プレスリリース

2004年9月14日

高浜発電所4号機の定期検査状況について(タービンサンプ水モニタ等の指示の上昇についての原因と対策)

 高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、平成16年8月10日から第15回定期検査を実施していますが、平成16年8月30日、18時46分に「プロセスモニタ放射線注意」(タービンサンプ水モニタ注意(設定値1,500cpm))の警報が発信しました。  
 確認したところ、タービンサンプ水モニタの指示が通常約450cpmのところ18時35分頃から上昇し、18時46分に注意警報が発信、また1次系建屋基礎湧水サンプモニタについても通常約550cpmから約950cpm(注意警報:1,900cpm)に上昇していることを確認しました。  
 このため、タービンサンプポンプおよび1次系建屋基礎湧水サンプポンプを停止し、放水口への各サンプ水の放出を停止しました。  
 その後、Cタービンサンプ水の分析を実施した結果、放射能濃度は2.9×10-2Bq/cc(コバルト58:1.7×10-2Bq/cc)、1次系建屋基礎湧水サンプは、2.6×10-2Bq/cc(コバルト58:8.9×10-3Bq/cc*2)でした。  
 これらの結果から、この事象によりごく微量(約3×105Bq*1)の放射性物質が放水口に放出されていますが、保安規定に定める値に比べ十分低く、また放水口モニタの指示値に変動のないことから、周辺環境への放射能の影響はありませんでした。  
 1次系建屋基礎湧水サンプ水モニタの指示値は19時頃から低下し、タービンサンプ水モニタの指示値も19時50分頃から低下しました。  

*1: 高浜発電所の保安規定に定められた液体廃棄物の放出管理目標値は、年間1.4×1011Bq(ベクレル)であり、今回の放出量約3×105Bq(ベクレル)は、その値の約50万分の1です。 なお、平成15年度放出実績はありません。
*2: 前回のお知らせでは、8.8×10-3Bq/ccと記載しておりましたが、小数点第二位の処理方法が適切でなかったため、今回8.9×10-3Bq/ccに訂正します。
平成16年8月31日お知らせ済
1.調査結果  
 タービンサンプ水モニタ(R-58)および1次系建屋基礎湧水サンプ水モニタ (R-59)の一時的な指示上昇は、中間建屋サンプに放射性物質を含む水が流入したためと考えられることから、発生当時の系統構成をもとに、流入源、流入経路の調査を行いました。


(1)中間建屋サンプの流入源、流入経路調査(図-1参照)     
  中間建屋サンプへの流入源、流入経路としては、補助建屋機器ドレン*3(管理区域)または、中間建屋ドレン(非管理区域)の可能性が考えられます。
 *3 ドレン:機器等からの排水  


補助建屋機器ドレン(管理区域)からの流入の可能性
・ 事象発生時に行っていた作業を確認したところ、B余熱除去クーラ、B使用済燃料ピットクーラ、B格納容器スプレクーラの補機冷却水(放射性物質を含まない水)の排水(ブロー)が行なわれており、中間建屋サンプへ流入するラインを使用していました。
・これらの機器内に残留していた補機冷却水の分析を行ったところ、B余熱除去クーラ内の残留水から放射性物質(コバルト58)が検出されました。一方、他のクーラ内の残留水からは、放射性物質は検出されませんでした。なお、各クーラのブロー前(事象発生前)に補機冷却水の分析を行っていましたが、放射性物質は検出されていません。  


中間建屋ドレン(非管理区域)からの流入の可能性    
 中間建屋ドレンに放射性物質が含まれていた可能性の有無を確認するため、非管理区域の排水受入口のスミア測定*4を実施し、異常のないことを確認しました。
*4 スミア測定:放射性物質の表面汚染を調べる方法の一つで、ろ紙などで表面をふき取り、ろ紙に付着した放射性物質の量を測定して表面汚染を調べる測定方法。  


 これらのことから、中間建屋サンプへの流入源としては、B余熱除去クーラからのブロー水の可能性が高いことが判明しました。


(2)B余熱除去クーラの調査(図-23参照
・B余熱除去クーラの補機冷却水ブローホースは、中間建屋サンプ行きの排水口*5に接続されていましたが、ベントホースは廃液貯蔵タンク行きの排水口に接続されていました。
・補機冷却水ベントホースの汚染状況を確認したところ、ベントホースは新品を使用していたにもかかわらず、ホース内面から放射性物質(コバルト58等)が検出されました。また、ベントホースを接続していた廃液貯蔵タンク行きの排水口の接続部の内面からも、放射性物質が検出されました。
・廃液貯蔵タンク行きの排水口には、B余熱除去クーラ1次側水(放射性廃液)のドレン配管も接続されており、事前にブローを実施した残留水(放射性廃液)が確認されました。また、この残留水とタービンサンプ水から検出された放射性物質の核種およびその構成比を比較したところ、ほぼ一致していることが確認されました。
・念のため、B余熱除去クーラの伝熱管についてヘリウムリークテストを実施したところ、本体部クーラ伝熱管からの漏えいはなく、B余熱除去クーラ本体は健全であることを確認しました。
 *5 排水口:排水用に床から突き出ているパイプ式の筒(スタンドパイプ)


(3)ベントホースの接続先の運用に係る調査
・B余熱除去クーラの補機冷却水のブローホースとベントホースは、当初、廃液貯蔵タンク行きの排水口に接続されていましたが、廃棄物処理量の低減を図るために、事象発生当日、補機冷却水の分析で問題のないことを確認した上で、中間建屋サンプ行きの排水口に接続を変更しました。
・ベントホースの接続先の運用については明確となっていなかったため、ブローホースのみ中間建屋サンプ行きの排水口に接続していました。
 
 
2.推定原因  
 B余熱除去クーラの補機冷却水(放射性物質を含まない)ベントホースが、同クーラの1次側(放射性廃液)ドレンホースと同じ排水口に接続された状態で、8月30日14時00分にB余熱除去クーラの補機冷却水ブロー弁を開いてブローを開始し、同17時30分にベント弁を開き、ブロー弁を全開にしたところ、ブローに伴いB余熱除去クーラ内の圧力が低下したため、ベントホースから空気が吸い込まれ、クーラ1次側水のドレン配管に残留していた放射性廃液を吸引したものと推定されます。
 このため、ベントホースを通じて放射性廃液がB余熱除去クーラの補機冷却水内に流入し、ブロー水とともに中間建屋サンプに放出され、さらに移送ポンプによりA,Cタービンサンプおよび1次系建屋基礎湧水サンプに移送されたため、タービンサンプ水モニタ、1次系建屋基礎湧水サンプ水モニタの指示が上昇したものと推定されました。
 
 
3.対策(図-4参照)  
 今回、補機冷却水ベントホースの接続先の運用が明確に定められていなかったこと等を踏まえて、放射性物質を含まない系統への放射性物質の流入防止の観点から、以下の対策を実施します。
・ベントホースについては、他系統からの吸い込み防止の観点から、仮設タンク等を介して排水口と接続します。
・ベントホースとブローホースは同じ系統に接続します。
・上記について、作業および業務の要領を定めた手順書に反映するとともに、関係者に周知し、ベントホース接続運用の明確化を図ります。  
 
 
 なお、放射性物質が検出された各サンプ水については、放射性廃棄物として取り扱い、法令に従い廃棄物処理設備で処理し、サンプの洗浄を行った上で、通常の運用に復旧しています。   
以 上
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