系統用蓄電池事業で電力需給安定化と再エネの主力電源化へ――E-Flow
かんでん Update
2023.7.31

系統用蓄電池事業で電力需給安定化と再エネの主力電源化へ――E-Flow

関西電力は2023年4月、国内で初めて分散型エネルギーリソースの市場運用に特化した新会社「E-Flow」を設立、7月から本格的に事業を開始した。事業の柱は、VPP、蓄電池、再エネアグリゲーションの3つだ。なかでも蓄電池の運用を受託する系統用蓄電池事業について、E-Flowの平木真野花に聞いた。

系統用蓄電池事業とは?

電力が安い時間帯に市場で電気を買って蓄電池に充電、高い時間帯などに放電し活用する事業モデルです。
再エネは今後さらに導入が進み、主力電源としての役割を果たすことになると考えています。一方で、天候次第で発電量の増減が激しく、変動を吸収する設備が必要です。電力需給の変動に合わせた発電量のコントロールは、従来、主に火力発電などが担ってきました。しかし退出する電源も増えており、今後蓄電池は再エネの発電量が多い時間帯に充電することで、余剰電力を吸収する役割も担うことができます。
22年5月の電気事業法改正で、電力系統に直接接続する1万kW以上の大型蓄電池は、蓄電所として発電事業に位置付けられ、電力需給安定化と再エネ導入を加速させる役割を期待されています。

E-Flowでは系統用蓄電池事業にどう取り組む?

事業のメインは蓄電所の運用。蓄電所では、日々の市場動向を見ながら入札し、それを踏まえた充放電計画を電力広域的運営推進機関に提出する必要があります。蓄電池は充放電を繰り返すと劣化が進むため、最適な運用が求められるうえ、安定的に収益化するには、卸電力取引市場・需給調整市場・容量市場など複数の市場取引を組み合わせる必要があります。最適な組み合わせは市況によって異なり、「難しく面倒な運用はプロに任せたい」というお客さまの要望に応え、事業を開始しました。
運用を代行するうえで、まずは自ら蓄電所を開所し、知見を深めることが必要と考え、他社に先駆けて関西電力は、和歌山県の紀の川蓄電所に出資し開発中。24年に開所予定です。

24年に開所する紀の川蓄電所(和歌山県)

24年に開所する紀の川蓄電所(和歌山県)

課題は?

蓄電池はこれまで再エネとの併設や、お客さまがBCPやエネルギーマネジメントのためにお持ちのケースはありましたが、蓄電池の充放電だけで収益をあげる事業は今まで国内にほとんどなく、収益想定がとても困難です。現在、事業基盤となる蓄電所運用システムの開発に力を入れていますが、蓄電所が参加する電力市場はまだ開設されていないものもあります。また、今後も制度の変更が見込まれますので、それに合わせたシステムについて議論を重ねています。
想定されている市場取引が開始される24年が本格的なスタートですが、今後も制度変更等に合わせてアップデートしていく必要があります。

今後の展望を

再エネが拡大する一方、火力電源は減少しており、お客さまの保有する設備も活用し需給バランスをとっていく分散化の流れが進んでいます。火力発電は燃料があれば発電できますが、蓄電池は放電すればカラになりますし、お客さまが電力使用量を制御することで需要パターンを変化させるデマンドレスポンスも頻繁に行うわけにはいきません。それぞれに制約や特性があるなか、多様な電源を活用し、電力需給安定化やカーボンニュートラルに貢献したいです。

平木真野花
平木真野花
E-Flow合同会社
事業推進本部 蓄電池事業部長
YOU'S TOPへ戻る