プレスリリース

2008年6月2日
関西電力株式会社

高過負荷100kVA級SiCインバータの開発について

 当社はこの度、電力系統の異常時や電力機器の過負荷動作時に定格出力の3倍(300kVA)の電力を供給できる高過負荷100kVA級SiC(シリコンカーバイト)インバータの開発に成功いたしました。100kVAの定格出力は国内外の他社が開発しているSiCインバータの約15倍の高出力であり、また「定格出力の3倍の高過負荷能力(定格出力300kVAのSi(シリコン)インバータに相当)」の実現は世界で初めてのものです。

 インバータは交流と直流を相互に変換したり、交流の周波数を変える装置であり、電力系統の異常時(落雷等で送配電線の電圧が低下する場合など)や、電力機器の過負荷動作時(モータの回転スピードやトルク(馬力)を短時間で定格以上に大きくしなければならない場合など)において、インバータには過負荷性能(短時間に定格以上の出力を供給できる能力)が要求されます。しかし、現在普及しているSi半導体素子を用いたインバータでは、最高動作温度が125℃以下と低いため、定格を超える大きな出力を供給することができませんでした。

 当社は、高温、高電圧に耐えるというSiC材料の優れた特性に注目し、これまでSiC半導体素子(以下、SiC素子)を用いたインバータの開発をしてまいりましたが、今回SiC素子を400℃以上の高温で動作させることに成功し、電気機器を保護するのに必要な時間(最大3秒間)の間、定格出力の3倍(300kVA)の出力を供給できる高過負荷SiCインバータを開発しました。これは、①大面積のSiC素子を新たに開発してSiC素子の発熱量を抑える、②SiC素子を絶縁する保護用樹脂(ナノテクレジン)によりSiC素子モジュールの耐熱性を向上させる、③SiC素子が発生する熱を効率よく放散できるように冷却構造を改良する、ことにより実現したものです。また、これらの開発によりインバータの容積を当社従来品比1/7.5に小型化すると共に、定格出力で150時間の連続運転を行うなど、実用化に向けて大きく前進しました。

 今回開発した高過負荷SiCインバータを利用することにより、瞬時電圧低下対策機能付き各種電力機器(非常用電源、負荷平準化装置など)の省エネ・省スペース化を図ることが期待できます。

 近年、インバータは上記機器以外の分野においても、例えば、太陽光発電システムの運転に不可欠な装置として用いられており、また、エアコン・ヒートポンプ・冷凍機の省エネ運転のための装置としても用いられています。さらには、電車や船舶、電気自動車やハイブリッド車などのモータ機器の駆動制御にも用いられるなど、その用途が急拡大しております。今回開発した高過負荷SiCインバータの技術は、近い将来、これらの装置の効率化と小型化にも寄与するものであると考えております。

 当社は、今後、平成22年頃を目途に1、000時間程度の長時間運転試験を行い、実用化を目指すと共に、更なる高電圧化、大出力化に取り組んでまいります。

以 上

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