プレスリリース

2010年1月7日
関西電力株式会社

大飯発電所1号機プラント排気筒ガスモニタの一時的な指示値の上昇の原因と対策について

 大飯発電所1号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力117万5千キロワット、定格熱出力342万3千キロワット。調整運転中)において、平成21年12月24日14時46分から15時03分にかけて、プラント排気筒ガスモニタ※1の指示値が僅かに上昇しました(最大値は約19.4cps※2。通常値は約 14.5cps)。
 大飯発電所1号機では、この時間帯に1号機の体積制御タンク水位計の検出配管内に溜まった水を抜く作業を実施しており※3、水位計につながるドレン配管の先端にビニール袋を取り付け、ドレン弁を開いて、水とともに系統内の放射性ガスを回収していました。
 14時42分にドレン弁を開いた後、現場に設置した仮設モニタの指示値が上昇したため、ドレン弁を閉じましたが、室内に漏れ出た放射性ガスがプラント排気筒に排出され、モニタの指示値が上昇したものと推定し、原因調査を行うこととしました。
 放出された放射性気体廃棄物の放射能量は、約4.5×10Bqと評価しており、保安規定に基づく発電所の放出管理目標値(3.9×1015Bq/年)に比べ約860万分の1以下と十分低い値でした。
 また、発電所敷地内および周辺のモニタリングポストの指示値は平常と変わりなく、周辺環境等への影響はありませんでした。

  • ※1 運転に伴って発生する気体放射性廃棄物(希ガス)を監視するモニタ。大飯1号機ではプラント排気筒で原子炉格納容器および補助建屋からの排気を監視している。
  • ※2 1秒間に測った放射線の数を表す単位。
  • ※3 体積制御タンクは原子炉容器や配管内の一次冷却材の量を調整するためのタンク。点検の結果、体積制御タンク水位計の指示値が通常より低いことから、水位計の検出配管に水が滞留している可能性があると判断し、水抜きを実施することとした。

平成21年12月24日お知らせ済み]

