
次世代の分散型インターネットとして注目を集める「web3」。現在、巨大プラットフォーマーの手で中央集権的に管理・運用されているインターネット上のデータを、ブロックチェーンなどの技術を活用してユーザー自身の手で自律的に管理・運用できるようにしようというものだ。web3により実現したのが、偽造・改ざん不能な所有権証明書付きデジタルデータ・NFT。これによりデジタルアートなどの売買ができるようになり、新たなマーケットが生まれている。
web3の移行に向け、NTTグループが設立したのがNTT Digitalだ。「お客さまが簡単かつ安全に利用できるweb3サービスを提供するのが当社のミッション」と話すのは取締役の櫻井俊明さん。2024年3月には、暗号資産やNFTを一括管理できるデジタルウォレット「scramberry WALLET(スクランベリーウォレット)」をリリース。scramberry WALLETは電話番号のみで初期登録でき、直感的でわかりやすい操作性を実現。初めて暗号資産やNFTを利用する人もスムーズに使える設計にこだわった。
「まずは、ファンコミュニティの活性化など企業のマーケティングでの活用を後押ししていきたい」と話す櫻井さん。取り組みの1つが、東京ガールズコレクションでのキャンペーン。イベント公式アプリへのデジタルウォレット機能の組み込みや初心者にもやさしいweb3体験の企画・設計を支援。チェックポイントを周る等ミッションをこなすとNFT化されたモデルのステッカーなどが受け取れる。イベント主催者は、ユーザーのウォレットアドレスを把握することで、イベント終了後も特典を配布するなどNFTをフックにしたコミュニケーションを継続できる。
同社では24年5月、複数企業が参加しブロックチェーンを活用した円滑な企業連携の実現をめざすプロジェクト「web3Jam」を立ち上げた。「経済的にも社会的にも意義のある事例を増やし、web3が社会のインフラになるよう取り組んでいきたい」と櫻井さん。次世代のインフラweb3普及へ挑戦は続く。
アジア太平洋地域では、政府や企業に対するサイバー攻撃やランサムウエア(身代金要求型ウイルス)による被害が深刻化。サイバー攻撃に関するニュースが連日放送されるなか、Googleは2024年3月サイバーセキュリティの研究拠点を東京に開設した。日本を拠点にアジア太平洋地域の各国政府や産業界などと手を組み、より安全で健全なインターネット空間を構築することが狙いだ。「日本はアジア太平洋地域のサイバーセキュリティに関する議論を主導する重要な役割を担っている」と話すのは拠点長の内山純一郎さん。
日本のサイバー攻撃件数は2023年には2015年比8.3倍に増加。Googleのサイバーセキュリティ研究拠点では、政策対話、人材育成、研究支援の3つの領域で活動を進めている。政策対話では、政府、企業、学術機関などと連携し、国内外の最新事例に基づいた知見を共有。直近の脅威動向に合わせた政策のあり方と、実践するための議論を通して、サイバーセキュリティのさらなる強化をめざす。人材育成では、初級者から専門家まで幅広いニーズに対応したトレーニング・プログラムを展開。加えてGoogle Cloudのサイバーセキュリティ専門組織であるマンディアントによる高度な人材育成トレーニングも提供している。研究支援では、24年6月に大学等の研究機関を対象としたサイバーセキュリティの研究支援プログラムを発表。応募された論文の中から対象者を選び、研究費の支援やGoogleのエキスパートによるサポートを実施する。
「生成AIをサイバー攻撃に悪用する事例もあり、より高度化し攻撃力を増している。長年サイバー攻撃に対応してきたGoogleの知見を提供し、日本やアジア太平洋地域の国々と連携してセキュリティのさらなる強化に貢献していきたい」と内山さん。巧妙化するサイバー犯罪に対し、あらゆる角度から守りを固めている。