四新卒の広告

第四新卒の広告

「オッサンも変わる。ニッポンも変わる」——2017年3月、森下仁丹が放った第四新卒*の採用広告に日本中のビジネスパーソンが騒めいた。「第四新卒」は同社の造語で、第二新卒*、第三新卒*に続く中高年の“新人”を指す。シニア世代に社会や会社を改革してほしいという想いから、自身も商社から転職した駒村純一前社長が発案。管理職経験や特定のスキルを求める中途採用と違い、性別・年齢に加えて経験も問わないという門戸の広さが際立っていた。予想を超える約2,200人の応募者の中から40~50代中心に10人を採用した。現在、戦略人事を担当する永田愛子さんもその1人だ。

新入社員研修を行う永田さん

新入社員研修を行う永田さん

「当時は40代後半。募集要項にあった職種は営業/開発/研究の3つで、やる気はあるが、何ができるのか迷いながら応募した。面接を重ねて、会社が求めることや自分がやりたいこと、できることを話し合い、募集要項にはない人事部門で採用された」と入社経緯を振り返る。職歴は、航空、ホテルなどのサービス業や大学生の就職支援をするキャリアコンサルタントなど。人事は未経験だが、これまでの仕事で人材育成の大切さは痛感していた。その思いを原動力に入社後は新入社員や若手育成を中心としたキャリア別の研修体系づくりや、研修内製化などに取り組んできた。「大きな波を起こしてほしい」という会社の期待に応えようと空回りしたり、会社の風土に合わせようとし過ぎたこともあったが、現在はベテランと若手の懸け橋となり、周りを巻き込みながら仕事を進めている。永田さんと同じく第四新卒として入社したメンバーも荒波を乗りこなし、各部署の中核人材として活躍しているという。「今後はシニア人材活用のためのリスキリング(再教育)など、中高年人材育成の体系化にも取り組んでいきたい」

技術力を生かした多様な製品

技術力を生かした多様な製品

23年に創業130周年を迎える老舗企業を支えるのはチャレンジ精神溢れる人材だ。定年引上げなど、働き方が多様化するなかで、森下仁丹は年齢・キャリアを問わない採用を続け、人材活用の道を切り拓こうとしている。

*第四新卒 「第四新卒」は森下仁丹の登録商標

*第二新卒 学校を卒業し企業に就職したのち、1~3年以内に転職活動を行う若手求職者。一般的には新卒以外の20代前半の求職者

*第三新卒 大学院博士後期課程修了者、もしくは大学院博士後期課程在籍者など25歳以上の就労経験がない(もしくは3年未満の)求職者

永田愛子
永田愛子
森下仁丹 経営企画室
戦略人事グループ
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