プレスリリース

2008年5月26日
関西電力株式会社

大飯発電所3号機の定期検査状況について(原子炉容器Aループ出口管台溶接部で確認された傷について)

 大飯発電所3号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力118万キロワット、定格熱出力 342万3千キロワット)は、第13回定期検査中であり、国内外で発生した600系ニッケル基合金溶接部での応力腐食割れ事象を踏まえ、原子炉容器出入口管台(計8箇所)の溶接部にウォータージェットピーニング工事※1を実施する計画としています。
 この工事のため、3月6日から3月10日にかけて、事前に当該溶接部内面の渦流探傷試験(ECT)※2を行ったところ、Aループ出口管台の600系ニッケル基合金溶接部1箇所で有意な信号指示(長さ約10mm)を確認しました。なお、Aループ入口管台およびB、C、D各ループの出入口管台については、有意な信号指示は認められませんでした。


 水中カメラにより詳細に点検したところ、傷の形状は複数に折れ曲がるとともに枝分かれした長さ約3mmの割れであり、1次冷却材環境下における応力腐食割れ※3の特徴を有しており、傷の周辺では、引張応力が残留する可能性がある機械加工※4跡を確認しました。これらのことから、1次冷却材環境下における応力腐食割れの可能性が高いと推定しました。


 この部位について、超音波探傷試験(UT)※5を行った結果、傷の深さは浅いものと考えられる信号指示でした。
 ECTで有意な信号指示が確認されなくなるまで当該部表面の研削を行うこととして、4月22日より研削を開始しましたが、約3.6mm研削した時点で、外観目視観察で傷が確認でき、ECTにおいても有意な信号指示が認められている状況であり、さらに研削した場合、工事計画認可申請書※6に記載している板厚(70mm)を下回る可能性があったことから、記載内容を変更する手続きを国に行い、手続き完了後、研削を再開することとしました。
平成20年4月17日5月16日 お知らせ済み]


  ※1: ウォータージェットピーニング工事
金属表面に高圧ジェット水を吹き付けることにより、金属表面の引張残留応力を圧縮応力に変化させる。
  ※2: 渦流探傷試験(ECT)
高周波電流を流したコイルを対象となる配管等に接近させることで対象物に渦電流を発生させ、対象物の欠陥に起こった渦電流の変化を電気信号として取り出すことで欠陥を検出する検査。
  ※3: 1次冷却材環境下における応力腐食割れ
1次冷却材環境下で600系ニッケル基合金に発生するPWRプラント特有の応力腐食割れ。(材料、環境および応力の3要素が重なって発生する割れ)
  ※4: 機械加工
溶接により発生する表面の凸凹を切除するとともに、管台とセーフエンド部の段差を無くすため、金属製の刃を周方向に回転させ切削加工すること。
  ※5: 超音波探傷試験(UT)
超音波を使って金属等の内部にある傷を検出する試験。
  ※6: 工事計画認可申請書
発電所の建設工事を開始する前に機器の詳細設計内容について、国に提出する申請書。


 傷の深さを確認するため、工事計画認可申請書に記載の板厚を変更(70mmから64mm)した後、変更前の工事計画認可申請書の板厚70mmまで研削(総研削量約4.6mm)しましたが、外観目視観察で傷が確認でき、ECTで有意な信号指示が認められていることから、当該箇所の板厚は、変更前の板厚70mmを満足していないものと判断しました。


 外観目視観察による傷の長さは、研削深さ約4.6mmで約12.5mmとなっていますが、今後、変更後の工事計画認可申請書の板厚64mmまでの範囲内で、外観目視観察で傷が確認できなくなるとともに、ECTで有意な信号指示が確認されなくなるまで研削を行います。
 なお、今後の定期検査工程は未定です。
 本事象による周辺環境への影響はありません。

以  上

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