コラム|2024年のビジネス環境を生き抜く【門倉貴史】
余話一話
2024.1.09

コラム|2024年のビジネス環境を生き抜く【門倉貴史】

物価高や円安に見舞われ、経済や社会の行く末に不安を感じる人は多いはず。しかし今後はアメリカの金融引き締めが徐々に緩和され、2024年後半からは円高に推移、物価上昇も和らいでいくと見られる。同時に、日本の賃金引き上げ策も効果を発揮して実質賃金も上がっていくだろう。一方で“物流の2024年問題”をはじめ、日本の労働人口減少に起因する問題が多方面に広がる不安もある。

人手不足が深刻化するなか、ビジネスパーソンが取るべき行動は、個々の仕事のパフォーマンスを高めておくこと。紹介したいのが世界のビジネスパーソンが実践しているアート鑑賞法「VTS(Visual Thinking Strategy)」だ。グループに分かれて1つのアート作品を約10分間鑑賞し、ディスカッションするというもので、ポイントは作品情報など知識に頼らず素直に観察し、得られたイメージを言葉にすること。アートに正解はなく、視覚的な情報を自分なりに解釈し、言葉にする過程で感性的な思考力が鍛えられ、固定観念にとらわれない考え方、変化に気づく直感力、突発的な出来事に対応する力を高めてくれる。

ビジネスとアートというと、一見飛躍した話とも思われがちだが、海外ではビジネス研修として実践している企業も多い。背景には論理的思考に基づく意思決定だけでは、ビジネスの舵取りが難しくなっており、ひらめきから生まれる新たな可能性に期待が高まっていることがある。ノーベル賞を受賞した科学者とそれ以外の科学者を比較すると、アートを趣味とする人の割合がノーベル賞受賞者は3倍多いという結果があり、VTSは論理的思考力の前提となる目の付け所を鍛えてくれるもの。まさにこれからの不確実な時代に必要な力と言えるだろう。2024年、ビジネスパーソンのみなさんは、ぜひ美術館へ足を運んでほしい。

門倉貴史
門倉貴史 かどくら たかし
エコノミスト・経済評論家
1971年神奈川県生まれ。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」等の出演や経済誌、WEBメディアでの経済評論執筆、各地での講演など、幅広く活躍。著書に『オトナの経済学』『日本の「地下経済」最新白書』など。
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