プレスリリース

2009年8月25日
関西電力株式会社

美浜発電所3号機における国際原子力機関の運転管理評価チームの評価結果について

(別 紙)

調査および評価結果報告書の概要

1.運転管理評価チーム(OSART)による調査の概要
(1)調査期間:平成21年1月20日〜2月5日(17日間)
(2)評価分野:9分野
組織・管理・運営、訓練・資格、運転、保守、技術支援、運転経験の活用、放射線防護、化学、緊急時計画と対策
(3)メンバー構成
  • ・国際原子力機関職員および加盟国の専門家 計13名(12カ国
  • ・チームリーダー:国際原子力機関 運転安全課課長 ミロスラブ・リパー氏
  • *アメリカ、イギリス、韓国、スウェーデン、スロバキア、チェコ、中国、ドイツ、ハンガリー、フランス、ルーマニア、ロシア
(4)調査方法
 現場の観察、書類調査、事業者へのインタビュー等に基づき、原子力発電所の運営状況を把握して、良好な国際事例との比較および国際原子力機関の安全基準に照らして評価を行う。さらに他の原子力発電所に紹介し得る良好事例の抽出や、事実の背景にある課題を抽出し、発電所の安全性向上のきっかけとなる推奨事項・提案事項を抽出する。
2.評価結果報告書の概要
(1)主な結論
 OSARTチームは、関西電力と美浜発電所の管理層が、同発電所の運転に関する安全性と信頼性の向上に尽力しているという結論に至った。このことは、「安全を守る。それは私の使命、我が社の使命」という関西電力社長の宣言、5つの基本行動方針、および安全性の向上を目指して実施されている施策により、明確に示されている。平成16年8月の2次系配管破損事故の後、多数のプログラムと活動が確立、実施、評価、改善されている。チームとしては、こうしたプログラムと活動の範囲、質の高さに感銘を受けた。美浜発電所の管理層と所員は安全に献身しており、知識が豊富で、非常にプロ意識に富んでいるというのが、チームの認識である。
(2)良好事例(12件)
定義: 良好事例は、原子力発電所の優れた運転実績の持続に貢献している仕組や業務、運用中の設備を言い、他の原子力発電所で見られる事例よりも著しく優れた事例である。
<組織・管理・運営分野>
  • 1安全文化を評価するための包括的な仕組みを構築している。
  • 2発電所内の梯子には落下防止用セーフティブロックが備え付けられている。
    • *垂直に設置された梯子や足場を昇降する際、安全帯を引っ掛けておき、下まで落ちないようにする設備。
<訓練・資格分野>
  • 3原子力運転サポートセンターと原子力研修センターの講師は、業務経験豊富な熟練者から選任されている。
<運転分野>
  • 4遮断器・断路器等の誤操作を防止するために、操作の順番にあわせて鍵を束ねた「S環」を活用している。
    • *S字状のリング。
  • 5壁面に、壁の裏側にある見えない配管、弁の表示(ミミック表示)が行われている。
  • 6火災報知器と連動した構内監視用カメラ網が設置されている。
<保守分野>
  • 7作業前にツールボックスミーティングが実施されている。
<運転経験の活用分野>
  • 8ハットヒヤリ事例報告会を通じて継続的な情報共有を行っている。
<放射線防護分野>
  • 9性能の良い個人線量計(ガラスバッジ)を使用している。
<化学分野>
  • 10CCDカメラ*1を用いて復水脱塩装置*2の樹脂の分離面を自動的に検出している。
    • *1 光の明暗等の情報をデジタル信号に変換する半導体を用いたカメラ。
    • *2 イオン交換樹脂にイオン等の不純物を吸着させて浄化する装置。
  • 112次系系統に、カチオン膜を使用した電気伝導率計を設置している。
    • *取替の必要な樹脂を使用せず、長期間使用できる電気伝導率計(2次系系統への海水混入を検出する機器)。
<緊急時計画と対策分野>
  • 12福井県、美浜町を含めた包括的な原子力防災総合訓練を定期的に実施している。
(3)提案事項(7件)
定義: 提案事項は、主に良好な運転管理の実績をさらに向上させ、既存の業務や仕組に対する有益な拡張事項を示すとともに、現行業務に対して考えられるより優れた選択肢を提案することを意図している。
<組織・管理・運営分野>
  • 1発電所内の各所で一貫した運転指標を策定し、傾向管理、活用に関する運用の検討を提案する。
<訓練・資格分野>
  • 2長期にわたり当直業務から離れていた運転員が復帰する際の能力確認の仕組みの検討を提案する。
<運転分野>
  • 3非常用停止盤周辺の環境整備等、運用改善の検討を提案する。
    • *中央制御室外からも原子炉を停止することができるよう設置された設備。
  • 4運転操作の一時的な運用の変更とそれに伴う指示書の扱いの改善検討を提案する。
<保守分野>
  • 5機器や配管等への異物混入防止のあり方の改善の検討を提案する。
<技術支援分野>
  • 6発電所設備の定例試験結果の傾向管理の充実の検討を提案する。
<放射線防護分野>
  • 7管理区域における汚染が発生した場合、その拡大の可能性を最小限にするための作業の実施方法等の検討を提案する。
(4)推奨事項(6件)
定義: 推奨事項はIAEAの安全基準または実証された良好な国際事例にもとづき、運転上の安全性を、どのように改善したらよいかについての助言である。
<訓練・資格分野>
  • 1設備の保守、品質保証、放射線防護、化学、原子燃料技術要員への反復的・継続的訓練について、SATに基づいて実施するよう改善を推奨する。
    • *業務の遂行に必要な知識・技能を分析し、付与するための教育・訓練を開発・実施し、その評価を行う一連の流れを体系的に整理したIAEAが推奨する手法。SATはSystematic Approach to Trainingの略。
<運転分野>
  • 2中央制御室への出入要件を改善し、完全な運用を行うことを推奨する。
  • 3発電所内の各所で、可燃物管理をより効果的に行うよう改善を推奨する。
    • *例えば、紙やプリンターのトナー等。
<化学分野>
  • 4化学試験室における分析作業等の手順書を整備することを推奨する。
  • 5化学試験室における分析力の技術水準を向上させるための品質管理の改善を推奨する。
    • *配管内を流れる水の成分を分析するための試験室。
<緊急時計画と対策分野>
  • 6緊急時に発電所内にいる人々を放射線から防護するため、より効果的な準備を行うことを推奨する。
    • *放射線計測器、汚染防護服、よう素剤等について、より効果的な場所への備え付け等。

以 上

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