プレスリリース

2009年8月7日
関西電力株式会社

大飯発電所1、2号機 ほう酸補助タンク設置工事における協力会社作業員負傷の原因と対策について

 大飯発電所では1、2号機共用のほう酸補助タンクを、1号機原子炉補助建屋内に追加設置する工事を平成21年2月から実施しており、この工事のため、建屋屋外に設置した仮設足場(地上約17m)の足場材(パイプ)に固定していた金具(鋼材)の先端に資材運搬用のウインチ※1を取り付け、作業を開始しようとしていた、7月7日8時35分頃、ウインチが金具とともに(重さ計約25kg)落下し、地上にいた作業員の頭部に当たり、負傷しました。
 落下したウインチと金具を調べた結果、金具を足場材に固定しているクランプ(固定金具)に取り付けていたピン(固定ボルト)が折れていることを確認しました。

  • ※1 ウインチ:荷物を上げ下ろしするための工具。重さ約19kg

平成21年7月7日お知らせ済み]

1.調査結果
(1)金具の調査
  • ・今回落下した金具は、足場板を載せるために使用している三角形状の足場材で、足場材に取り付けるためのクランプにガイドと固定ボルトで連結されていました。
  • ・固定ボルトは、クランプ側の根元付近で折損しており、破断面には引きちぎられたような破面の特徴が見られました。
  • ・クランプは固定していた足場材に取り付けられたままでした。
  • ・金具を抑えているガイドには変形が認められ、足場材に残っていたクランプの取り付け部では、足場材に周方向の擦り傷が認められました
  • ・金具・固定ボルト・クランプ等は一体品であり、今回の工事で使用する前に、目視にて変形や腐食等の異常がないことを確認していました。
(2)作業状況の聞き取り調査
  • ・ウインチ(金具を含む)は、工事で追加設置するタンクを屋上から建屋内に搬入するのに伴い、屋上部の撤去物を地上に下ろす(荷下ろし作業)ためのもので、4月10・11日、7月6日の作業で使用していました。
  • ・荷下ろし作業は、作業前に金具の先端にウインチを取り付け、荷下ろし中に吊り荷(約30kg)が足場板と干渉しないよう、金具を足場より外側に押し出した後、荷下ろしを行い、作業終了後には金具を元の位置に戻し、ウインチを取り外していました。
  • ・金具を外側に押し出す動作は、荷を吊った状態でも行っており、押し出し・戻し動作は、足場材に固定しているクランプのボルトを緩めずに行っていました。
(3)金具押し出し動作の再現試験
  • ・今回と同一仕様の金具・固定ボルト・クランプ等を用いて足場材に固定し、クランプのボルトを緩めずに金具の押し出し・戻し動作を再現した試験を行った結果、5〜40回程度の動作で、固定ボルトの根元付近で折損し、その破断面は過大な力によって破断する延性破面の特徴が認められました。
2.原因
 ウインチを取り付けるために使用していた金具を足場材に取り付けていたクランプのボルトを緩めずに、金具の押し出し・戻し動作を繰り返したことにより、固定ボルトの根元付近に過大な力が加わり、押し出し動作を行った際に固定ボルトが折損し、ウインチとともに落下したものと推定しました。
 また、被災した時間帯は、荷下ろし作業の準備段階であり、ウインチの下方に立入り制限区画を設定しておらず、落下防止措置をとっていなかったことから、運搬車の誘導作業をしていた作業員に当たり被災したものと推定しました。
3.対策
 今回の事故は、ウインチ(仮設揚重設備※2)を足場材に取り付けていた金具の使用方法が適切でなかったために固定ボルトが折損し、ウインチとともに落下したものであり、今後は、請負工事にあたっての社内規定(請負工事一般仕様書)に以下の対策を明記し、災害の発生防止を徹底させることとします。
  • ・準備や片付け等の作業段階であっても、上下作業となる範囲は、作業区画を明確にして、立入禁止の措置をとるか、監視員を配置します。さらに、ネット等による防護措置を確実に実施することを徹底させます。
  • ・仮設足場上等で仮設揚重設備や金具等を使用する場合は、当該設備や金具が落下しないよう、落下防止措置を必ず行います。
  • ・仮設揚重設備を仮設足場等で使用する際には、専用の金具を使用し、事前に金具の正しい使用方法を作業関係者に徹底させます。
  • ※2 揚重設備:重量物を吊り上げるウインチ等。

 当社では、原子力発電所における労働災害を防止すべく、安全技術アドバイザーによる現場パトロール強化や、危険予知活動に関する教育の充実等の労働災害撲滅活動を昨年8月から展開していたにもかかわらず、今回の災害を防止できなかったことを反省し、上下作業における落下防止に力点を置いた現場パトロールの追加実施など、これまでの取り組みを一層充実させ、改めて労働災害の防止に努めていきます。
 さらに、工事計画から実施に至る全ての段階において、労働安全に主眼をおいた確実な事前検討の実施、適切な作業手順の策定・遵守、危険予知活動の徹底など、原点に立ち返った基本動作の徹底を図り、労働災害を発生させない作業環境づくりと、安全で確実な工事の実施に向けて全社を挙げて取り組んでまいります。

 なお、当社は、原子力安全・保安院からの指示(平成21年7月7日付け)を踏まえ、上記の内容を含めた報告書をとりまとめ、本日、原子力安全・保安院、福井県、おおい町に提出しました。

 安全最優先の取り組みを進めている中で、皆さまに多大なご心配をおかけしたことに対し、深くお詫び申し上げます。負傷された方の一日も早いご回復をお祈り申し上げますとともに、今回策定した再発防止対策を徹底し、安全最優先の発電所運営に努めてまいります。

以 上

<添付資料>

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