ゼロカーボン化の世界的潮流の中、そのリーディングカンパニーを目指す関西電力は、1月に法人向けコンサルを担う脱炭素ソリューショングループを設置、2月には「ゼロカーボンビジョン2050」を策定した。
さらに、3月には「ゼロカーボンへの挑戦」を柱の1つにした「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定し、事業活動の各側面でゼロカーボン化を進めている。
関西電力グループは、金品受取り問題等を踏まえ、「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」を新たに策定するとともに、この理念のもと、変化する事業環境にも対応し、持続的成長を遂げていくため、足元5ヵ年の実行計画として、「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を新たに策定した。
■「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」は、関西電力グループの最上位概 念として、お客さまや社会にとっての『「あたりまえ」を守り、創る』という存在意義のもと、安全を守り抜くことを前提に『「公正」「誠実」「共感」「挑戦」』という価値観を大切にして事業活動を行い、持続可能な社会を実現することを掲げている。
■「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」は、ガバナンス確立とコンプライアンス推進を事業運営の大前提に位置付けている。その上で、「Kanden Transformation」の実現に向けて、ゼロカーボンへの挑戦、サービス・プロバイダーへの転換、強靭な企業体質への改革に取り組む。本計画のもと、2021~23年度は、事業構造改革の完遂とともに、将来の成長へ向けた取組みも着実に進め、2025年には、関西電力グループを、安定的な成長軌道にのせ、次なる飛躍に挑む。
■関西電力グループは、新たな「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」のもと、「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」に掲げる取組みをグループ一丸となって着実に行うことにより、持続可能な社会の実現に取り組む。
松村孝夫・代表執行役副社長/原子力事業本部長
関西電力グループは2021年2月、「ゼロカーボンビジョン2050」を策定し、事業活動に伴うCO2排出を2050年までに全体としてゼロにすると宣言。4月にはゼロカーボンの取組みを推進するため、社長を委員長とする「ゼロカーボン委員会」を設置した。
「時代は『低炭素』から『脱炭素(ゼロカーボン)』。当社はこれまで低炭素のリーディングカンパニーとして取り組んできたが、ゼロカーボンでも時代をリードすべく推し進めたい」
こう切り出したのは、松村孝夫・代表執行役副社長/原子力事業本部長。ゼロカーボン実現へ、関西電力は「デマンドサイドのゼロカーボン化」「サプライサイドのゼロカーボン化」「水素社会への挑戦」を3本柱に掲げており、サプライサイドで重要な役割を担うのが、発電時にCO2を排出しない原子力と再生可能エネルギーだ。
「美浜発電所が日本初の加圧水型原子炉として営業運転を開始して50年。半世紀に亘って運転実績を積んできた原子力発電は、いわば『確立された脱炭素技術』。安全最優先で発電所を安定運転させ、再生可能エネルギーなどとともにゼロカーボン化へ貢献していきたい」
国のグリーン成長戦略でも原子力は「依存度を低減しつつも、安全性向上を図り、引き続き最大限活用していく電源」との位置付け。これを受け関西電力は、既設プラントの安全安定運転の継続や、運転から40年を超えるプラントの運転(以下、40年以降運転)の実現に加え、運用の高度化による稼動率改善を図る。 一方、将来的には次世代軽水炉、高温ガス炉、SMR(小型モジュール炉)等も視野に入れた新増設・リプレースや、原子力エネルギーを活用した水素製造も検討していく考えだ。
「とはいえ原子力にはさまざまなご意見がある上、19年に公表した金品受取り問題で損った信頼の回復は容易ではない。ただ、立地地域での全戸訪問などでは、率直なお叱りとともに、激励の言葉もいただくなど、地域の皆さまに支えられていることを実感する。資源小国・日本にとって、一度、燃料を装荷すれば長期間にわたって安定供給できる、そして確立された脱炭素技術としてゼロカーボン化に貢献できるという原子力のメリットをもっとわかりやすく伝え、理解いただく努力を続けていく」
関西電力では現在、原子力規制委員会の認可を受け、美浜発電所3号機、高浜発電所1、2号機の40年以降運転実現に向けて、全力で取り組んでいる。
「当社が『原子力のパイオニア』として歩めたのも、立地地域の皆さまのご協力があってこそ。今また地域のご理解を得て、美浜発電所3号機、高浜発電所1、2号機が再稼動すれば、日本初の40年以降運転となる。着実に安全安定運転の実績を積み上げていきたい」。松村は強い決意をにじませた。