天候に左右されず安定的な再生可能エネルギーとして注目されるバイオマス発電。バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称で、間伐材などを使う木質系、糞尿などを使う農業/畜産/水産系、建築廃材系・生ごみなどを使う生活系等、多種多様な種類がある。バイオマス発電では、この生物資源を「直接燃焼」あるいは「ガス化」するなどして発電する。2022年2月の営業運転開始に向け機器試運転を開始している「かんだ発電所」の所長・定森一郎に話を聞いた。
2022年2月に運転を開始するかんだ発電所(完成予想図)
1つは、CO2の増減に影響を与えない「カーボンニュートラル」であるということ。植物は成長する過程でCO2を吸収しており、それを燃やしてCO2を排出しても、実質的に大気中のCO2量は変わりません。
かんだ発電所では、木質ペレット(おが粉、かんな屑などを成型加工したもの)とパーム椰子殻(パーム油搾油時に発生する残滓、搾りかす)を直接燃焼し、蒸気タービンを回して発電します。
かんだ発電所近くの岸壁
国土の大半が森林の日本ですが、国内では十分な燃料調達が難しいのが実情です。そこで、海外で豊富に流通する木質ペレットを使ったバイオマス発電を計画。実現には、外航船が入港できる港湾設備や工業用水などのインフラが整っていることが条件になります。これをもとに全国で適地を探し、地元自治体や商工会議所の温かいサポートが得られた福岡県苅田町を選びました。
2022年2月の営業運転開始に向け、順調に進んでいます。6月には受電を開始し、ポンプ、ファンなど個別機器の試運転も実施して、7月にはボイラ火入れ式を行いました。今後は、9月にバイオマス燃料を積んだ船が初入港する予定。10月からは発電設備の試運転を行う予定です。
プラントメーカーをはじめ、工事管理を行う関西電力火力事業本部/土木建築室などと連携しながら工程管理を行うとともに、地元自治体や商工会議所などと信頼構築に努めています。
かんだ発電所には、私以下燃料担当、経理担当の3人が常駐しています。昨今のSDGsやゼロカーボン化といった社会的背景により、再エネの重要性が高まるなか、社会や次世代に貢献できる業務に所員一同、精一杯取り組んでいます。
私自身としても、1997年のCOP3以降、環境/再エネ業務に携わっており、これまでに培った経験を生かせる事業には、大変やりがいを感じています。
(左)かんだ発電所所長の定森一郎 (右)火力発電所の建設ノウハウを生かし工事が進む
プラント建設の工事管理を関西電力の火力事業本部/土木建築室が行っており、既存の火力発電所などの建設ノウハウ、経験が生かされている点が強みです。また、火力とバイオマスは燃料こそ違いますが、プラントの形式は同じであり、発電所の運転や設備保守についても関電グループは長年の経験とノウハウを持っており、運開以降にそれらが生かせると思います。
ゼロカーボン化は関西電力グループにとって重要な社会的使命。単独の事業で終わらせず他社へ技術提供を行うことも含め、持続的な事業にしていかなければなりません。苅田を拠点にグループ各社が経験を積み上げ、関西電力グループとしての再エネ事業発展の礎を築きたいと考えています。