プレスリリース

2009年1月14日
関西電力株式会社

原子力発電所の運営状況について

 当社の原子力発電所における運営状況について、以下のとおりお知らせします。

1.運転状況について(平成21年1月13日現在)
発電所 電気
出力
(kW)
運転状況 備  考
美 浜
発電所
1号機 34.0万 運転中  
2号機 50.0万 運転中  
3号機 82.6万 運転中  
高 浜
発電所
1号機 82.6万 運転中  
2号機 82.6万 運転中  
3号機 87.0万 運転中  
4号機 87.0万 第18回 定期検査中
H20年8月23日〜H21年1月下旬
予定(調整運転中)
 
大 飯
発電所
1号機 117.5万 運転中
2号機 117.5万 運転中  
3号機 118.0万 運転中
  • ○原子炉熱出力の運転上の制限の逸脱について
    詳細は2(2)のとおり
    【事象概要、原因対策を取りまとめましたのでお知らせ】
  • ○A-余熱除去ポンプ出口流量計の指示値不良について
    詳細は2(3)のとおり
    【事象概要、原因対策を取りまとめましたのでお知らせ】
  • ○格納容器スプレイ作動パーシャル警報の発信について
    詳細は2(3)のとおり
    【事象概要、原因対策を取りまとめましたのでお知らせ】
4号機 118.0万 運転中  

2.トラブル等情報について

(1)法令に基づき国に報告する事象(安全協定の異常時報告事象にも該当する事象)

なし


(2)安全協定の異常時報告事象
発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 平成21年1月5日
件  名 原子炉熱出力の運転上の制限の逸脱について     (添付図1)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成21年1月5日18時4分、1次冷却材の水質等を調整している化学体積制御系統にある冷却材脱塩塔※1(A,B号機)を、使用中のB号機から待機中のA号機(新しい樹脂に交換済み)への切り替え操作を行ったところ、18時10分に冷却材平均温度※2と原子炉熱出力がわずかに上昇傾向であることを運転員が確認しました。
 このため、直ちに原子炉の出力を抑制するため、制御棒の挿入操作と1次冷却材系統へのホウ素注入を実施しました。その結果、原子炉熱出力では、18時40分頃に最大約101%(3,459.9MWt)まで上昇した後、低下傾向となり、18時54分、保安規定に定める運転上の制限値※3(3,423MWt)に戻りました。
 これにより、19時の時点で、18時から19時までの原子炉熱出力1時間平均値(3,433.3MWt)が、保安規定に定める運転上の制限値を約0.3%超えており、19時5分、運転上の制限を満足していないと判断しました。なお、20時の時点で、19時から20時の1時間平均値(3,399.6MWt)は、運転上の制限値以下となったことから、20時5分、運転上の制限を満足した状態に復帰したと判断しました。
 脱塩塔のイオン交換樹脂では、金属イオン等とともに中性子を吸収するホウ素も吸着されます。特に、新しい樹脂を使用する前には、1次冷却材を一定時間通水※4させることで、樹脂全体で十二分にホウ素を吸着させ、使用中にホウ素を吸着できない状態とした後、系統で使用することとしています。
 今回の原因を調査したところ、脱塩塔切替え前に実施したA号機でのホウ素吸着作業が不十分であったため、A号機への切替え後、樹脂で1次冷却材中のホウ素が吸着され、1次冷却材中のホウ素濃度が低下(事象発生前1,066ppmから約1,043ppmまで低下)した結果、原子炉出力が上昇したものと推定されました。
 ホウ素の吸着作業が不十分であった原因は、脱塩塔に通水操作を行う発電室では、抽出流量をそれまでの運転中の流量(約30m/h)より低い流量(約17m/h)にした後※5に行うこととしましたが、ホウ素を吸着させるための通水時間を評価する放射線管理課では、運転中の流量(約30m/h)で評価した結果として、「通水時間30分以上」と発電室に依頼していたことから、通水量が約17m/hの場合に必要な通水時間(約50分)が確保できず、A号機に切替え後、1次冷却材のホウ素が吸着されたものと判明しました。
 対策として、脱塩塔切替え操作にあたっては、脱塩塔切替え前に1次冷却材系統と新しく使用する脱塩塔出口のホウ素濃度が同等であることを確認した上で使用します。また、脱塩塔切替え操作に関する放射線管理課と発電室の意志疎通を、対面連絡により確実に実施します。
 本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。

  • ※1:冷却材脱塩塔
    1次冷却材系統から一定量の1次冷却材を抽出し、浄化や中性子を吸収するホウ素濃度の制御等を行っている。脱塩塔では、イオン交換樹脂に金属イオン等の不純物を吸着させて浄化しており、その能力が低下していたことから、待機中のものに切替える操作を行ったもの。
  • ※2:冷却材平均温度
    1次冷却材が原子炉に入る時と出る時の平均温度で、原子炉の出力を示すパラメータとして監視している。
  • ※3:保安規定に定める運転上の制限値
    運転中は、原子炉熱出力が3,423MWt 以下であることが求められている。運転上の制限を満足していない場合、速やかに原子炉熱出力を下げる操作を行うことが求められている。
  • ※4:1次冷却材を一定時間通水
    新樹脂を充填した脱塩塔のホウ素吸着作業中に、ホウ素濃度の低い脱塩塔出口水は、1次冷却材系統に戻さず、冷却材貯蔵タンクへ貯蔵し、その間、1次冷却材系統には1次冷却材系統水と同等のホウ素濃度水をホウ酸混合器より補給している
  • ※5:運転中の流量より低い流量
    ホウ酸混合器等の供給能力の制約から、現状の1次冷却材系統水のホウ素濃度と同等の補給水を安定して供給するため、運転中の流量より低い流量に変更している。

