プレスリリース

2012年4月6日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

 当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成24年4月5日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 第25回 定期検査中
H22年11月24日〜未定※1
当初平成23年4月下旬定期検査終了予定
2号機 50.0万 第27回 定期検査中
H23年12月18日〜未定※1
3号機 82.6万 第25回 定期検査中
H23年5月14日〜未定※1
 
高 浜
発電所
1号機 82.6万 第27回 定期検査中
H23年1月10日〜未定※1
当初平成23年4月中旬定期検査終了予定
2号機 82.6万 第27回 定期検査中
H23年11月25日〜未定※1
 
3号機 87.0万 第21回 定期検査中
H24年2月20日〜未定※1
  • ○蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果に対する原因と対策について
    詳細は2(1)のとおり
    平成24年3月29日4月5日お知らせ済み】
  • ○協力会社事務所A棟工作室における火災(ボヤ)についての原因と対策
    詳細は3(1)のとおり
    【発生については平成24年3月16日お知らせ済み】
4号機 87.0万 第20回 定期検査中
H23年7月21日〜未定※1
大 飯
発電所
1号機 117.5万 第24回 定期検査中
H22年12月10日〜未定※1
当初平成23年4月上旬定期検査終了予定
2号機 117.5万 第24回 定期検査中
H23年12月16日〜未定※1
3号機 118.0万 第15回 定期検査中
H23年3月18日〜未定※1
当初平成23年7月中旬定期検査終了予定
4号機 118.0万 第14回 定期検査中
H23年7月22日〜未定※1
 
  • ○定期検査中のプラントについては、定期検査開始〜本格運転再開予定時期を記載。
  • ※1 福島第一原子力発電所事故に対する安全対策の実施状況を踏まえ、計画していく。
2.トラブル等情報について
(1)法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)
発電所名  高浜発電所3号機 発 生 日  平成23年 3月29日
件  名 蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果に対する原因と対策について (添付図1)
事象概要

 平成24年2月20日から実施している第21回定期検査において、3台ある蒸気発生器(SG)の伝熱管全数※1について渦流探傷検査(ECT)※2を実施した結果、C−SGの伝熱管1本の高温側管板※3部で、有意な信号指示が認められました。なお、A,B−SGの伝熱管については、有意な信号指示は認められませんでした。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。

1.原因調査
(1) 過去の調査結果との比較
  • ・高浜3号機では、第12回定期検査(平成12年)において高温側管板拡管部で有意な信号指示が確認され、抜管調査の結果、ローラ拡管※4上端部付近の伝熱管内面で軸方向に沿った割れが認められました。原因は、管内面での引張り残留応力と運転時の内圧とが相まって生じた応力腐食割れであると推定しました。
  • ・その後、当該部の応力腐食割れの発生を予防するため、第13回定期検査(平成13年)でSG伝熱管の高温側管板拡管部内面にショットピーニング※5を施工し、伝熱管内表面の引張り残留応力を改善しました。
  • ・今回の有意な信号指示は、1高温側管板部のローラ拡管上端部付近であり、2伝熱管の軸方向に沿った内面傷を示す指示であるなど、過去に4号機で同様に認められた信号指示と特徴が類似していることを確認しました。
(2) SG伝熱管へのショットピーニングの効果
  • ・ショットピーニングでは、伝熱管内表面近傍(深さ約0.2mmまで)の引張り残留応力が改善されますが、これより深い部分では効果が小さいことが知られています。
  • ・このため、ショットピーニング施工時に、深さ約0.2mm以上で当時使用していたECTの検出限界未満(深さ約0.5mm未満)の微小な傷が既に発生していた場合、時間の経過とともに傷が進展する可能性があると推定しました。
(3) 運転履歴調査
 運転開始以降、今定期検査開始に至るまでの期間について、1次冷却材の主要パラメータである温度、圧力、水質について調査を行った結果、過大な応力を発生させる温度、圧力の変化はなく、水質も基準値の範囲内で安定していたことを確認しました。
2.推定原因
 有意な信号指示が認められた原因は、過去の調査結果等からSG製作時に当該伝熱管を管板部で拡管する際、管内面に引張り残留応力が生じ、これが運転時の内圧と相まって伝熱管内面で応力腐食割れが発生・進展し、今回検出されたものと推定しました。
3.対策
 有意な信号指示が認められた伝熱管1本については、高温側および低温側管板部で閉止栓(機械式栓)を施工し、使用しないこととします。
事象概要
および
対 策 等
  • ※1 既施栓管を除きA−SGで3,274本、B−SGで3,248本、C−SGで3,264本、合計9,786本。
  • ※2 高周波電流を流したコイルを、伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  • ※3 蒸気発生器内の伝熱管が取り付けられている部品。伝熱管と管板で、1次冷却材と給水(2次冷却水)の圧力障壁となる。
  • ※4 伝熱管内部に機械式ローラを通すことで伝熱管を押し広げて、伝熱管と管板を接合させる工程。
  • ※5 伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面の引張り残留応力を圧縮応力に改善する工事。
(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1基準2基準3評価レベル
0−0−
INES:国際原子力・放射線事象評価尺度

