余話一話
2021.8.31
昔の人は、空や生き物の様子を見て天気を予想していた。うろこ雲の粒々が大きくなり、ひつじ雲に変化してきたら雨に注意。赤黒い夕焼けは、西の空に水蒸気が多い証拠で悪天候のサインだ。生き物でいうと、ハチが軒下の奥に巣をつくった年は台風が多く襲来、朝にクモの巣が張っていると晴れ、という言い伝えもある。天気予報のない時代の生活の知恵だ。
お盆の頃に海で泳ぐと幽霊に足を引っ張られるという話も、理にかなっている。お盆の時期は浜辺が晴れていても、遠くにある台風の影響で突然波が高くなったり、沖に流されることがある。昔の人は経験から危険を察知し、戒めていたのだろう。
日常で自然に触れていないとその変化に気づきにくい。普段は自然を楽しむが、危ない時は離れる。そういう距離感を掴むためにも、周りの生き物に目をやる、空や風の変化を感じることが大切だ。
一方で、気象予報技術の進化は目覚ましい。スマホで雨雲レーダーも見られるし、台風の進路予測も精度が上がっている。地球温暖化で気象が極端な昨今、自分の体感と身近なテクノロジーをあわせて使えば、災害から身を守りやすくなる。
テレビの情報番組で、天気のポイントをイラストで伝える「スケッチ予報」は今年で丸10年。予報をもとに絵を考え、放送直前に描き上げる。天気予報に興味を持ってもらえるよう楽しく、子供が大人に説明できるくらいわかりやすくがモットー。
普段は関西弁でユーモアを交えて天気を伝えるが、いざというときには真剣に。自然の楽しさも怖さも両方しっかり伝えたいと思う。