(3)保全品質情報等
発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 平成20年12月12日
件  名 A-余熱除去ポンプ出口流量計の指示値不良について   (添付図2)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成20年12月12日、2台(A、B)ある余熱除去ポンプ※1のうちA号機について、13時51分から定期起動試験(1回/月)を行い、起動試験を終了しポンプを停止した13時59分に、原子炉制御計装盤※2等の異常を表す警報が発信しました。直ちに状況を確認したところ、当該ポンプの出口流量計※3の指示値が上限側に振り切れていることを確認しました。
 この出口流量計が取り付けられている配管は、ポンプ起動試験時やポンプ停止中に水の流れがないことから、指示値の上昇は、出口流量計の不良によるものと考えられ、14時15分に保安規定で定める運転上の制限※4を満足していないものと判断しました。その後、14時28分に当該流量計の指示値が0m3/hに自然復帰しました。
 当該出口流量計を構成する検出配管、検出器、計測回路を点検した結果、各機器に異常は認められませんでしたが、高圧側および低圧側の検出配管に取り付けられているダンプナー※5の開度に差があることが確認されました。この開度差の影響を調査するため、ポンプ停止時の圧力低下を模擬した再現試験を行ったところ、圧力低下時に、一時的に高圧側検出配管と低圧検出配管の間に圧力差が生じ、流量指示が出ることが確認されました。しかしながら、今回見られたような指示値が振り切れる事象は再現できませんでした。
 これらの調査結果から、機器に異常は認められないものの、今回の出口流量計の指示振り切れは、ポンプ停止時にダンプナーの開度差による流量指示が出た際に、検出器や計測回路の一過性の故障が生じた可能性があるものと推定されました。
 対策として、今回の指示不良に関係したと考えられる検出器、計測回路(電源カード、演算カード)を新品に交換しました。
 また、直接的な要因ではないものの、ポンプ停止時に水の流れがないにもかかわらずダンプナーの開度差により流量指示が出ることが確認されたため、今後は高圧側および低圧側ともダンプナーの開度を全開で運用することとしました。
 これらの対策等を行い余熱除去ポンプを起動・停止し、当該出口流量計の指示が0m3/hで変わらないことを確認した後、保安規定で定める運転上の制限を満足した状態に12月17日に復帰しました。
本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。

  • ※1:余熱除去ポンプ
    原子炉の停止後、炉心の崩壊熱および原子炉構造物などが保有する熱を除去するために設けられている余熱除去系統で用いられているポンプ。
  • ※2:原子炉制御計装盤
    原子炉の圧力、流量、温度等の信号を受けて、原子炉運転のための主要系統を制御するための盤。
  • ※3:流量計の検出原理
    配管内に取り付けられたオリフィス(絞り機構)に、水が流れることでオリフィスの前後に圧力差(流量に見あった圧力差)が生じることを利用し、オリフィスの前後(高圧側、低圧側という)から検出配管により圧力を取り出し、検出器で圧力差を検出し、計測回路で流量指示に変換する。
  • ※4:保安規定で定める運転上の制限
    運転中は、事故時監視計装のうち余熱除去ポンプ出口流量計2系統(A、B)が動作可能であることが要求されている。
  • ※5:ダンプナー
    検出配管系統の脈動(急激に変化する圧力)を減衰させる機器。

発電所名  大飯発電所3号機 発 生 日 平成21年1月11日
件  名 格納容器スプレイ作動パーシャル警報の発信について  (添付図3)
事象概要
および
対 策 等

 定格熱出力一定運転中の平成21年1月11日20時14分に、「工学的安全施設パーシャル作動」(格納容器圧力異常高格納容器スプレイ作動パーシャル)警報※1が発信しました。
 直ちに状況を確認したところ、4チャンネルある格納容器圧力異常高格納容器スプレイ作動信号のうち、1チャンネル(チャンネル1)が動作(設定値:193.5kPa)状態であることを確認しました。同信号回路は、格納容器内の圧力を検出し、格納容器圧力の異常を示す信号を伝送するものですが、検出されている格納容器圧力(1.1〜2.1kPa)は正常であり、回路内から発信される他の警報等はありませんでした。
 また、その他の3チャンネルについては、格納容器圧力は正常であり、異常のないことを確認しました。
 この状況から、チャンネル1の格納容器圧力異常高格納容器スプレイ作動信号を発信する回路に故障の可能性があると判断し、点検を実施したところ、当該作動信号を発信する警報設定カード※2の入力側の信号は正常で、当該作動信号が発信しない状態であるにもかかわらず出力側で異常信号を発信していることが判明したことから、当該カードに偶発的な故障が発生し、警報が発信したものと推定しました。
 このため、故障が確認された警報設定カードを予備品に取替え、健全性を確認した後、1月12日2時20分に通常状態に復旧しました。
 本事象による環境への放射能の影響はありませんでした。

  • ※1:格納容器圧力異常高格納容器スプレイ作動パーシャル警報
    格納容器圧力が異常に高くなったときに格納容器スプレイを作動させるための信号。4チャンネルで構成させており、そのうち、1チャンネルのみが動作したことを示す警報。なお、2チャンネル以上が動作した場合、格納容器スプレイ設備が作動する。
  • ※2:警報設定カード
    入力された電気信号を設定値と比較し、警報信号を発信する装置。

以 上

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