余話一話
2022.9.30
お手本どおりきれいな字を書くのが習字。そこに自分らしさを加え、芸術性を高めていくのがアートとしての書道。書の可能性を追求して、さまざまな創作活動を続けている。
国内外で何度も行ってきた書道パフォーマンスは、出来上がった作品だけでなく、制作過程をエンタテイメントとして魅せるもの。音楽との調和、ダイナミックな筆の運びやスピード感は、漢字文化のない海外の人にも楽しんでもらえる。
青柳美扇「鳳凰」
活動の原動力は「書道が大好き」という気持ちだ。大好きな書道を広め、書を楽しむ人を増やしたい。そのために、伝統的な書道の枠を超えた新たな表現を常に探っている。昨年は書の立体作品に挑戦。美扇の「美」の字を、真鍮板を打ち抜いてつくり、つなぎ合わせて鳳凰を形づくった。今年はVRで書の3D表現にチャレンジしている。2Dの書を3Dで楽しめる作品にするため試行錯誤の毎日だ。きっかけは、VRクリエイターの仕事を紹介したTV番組。「これ、書道に使えるかも」とすぐに連絡すると、「打ち合わせをしましょう」と返信を貰った。打ち合わせは、電話でもZOOMでもなく、バーチャル空間でアバターを通して交流するVRチャット。使ったことがなく焦ったが、勉強し打ち合わせを重ねるなかで、VRならではの没入感や3D表現の幅広さに魅せられた。面白そうと思えばなんでもまずは挑戦してみる。やってみれば新しい一歩が開ける。
4歳のとき、祖母の影響で始めた書道。今でも毎日の基本稽古は欠かさない。基本を守りながら新しいことに挑戦する。それが「伝統と革新」であり、私が大切にしていること。令和の時代ならではの表現を模索しながら、書の魅力を多くの人に伝えていきたい。