プレスリリース

2012年3月19日
関西電力株式会社

美浜発電所2号機 A-加圧器スプレ弁グランドリークオフ流量の増加にかかる原因と対策について

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力50万キロワット、定格熱出力145万6千キロワット)は、平成23年11月9日頃から、2台ある加圧器スプレ弁※1のうち、A−加圧器スプレ弁のグランド部から1次冷却水をドレンタンクに回収する配管(グランドリークオフ※2配管)の温度が若干高めであったことから、当該配管内の流量等の監視を行っていましたが、配管内の流量が液体廃棄物処理設備の処理能力を超える可能性があったことから、12月7日20時から出力降下を開始し、8日3時15分に発電を停止、4時に原子炉を停止しました。
 なお、格納容器内の放射線モニタや加圧器水位等の運転パラメータに変化はなく、格納容器内の監視カメラによる点検で漏えいは認められませんでした。
 原子炉停止後、当該弁の外観目視点検を実施したところ、1次冷却水の系統外への漏えい等の異常は認められませんでした。
 この事象による周辺環境への放射能の影響はありません。

 その後、美浜発電所2号機は、12月18日から定期検査を開始し、燃料を取り出した後、系統の水抜きを行い、当該弁の分解点検を実施しました。
 その結果、1次冷却水が弁棒に沿って上昇するのを防ぐために弁棒を覆っている金属製の蛇腹(ベローズ)の折り目(内側)の溶接部1箇所に、全周にわたる貫通割れが確認しました。
 また、B−加圧器スプレ弁についても、分解点検を実施した結果、ベローズに同様の貫通割れが確認されました。
 今後、これらベローズの材料成分分析、破面観察等の詳細調査を実施します。

※1加圧器スプレ弁
加圧器の圧力が設定値(15.59Mpa)を超えて高くなった場合に、加圧器内に水を拡散し、圧力を調整する弁
※2グランドリークオフ
加圧器スプレ弁からの漏えいを系統外に出さないよう回収する系統。

平成23年12月7日12月15日平成24年1月20日お知らせ済み]

1.調査結果
(1)AおよびB−加圧器スプレ弁ベローズの破面観察等の調査結果
  • ・ベローズは、4枚のドーナツ状金属板を重ね合わせて、その先端部を溶接(重ね合わせ溶接)しており、溶接部がベローズの折り目となっています。
  • ・貫通割れした溶接部の破面を観察した結果、1次冷却水に接する側に金属板が溶着していない部分(未溶着部※3)が認められ、その表面には酸化皮膜が付着していました。未溶着部の長さは、A弁についてはほぼ全周、B弁については約半周にわたるものでした。
※3未溶着部
本来、溶接により金属板同士が溶け込んで接合される部分が、何らかの要因で接合されずに隙間となっているもの。
  • ・また、未溶着部を起点とする結晶境界に沿った応力腐食割れの破面が認められました。
  • ・ベローズ表面の浸透探傷検査や窒素による漏えい試験の結果、当該溶接部以外に貫通割れは確認されませんでした。貫通割れが認められなかった溶接部を切断して確認した結果、未溶着部が認められた箇所もあったが、その幅は当該溶接部より狭いことがわかりました。
  • ・ベローズ材料について、化学分析等を確認した結果、異常は認められませんでした。
(2)製造工程の調査
  • ・酸化皮膜による未溶着部が認められたことから、ベローズの製造工程について調査した結果、手順通りに実施されていたが溶接時に酸化皮膜が生成し未溶着部の生じる可能性があることが新たにわかりました。
  • ・溶接は、溶接部が酸素に触れないようにするためアルゴンガスを流しながら溶接装置に金属板を取り付け、一定時間経過後に溶接を開始しています。
  • ・その装置を用いて再現試験を行ったところ、溶接開始時に酸素が残存し金属表面に酸化皮膜が生成して未溶着部が生じることや、酸素濃度が高いほど、未溶着部の幅が広くなることがわかりました。
  • ・また、酸素濃度を低くして溶接した結果、未溶着部は生成されませんでした。
2.推定原因
  • ・グランドリークオフ流量が増加した原因は、ベローズ折り目(内側)の溶接部に貫通割れが発生したことにより、1次冷却水がベローズ内に入り、弁棒に沿って上昇し、グランドリークオフ配管へ流入したためと推定されました。
  • ・貫通割れが発生した原因は、ベローズ製造工程の溶接時に酸素濃度確認まで行っていなかったため、酸素が多い状態で溶接を行った結果、溶接部全周にわたる幅の広い未溶着部が発生しました。その後、このベローズに、プラント運転に伴う1次冷却水系統の圧力・温度が加わった結果、未溶着部を起点として、応力腐食割れが発生・進展し、貫通割れに至ったものと推定されました。
3.対策
  • ・重ね合わせ溶接タイプのベローズの製造にあたっては、酸素濃度が低いことを測定により確認し溶接を行うこととします。
  • ・当該弁(A弁およびB弁)については、今回の定期検査で新しい弁へ取り替えることを計画しており、予定通り取替えを行います。なお、新しい弁のベローズは、より信頼性の高い突き合わせ溶接タイプとなっています。
  • ・また、当該弁と同様に1次冷却水系中の高温・高圧の状態で用いられる重ね合わせ溶接タイプのベローズについては、今回の定期検査中に酸素濃度を管理して製造したベローズに取り替えます。

以 上

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