コラム│世界一のデジタル先進国、デンマークの暮らし【安岡美佳】
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2024.8.30

コラム│世界一のデジタル先進国、デンマークの暮らし【安岡美佳】

世界デジタル政府ランキング2023

世界デジタル政府ランキング2023

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所

デンマークで暮らし始めて19年。デジタル先進国の恩恵を感じることは多い。同国がデジタル化を進めた目的は、「福祉国家の維持」だ。少子高齢化が進み労働者は減り、医療費は増大。そんななか、高福祉を維持するにはどうすればいいか。解決策の一つがデジタルによる効率化だった。既に1968年に個人情報管理と徴税の効率化を目的に個人番号制度「CPRナンバー(Central PersonRegister number)」を導入しており、2000 年頃からCPRナンバーと連携したデジタル化を推進。今では行政・銀行・保険・インフラ・病院の受診予約等さまざまな手続きがオンラインで行える。日本では引っ越しをすれば、役所、水道・電気、銀行と個別に住所変更が必要だが、デンマークでは個人情報が全て電子化されており、CPRナンバーを使ってサイトにアクセスすれば、15分程度で手続きが完了する。

デンマークのデジタル社会基礎

とりわけ納税や銀行取引などお金に関わる部分のデジタル化、キャッシュレス化は著しく、今やお祭りの露店のような小さなお店でもキャッシュレス。日常生活で現金を使う場面はほぼない。キャッシュレス浸透に伴い、スーパー・コンビニは基本無人レジになり、労働者不足にも対応している。

一方で課題もある。高齢者層など、デジタルを使いこなせない人は一定数おり、格差解消のため、本人に代わって手続きする後見人制度や、高齢者団体のネットワークを利用したデジタルサポートの仕組みづくりなどが模索されている。

日本ではデジタル化の遅れが指摘されているが、デンマークも20年以上かけて進めてきた。まずは「何のためのデジタル化か」をはっきりさせることが望ましい。レストランの配膳ロボットなど民間のサービス面では面白い取り組みを進めている日本。各国の先進的な事例を学びながら、日本の得意な部分を生かし、日本の実情にあった形を創り出してほしい。

安岡美佳
安岡美佳 やすおか みか
北欧研究所代表・ロスキレ大学准教授
東京都出身。京都大学大学院情報学研究科修士課程修了、東京大学工学系先端学際工学専攻を経て、コペンハーゲンIT大学で博士号取得。2005年デンマークに移住。
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