[平成24年3月29日4月5日お知らせ済み]

(2)安全協定の異常時報告事象
発電所名  美浜発電所2号機 発 生 日  平成23年12月 7日
件  名 A−加圧器スプレ弁グランドリークオフ流量の増加にかかる原因と対策について (添付図2)
事象概要
および
対 策 等

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力50万キロワット、定格熱出力145万6千キロワット)は、平成23年11月9日頃から、2台ある加圧器スプレ弁※1のうち、A−加圧器スプレ弁のグランド部から1次冷却水をドレンタンクに回収する配管(グランドリークオフ※2配管)の温度が若干高めであったことから、当該配管内の流量等の監視を行っていましたが、配管内の流量が液体廃棄物処理設備の処理能力を超える可能性があったことから、12月7日20時から出力降下を開始し、8日3時15分に発電を停止、4時に原子炉を停止しました。
 なお、格納容器内の放射線モニタや加圧器水位等の運転パラメータに変化はなく、格納容器内の監視カメラによる点検で漏えいは認められませんでした。
 原子炉停止後、当該弁の外観目視点検を実施したところ、1次冷却水の系統外への漏えい等の異常は認められませんでした。
 この事象による周辺環境への放射能の影響はありません。
 その後、美浜発電所2号機は、12月18日から定期検査を開始し、燃料を取り出した後、系統の水抜きを行い、当該弁の分解点検を実施しました。
 その結果、1次冷却水が弁棒に沿って上昇するのを防ぐために弁棒を覆っている金属製の蛇腹(ベローズ)の折り目(内側)の溶接部1箇所に、全周にわたる貫通割れが確認されました。
 また、B−加圧器スプレ弁についても、分解点検を実施した結果、ベローズに同様の貫通割れが確認されました。

