余話一話
2021.12.27
宝塚時代は、24時間「宝塚の男役」として生きていた。1つの作品が終わった翌日には次の作品の下準備に追われ、達成感を味わう暇もない。退団後、時間がありすぎることに戸惑いながら、やっと宝塚人生をやり遂げた充実感に浸ることができた。そしてコロナ禍。予定されていた舞台がなくなり、家で本を読んだり映画を観たり。動いていないと気が済まない性分だが、コロナになって、「休むときは休む」ことを覚えた。
宝塚の新人公演で初主演の役が、コメディ要素のある役だった。客席から大爆笑が起き、お客さまの反応に心が高鳴った。その経験から、コメディに対して積極的に。男役トップスターとしても、それまでの王道の宝塚とはちょっと違う、コミカルなお芝居に挑戦した。笑いは「間」が命。間を外すと笑いは生まれない。とはいえ、ただ笑わせるだけではない。物語の中で、きちんと役を生きているからこそ、笑いが生まれる。
大阪育ちで、笑いは身近にあった。関西の人の温かさ、旺盛なサービス精神、人との距離が近いところが、とても好き。そんな気質から生まれるコミュニケーションが、笑いの文化を育んできたのかなと思う。
今後も、コメディの舞台に挑戦していきたい。生身の人間が演じ、その時のお客さまとの間で生まれる笑いは、一期一会。全く同じことをもう一度やってと言われても、きっとできない。そんな舞台をつくり上げることにワクワクしている。