1.調査結果
(1)体積制御タンク水位計の水抜き作業に関する調査
112月24日の水抜き作業状況
 当日、14時38分から14時42分にかけて、ドレン配管に水抜き用の仮設ホースとビニール袋(容量50リットル)を取り付けた後、弁を開く操作を行いました。
 排気筒モニタの指示値は、14時46分から上昇傾向が見られ、14時47分頃、水抜き作業の現場に設置していた仮設放射線モニタの指示値が急激に上昇したことから、直ちに各弁を閉止しました。
 排気筒モニタの指示値は14時50分に最も高くなり、その後低下しました。
2水位計の検出配管内の水抜き作業
 今回指示不良となった水位計は、体積制御タンク上部のガス抜き配管と接続しており、指示不良は12月18日から発生していました。
 このため、12月21日に今回と同じ方法で水抜き作業を行って約700ccの水を回収し、その直後は指示値が回復したように見えましたが、指示不良が引き続き発生していたことから、水の回収が不十分であったと判断し、再度水抜き作業を行うこととしました。
 12月24日に2回目の水抜き作業として弁を僅かに開き、水が間欠的に噴出する状況を監視していたところ、現場の仮設モニタの指示値が上昇したため、直ちに弁を閉止しました。この作業で回収された水は約10ccでした。その後、水位計の指示は正常な状態に復旧しました。
(2)放射性ガスが漏えいした原因の調査
 排気筒モニタの指示値が上昇した時間帯の作業および運転操作について調査したところ、当該水抜き作業の他に、放射性ガスを扱う作業や運転操作はなかったことから、作業で使用した仮設ホース等について調査を行いました。
 作業で使用したホースとビニール袋について、発泡剤等により漏えい検査を行った結果、ドレン配管とホースをつなぐ継手部で漏えいを確認しました。このため、継手部とホースとの接続状態を確認したところ、継手内に差し込むホースの長さが十分でないことが判明しました。
 この継手は、差し込んだホースの抜けを防止する部分(チャック)と、継手とホースの隙間をシールする部分(パッキン)で構成されており、ホースを所定の長さまで差し込んだ状態では漏えいせず、差し込みが不十分な状態では継手内部の隙間から漏えいすることがわかりました。
 また、作業員への聞き取り調査の結果、継手にホースを差し込んだ後、引っ張って抜けないことは確認していましたが、ホースの差し込み量が十分であったかどうかは確認していませんでした。
2.推定原因
(1)プラント排気筒モニタの指示値が上昇した原因
 体積制御タンク水位計の指示不良を改善するため、水位計の検出配管内にたまった水を抜く作業を行った際、ドレン配管につないだ仮設継手部へのホースの差し込み量が少ない状態でドレン弁を開放したことにより、継手部から体積制御タンク気相部の放射性ガスが室内に漏れ、建屋の排気ダクトからプラント排気筒に放出されたものと推定しました。
(2)水位計の指示不良が発生した原因
 水位計の検出配管内に水がたまり、指示不良となる原因について調査したところ、同様の指示不良が、前回の定期検査後の原子炉起動時に発生していましたが、それ以前には発生していないことがわかりました。
 このため、原子炉起動時の運転操作を分析したところ、指示不良が発生する直前の操作として、1次冷却材の一部を化学体積制御系統に抽出して行っていた水質を安定させる操作がほぼ終了したことから、この抽出流量を下げる操作と同時に、抽出した1次冷却材を系統に戻すため、充てん/高圧注入ポンプ※4出口にあるミニマムフローライン※5の弁を開く操作を行っていました。この操作は、平成18年に実施した定期検査後から実施していました。また、前回と今回の定期検査後は、この操作を行った際に体積制御タンクから気相部の放射性ガスを気体廃棄物処理系統に排出する操作を行っていました。
 この弁の操作を行うと、充てん/高圧注入の入口側にミニマムフローラインからの水が流入し、その圧力上昇により、ポンプ入口側に設置しているガス抜き配管内の水が押し上げられ、当該配管の先にある水位計の検出配管が接続されているドレン配管に多くの水が流れ込みました。
 ドレン配管に多くの水が流れ込むと、検出配管にも水が流入し、配管の位置関係から水が滞留します。この水により体積制御タンク気相部の圧力が水位計の圧力伝送器に正確に伝えられず、指示不良に至ったものと推定しました。
  • ※4 体積制御タンクの水を充てん系や1次冷却材ポンプ封水注入系へ供給することで、1次冷却材系統と化学体積制御系統の水の循環を行うポンプ。
  • ※5 ポンプの必要最低流量を確保するための配管。
3.対 策 
  • ・水位計の検出配管部への水の流入を防ぐため、原子炉起動時に抽出流量を下げる場合は、充てん/高圧注入のガス抜き配管に設置されている隔離弁を閉止します。なお、次回の定期検査時に、当該水位計の検出配管を、水が流入しにくい位置に変更します。
  • ・仮設のホースや継手等を用いて放射性ガスを取り扱う作業の際には、継手部に差し込むホースにマーキングを行い、差し込み不足とならないよう確実に管理するとともに、継手部をビニールテープ等で養生します。
 なお、今回の作業では、作業現場での放射性ガス漏えいを早期に検知するため設置していた仮設モニタでの検知が遅れたことや、仮設継手部からの漏えいを封じ込める対策等について、事前の検討が不足していたことから、今後、仮設設備を用いて放射性ガスを取り扱う作業については、作業計画段階で、作業体制や監視方法等について多角的なリスク評価を行うための検討会を開催し、放射性ガスの予期せぬ放出を徹底的に防止することとします。

 大飯発電所1号機は、本事象により、1月上旬に予定していた本格運転再開の時期を、1月中旬頃に延期します。

以 上

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