世界デジタル政府ランキング2023
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所
デンマークで暮らし始めて19年。デジタル先進国の恩恵を感じることは多い。同国がデジタル化を進めた目的は、「福祉国家の維持」だ。少子高齢化が進み労働者は減り、医療費は増大。そんななか、高福祉を維持するにはどうすればいいか。解決策の一つがデジタルによる効率化だった。既に1968年に個人情報管理と徴税の効率化を目的に個人番号制度「CPRナンバー(Central PersonRegister number)」を導入しており、2000 年頃からCPRナンバーと連携したデジタル化を推進。今では行政・銀行・保険・インフラ・病院の受診予約等さまざまな手続きがオンラインで行える。日本では引っ越しをすれば、役所、水道・電気、銀行と個別に住所変更が必要だが、デンマークでは個人情報が全て電子化されており、CPRナンバーを使ってサイトにアクセスすれば、15分程度で手続きが完了する。
とりわけ納税や銀行取引などお金に関わる部分のデジタル化、キャッシュレス化は著しく、今やお祭りの露店のような小さなお店でもキャッシュレス。日常生活で現金を使う場面はほぼない。キャッシュレス浸透に伴い、スーパー・コンビニは基本無人レジになり、労働者不足にも対応している。
一方で課題もある。高齢者層など、デジタルを使いこなせない人は一定数おり、格差解消のため、本人に代わって手続きする後見人制度や、高齢者団体のネットワークを利用したデジタルサポートの仕組みづくりなどが模索されている。
日本ではデジタル化の遅れが指摘されているが、デンマークも20年以上かけて進めてきた。まずは「何のためのデジタル化か」をはっきりさせることが望ましい。レストランの配膳ロボットなど民間のサービス面では面白い取り組みを進めている日本。各国の先進的な事例を学びながら、日本の得意な部分を生かし、日本の実情にあった形を創り出してほしい。