プレスリリース

2010年4月2日
関西電力株式会社

美浜発電所2号機の化学体積制御系統の空気抜き配管溶接部からの漏えいに係る原因と対策について

 美浜発電所2号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力50万キロワット、定格熱出力145万6千キロワット)は、定格熱出力一定運転中のところ、3月19日12時頃に、中央制御室で監視カメラによる原子炉格納容器内の確認を行っていた運転員が、化学体積制御系統※1の再生熱交換器※2室内で水の滴下(4滴/分)を確認しました。
 運転パラメータや格納容器内の放射線モニタ等に異常は認められませんでしたが、漏れ箇所の特定や詳細な点検調査を行うため、同日14時に出力降下を開始し、21時00分に発電を停止し、21時55分に原子炉を停止しました。
 原子炉停止後、室内の状況を確認したところ、原子炉冷却系統への充てん水が流れる配管(充てん配管)に設置されている空気抜き配管※3と管台(異径管)との溶接部にほう酸の析出※4が認められ、浸透探傷試験※5で、周方向の指示模様(長さ約2.6cm)を確認しました。
 なお、この事象による環境への放射能の影響はありません。

  • ※1 化学体積制御系統:原子炉冷却系統から1次冷却材の一部を抽出し浄化した後、保有水量やほう素濃度等を調整して、原子炉冷却系統に1次冷却材を充てんする系統。
  • ※2 再生熱交換器:原子炉冷却系統から化学体積制御系統への抽出水と、原子炉冷却系統への充てん水との間で熱交換を行うことにより、充てん水を加熱し、原子炉冷却系統への熱影響を緩和する。
  • ※3 空気抜き配管:空気抜き配管は、原子炉冷却系統への充てん水が流れる配管(充てん配管)の水張り時に、配管内の空気を抜くために設置されているもので、充てん配管の管台(異径管)に溶接されている。
  • ※4 析出:1次冷却材が漏れ出して、1次冷却材に含まれるほう酸が結晶化している状態。
  • ※5 浸透探傷試験:染料の入った液(浸透液)を傷に浸透させた後、余分な浸透液を除去し、現像剤により浸透指示模様として観察する方法。

平成22年3月19日23日 お知らせ済み]

1.調査結果
(1)破面観察等の調査
  • ・当該配管を切断し浸透探傷試験を行った結果、配管外面の指示模様が認められた部分の内面の管台との溶接部境界(溶接止端部)に沿う周方向で、同様の指示模様(長さ約1.5cm)を確認しました。
  • ・断面観察を行った結果、き裂は溶接止端部から溶接金属内を直線的に進み外面に達していました。
  • ・破面観察の結果、破面は2つの様相を呈していました。内面側は複数のき裂の起点と接触が顕著な範囲が確認され、その外側に、外面に向かってき裂が広がり、疲労割れの特徴であるビーチマーク模様※6を確認しました。
  • ・配管等の材質に問題はなく、放射線透過試験※7の結果、溶接欠陥は認められませんでした。
  • ※6 ビーチマーク模様:疲労破面に観察される特徴的な破面模様の1つで、砂浜に残る波跡に似た縞模様。
  • ※7 放射線透過試験:試験対象物を透過する放射線を利用して、試験対象物の内部構造等(内部欠陥の有無等)を画像化することにより、試験対象物の内部構造等を確認する手法。
(2)振動計測
  • ・当該配管の固有振動数※8を計測したところ、充てん配管の流れに直交する方向で 22.0Hzであることがわかりました。
  • ※8 固有振動数:配管の重量、長さ等により配管それぞれが持つ固有の振動数。
(3)点検・補修履歴の調査
  • ・小口径配管の振動による損傷事例を踏まえ、その未然防止を図るため、平成11年に小口径配管管理マニュアルを定め、振動評価を実施してきました。
  • ・当該配管では、第18回(平成11年)および第20回定期検査(平成14年)において振動評価を行い、固有振動数は23.5Hzで、当該溶接部に働く応力は疲労限(疲労割れを起こす応力)より低いことを確認していました。
  • ・その後、第22回定期検査(平成17年)において、当該配管の空気抜き弁のハンドルを、バーハンドル(重量 約0.35kg)から丸ハンドル(重量 約2.5kg)に取替えましたが、振動評価は行っていませんでした。
  • ・前回の第25回定期検査(平成21年)において、管理マニュアルに基づき、当該溶接部の浸透探傷試験を行い、指示模様がないことを確認しました。
(4)疲労割れに関する調査
  • ・当該配管は充てんポンプの下流側にあることから、ポンプ運転に伴う充てん水の圧力脈動(振動)の影響を調査したところ、定期検査中の試運転や検査時に行われるポンプ100%流量運転時の振動(21.8Hz)と、当該配管の固有振動数 (22.0Hz)がほぼ一致していることから、当該配管が共振し、当該配管と管台の溶接部に疲労限を超える繰り返しの振動応力が加わっていたと推定しました。
  • ・一旦、疲労割れが発生すると、プラント通常運転中のポンプ振動(80%流量運転)により、緩やかに進展すると推定しました。
2.推定原因
  • ・平成17年の第22回定期検査で、空気抜き弁のハンドルを取替えたことにより、当該配管の固有振動数が、充てんポンプの試運転や検査時の振動数とほぼ一致し、配管が共振したことで、当該配管と管台の溶接部に疲労限を超える応力が働きました。
  • ・この応力の繰り返しにより疲労が蓄積し、前回定期検査時の試運転もしくは検査中に、配管内面に疲労割れが発生し、その後のプラント運転中に進展し、漏えいに至ったものと推定しました。
3.対 策
  • ・当該配管について、充てんポンプの振動との共振を回避するため、弁ハンドルをバーハンドルに戻すとともに、剛性を高めた改良型管台に変更します。
  • ・振動により疲労割れの発生が懸念される小口径配管について、至近の振動計測以降に弁ハンドル取替え等の改造が行われていないことを現場で確認しました。

 今後、当該配管を取替えたうえで、漏えい確認および振動計測を行った後、来週中にも原子炉を起動し、発電を再開する予定です。

 なお、これまで小口径配管で振動による損傷を経験してきているにもかかわらず、今回、同様な事象を発生させたことは、過去の事例を十分に活かせていなかったものと反省し、再度、全保修課員に対し、振動管理の重要性を教育するとともに、小口径配管の改造工事を行う場合は、軽微なものも含めすべての工事について振動評価を行うよう管理マニュアルに明記します。

(経済産業省によるINESの暫定評価)
基準1 基準2 基準3 評価レベル
0− 0−
INES:国際原子力事象評価尺度

以 上

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