コラム|五輪と万博の経済効果【宮本勝浩】
DATA BOX
2024.1.09

コラム|五輪と万博の経済効果【宮本勝浩】

大規模イベントで話題に上る経済効果。経済効果には、開催前のインフラ整備などの建設投資、開催中の来場者がもたらす物販・飲食や観光消費などに加え、長期にわたり社会全体に好影響を与えるレガシー効果がある。

過去に行われた東京五輪・大阪万博のレガシー効果に着目してみる。

1964年の東京五輪では、国立競技場や代々木体育館、日本武道館などが整備され、五輪以降も活用された。東海道新幹線や東京モノレールが登場、首都高速・名神高速が整備され、人の流れや物流は大きく変革。ソフト面では、選手1万人もの食事を準備するため冷凍技術が進化。1人がすべてを調理し、レシピは他人に公開しないという従来の常識を打ち破り、分業化とマニュアル化が進展。開催後、冷凍食品を使ったセントラルキッチンによる集中調理が確立され、ファミリーレストラン登場につながった。

1970年の大阪万博では、動く歩道や温水便座、携帯電話の元になるワイヤレスフォン、テレビ電話など未来の技術や製品が展示された他、ハンバーガーやピザなどのファストフードも広がった。

オリンピックの経済効果

万博の経済効果

これらは現代社会にすっかり定着したが、高度経済成長期の日本ならではの効果。成熟経済下では見せ場が異なる。経済が成熟した先進国でのイベントの役割は、社会課題解決の姿を世界に見せることだろう。コロナ禍によって2021年に延期された東京五輪では、ロボット技術の拡大や5G回線整備が進み、人口減少下での経済発展への1つの解を示した。2024年のパリ五輪は、脱プラスチック、再生可能エネルギーの活用、EV導入等で環境に配慮した大会運営をめざしており、サスティナブルな社会像を描く。

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開催する2025年大阪・関西万博にも期待したい。空飛ぶクルマやAI技術を駆使した製品やサービスによって、能力を拡張し、生きる喜びや楽しさを感じる。そんな未来をきっと生み出してくれるはずだ。

宮本勝浩
宮本勝浩 みやもと かつひろ
関西大学・大阪府立大学名誉教授
1945年和歌山県生まれ。大阪府立大学経済学部教授、経済学部長、副学長歴任後、関西大学大学院会計研究科教授を務め、2015年から現職。「2023WBC優勝の経済効果」「阪神タイガース2023年『アレ』の経済効果」などで注目を集める。
YOU'S TOPへ戻る