1.調査結果
(1) AおよびB−加圧器スプレ弁ベローズの破面観察等の調査結果
  • ・ベローズは、4枚のドーナツ状金属板を重ね合わせて、その先端部を溶接(重ね合わせ溶接)しており、溶接部がベローズの折り目となっています。
  • ・貫通割れした溶接部の破面を観察した結果、1次冷却水に接する側に金属板が溶着していない部分(未溶着部※3)が認められ、その表面には酸化皮膜が付着していました。未溶着部の長さは、A弁についてはほぼ全周、B弁については約半周にわたるものでした。
  • ・また、未溶着部を起点とする結晶境界に沿った応力腐食割れの破面が認められました。
  • ・ベローズ表面の浸透探傷検査や窒素による漏えい試験の結果、当該溶接部以外に貫通割れは確認されませんでした。貫通割れが認められなかった溶接部を切断して確認した結果、未溶着部が認められた箇所もあったが、その幅は当該溶接部より狭いことがわかりました。
  • ・ベローズ材料について、化学分析等を確認した結果、異常は認められませんでした。
(2) 製造工程の調査
  • ・酸化皮膜による未溶着部が認められたことから、ベローズの製造工程について調査した結果、手順通りに実施されていたが溶接時に酸化皮膜が生成し未溶着部の生じる可能性があることが新たにわかりました。
  • ・溶接は、溶接部が酸素に触れないようにするためアルゴンガスを流しながら溶接装置に金属板を取り付け、一定時間経過後に溶接を開始しています。
  • ・その装置を用いて再現試験を行ったところ、溶接開始時に酸素が残存し金属表面に酸化皮膜が生成して未溶着部が生じることや、酸素濃度が高いほど、未溶着部の幅が広くなることがわかりました。
  • ・また、酸素濃度を低くして溶接した結果、未溶着部は生成されませんでした。
2.推定原因
  • ・グランドリークオフ流量が増加した原因は、ベローズ折り目(内側)の溶接部に貫通割れが発生したことにより、1次冷却水がベローズ内に入り、弁棒に沿って上昇し、グランドリークオフ配管へ流入したためと推定されました。
  • ・貫通割れが発生した原因は、ベローズ製造工程の溶接時に酸素濃度確認まで行っていなかったため、酸素が多い状態で溶接を行った結果、溶接部全周にわたる幅の広い未溶着部が発生しました。その後、このベローズに、プラント運転に伴う1次冷却水系統の圧力・温度が加わった結果、未溶着部を起点として、応力腐食割れが発生・進展し、貫通割れに至ったものと推定されました。
3.対策
  • ・重ね合わせ溶接タイプのベローズの製造にあたっては、酸素濃度が低いことを測定により確認し溶接を行うこととします。
  • ・当該弁(A弁およびB弁)については、今回の定期検査で新しい弁へ取り替えることを計画しており、予定通り取替えを行います。なお、新しい弁のベローズは、より信頼性の高い突き合わせ溶接タイプとなっています。
  • ・また、当該弁と同様に1次冷却水系中の高温・高圧の状態で用いられる重ね合わせ溶接タイプのベローズについては、今回の定期検査中に酸素濃度を管理して製造したベローズに取り替えます。
※1 加圧器スプレ弁
加圧器の圧力が設定値(15.59Mpa)を超えて高くなった場合に、加圧器内に水を拡散し、圧力を調整する弁
※2 グランドリークオフ
加圧器スプレ弁からの漏えいを系統外に出さないよう回収する系統。
※3 未溶着部
本来、溶接により金属板同士が溶け込んで接合される部分が、何らかの要因で接合されずに隙間となっているもの。

[平成23年12月7日12月15日平成24年1月20日3月19日 お知らせ済み]

(3)保全品質情報等
発電所名  高浜発電所 発 生 日  平成24年 3月15日
件  名 協力会社事務所A棟工作室における火災(ボヤ)についての原因と対策について) (添付図3参照)
事象概要
および
対 策 等

 3月15日23時53分、高浜発電所(1〜4号機全て定期検査中)の協力会社事務所A棟の火災報知器が発報し、正門守衛室の警備員が23時54分に119番通報を行いました。
 現場に到着した消防署員および自衛消防隊が、3月16日0時29分に協力会社事務所A棟1階の工作室内現像室からの煙を確認、消防署員が0時40分に鎮火を確認し、紙ウエス等からの火災(ボヤ)と判断されました。
 なお、本件において負傷者は発生しておらず、環境への放射能の影響はありません。また、延焼もなく、周辺設備に影響はありませんでした。
 現場作業員に状況を聞き取ったところ、3月15日20時30分頃〜23時00分頃まで工作室内現像室にてフィルムの現像作業を実施し、作業終了後、使用していた電気ヒータのコンセントを引き抜いたうえで事務所を一旦引き上げていましたが、その後、0時12分に、清掃のため工作室内現像室へ戻ったところ、ウエス等から煙が上がっていることを確認し、近くにあった水タンクの水で消火作業を開始したとのことです。

[平成24年3月16日お知らせ済み]

 作業の状況について作業関係者に聞き取りを行った結果、現像作業終了後、現像液の温度を維持する電気ヒータを現像液水槽内から水槽外へ出して現像液水槽外側に掛け置き、水槽の上に蓋をかぶせた後、照明と電気ヒータのコンセントを引き抜き退出したことを確認しました。その際、ウエス等が電気ヒータ発熱部に接触または非常に接近していたことから、加熱され火災(ボヤ)に至ったものと推定しました。
 対策として、現像作業では電気ヒータを使用せず、現像室のエアコンによる室内の温度の調整や湯煎により、現像液の温度を維持することとします。また、不適切な取り扱いにより高温に至る可能性のある工具等を使用する場合についても、今後は火気作業と同様の防火措置を行うこととします。

以 上

<添付資料>

プレスリリース