南海トラフ地震に備える――近畿地方整備局
ACTIVE KANSAI
2023.11.30

南海トラフ地震に備える――近畿地方整備局

いつ発生してもおかしくないといわれる南海トラフ地震。巨大災害から地域を守る国土交通省 近畿地方整備局の取り組みを同局 統括防災調整官の中尾 勝さんに聞いた。

南海トラフ地震とは?

駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀州半島の南側の海域と土佐湾を経て日向灘沖までの海底プレート境界を震源域として、100年〜150年間隔で繰り返し発生している地震。昭和東南海地震(1944年)や昭和南海地震(1946年)の発生から75年以上が経過しており、国の調査では、30年以内の発生確率が70%〜80%(2020年1月24日時点)と巨大地震発生の懸念が高まっている。

日本付近のプレートの模式図(気象庁)

日本付近のプレートの模式図(気象庁)

被害想定は?

震度6弱から7の強い揺れが、エリア一帯を襲い、紀伊半島沿岸では、地震発生の数分後には10〜20mを超える津波が襲来。津波は大阪平野に広がる都市部にも到達すると想定される。

強い揺れにより、家屋の倒壊や火災、公共交通等の重大な事故、大阪湾・和歌山県沿岸のコンビナート施設での火災や油流出等、深刻な被害が広域的に発生するとみられる。

かなりの被害が想定されているが、対策は?

「国土交通省南海トラフ巨大地震対策計画」に則り、防災対策を進めている。

津波からの避難困難地域では、避難タワーの設置や高速道路を避難場所とするための階段設置、高台にある道の駅の防災拠点化などを推進。津波による浸水を遅らせ、避難する時間を稼ぐため、熊野川、淀川などに水門を設置。災害時、確実に操作できるよう、河川管理施設の耐震化、耐水化を進めるとともに、津波遡上が想定される地域では、緊急地震速報を受信し、自動的にゲートを閉鎖できるよう自動化を進めている。

また、国、地方自治体、公共機関等100以上の機関が合同で行う大規模津波防災総合訓練を毎年実施しているほか、自治体や交通機関、企業との連携訓練、局内での対応訓練などを重ね、災害時に備えている。

いざ地震が発生した時は?

迅速に被災状況を把握し、被害拡大を防ぐことがポイントになる。発災直後から管内に設置したライブカメラや防災ヘリ等を活用し、地震・津波情報を速やかに収集。人命救助を第一に、救援ルートを確保し、救命救助隊の早期到着を支援するとともに、空からの救助を展開する。津波が到達するまでに避難誘導や水門操作などで被害拡大を防ぎ、浸水後は救助に向け排水作業を行う。これらを関係機関と連携し、救助・支援を行っていく。

一般の我々ができる対策は?

南海トラフ地震に備えるためのマイタイムライン

災害時にいつ・だれが・どのような行動をとるかを整理した避難行動計画「マイ・タイムライン」を作り、いざという時に役立ててほしい。作成には、ハザードマップ等で自分の生活エリアにどんな危険があるかを知ることが第一歩。そのうえで、日頃の備えや地震発生時や避難準備時に取るべき行動等を整理していく。地震発生時はどこで身を守るのか、避難場所への移動方法や所要時間、避難先までの危険箇所、ペットの避難場所など細かなところまで想定しておくことが重要。地震は突発的な災害。日頃から想定し準備しておくことが大切だ。

今後の抱負は?

現在我々は、南海トラフ地震による近畿地方の危機に備えるべく、地震を想定し準備し、訓練を重ねている。日本の災害対策は大規模災害が起こるたびに進化しているが、いざという時に適切に対応できるかどうかは日々の訓練にかかっている。局内だけでなく、関係各所と連携し、訓練と改善を積み重ね対策の進化、拡充に努めていく。

中尾 勝
中尾 勝
国土交通省 近畿地方整備局
総括防災調整官
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