プレスリリース

2003年12月18日

高浜発電所1号機および2号機の定期安全レビュー報告書のとりまとめならびに高経年化対策に関する報告書の提出について

 国の評価方針として示された「高経年化に関する基本的な考え方」(平成8年4月)に基づき、高浜発電所1号機を対象に高経年化対策について検討しました。

 高浜発電所1号機のプラントを構成する系統・構築物・機器を部位まで展開し、部位ごとに想定される経年変化事象に対して長期健全性評価および現状保全の妥当性評価を実施し、高経年化対策について総合的に評価を行いました。
 また、耐震性については、想定される経年変化事象に対して耐震安全性評価を実施し、高経年化対策に反映すべき課題の有無を検討しました。
 仮定する運転期間としては、国の「高経年化に関する基本的な考え方」と同様60年間としています。


 評価の結論は次のとおりです。

  • 大部分の機器については、現状の保全を継続することにより、今後長期間の運転を想定しても安全に運転を継続することは可能である。
  • 一部の機器については、現状の保全項目に加えて新たな保全策を講じる必要がある。

 これらの結論を基に、高経年化対策上現状の保全項目に追加すべき新たな保全策について長期保全計画として取りまとめました。主なものは次のとおりです。

  • 各機器の疲労評価に対する実過渡回数*1に基づく評価
  • 電気ペネトレーション*2の絶縁低下に対し、他発電所の代表的な電気ペネトレーション単体での絶縁抵抗の測定
  • 基礎ボルトの腐食等に対する実機サンプリング等による調査
  • コンクリートの強度低下に対する非破壊検査等の実施
  • 蒸気加減弁弁体ボルトの応力腐食割れに対する非破壊検査等の実施

 また、これらの評価結果を基に、今後更に充実すべき技術開発課題について取りまとめました。主なものは次のとおりです。

  • 原子炉容器中性子照射脆化*3の上部棚吸収エネルギー*4低下に関する評価技術の整備
  • 原子炉容器中性子照射脆化に関する関連温度*5上昇に対する脆化予測式の精度向上
  • 原子炉容器中性子照射脆化に関する使用済試験片再生技術の確立
  • ステンレス鋼の照射誘起型応力腐食割れ*6評価技術の確立
  • ケーブルの絶縁低下に関する実機環境を模擬した評価手法の確立

 以上より、高浜発電所1号機における高経年化対策に関し、現状の保全の継続および点検・検査の充実等を行うことにより、プラントを安全に長期間運転することが可能との見通しを得ました。

 今後は、とりまとめた長期保全計画を具体的な保全計画に反映し、営業運転開始後30年以降の定期検査時等に保全策を実施していきます。

 また、今回の評価は、現在の最新の知見に基づき実施したものですが、今後、この高経年化対策に関する評価について継続的に再評価していきます。

*1 実過渡回数
 プラントを構成する機器が実際に受ける過渡事象発生回数をいう。
*2 電気ペネトレーション
 原子炉格納容器内外で高度な気密性を確保しながら、電力および信号を送受するための設備。
*3 中性子照射脆化
 中性子の照射により、炭素鋼、低合金鋼などのフェライト系材料に非常に微小な欠陥(析出物、マイクロボイド)が生じ、引張強さ及び硬さが増加、延性及び靭性が低下する現象をいう。原子炉容器の炉心領域においては、中性子照射により上部棚吸収エネルギーの低下と関連温度の上昇が起こることが知られている。
*4 上部棚吸収エネルギー
 材料の破壊靱性の指標となるもので、シャルピー衝撃試験において延性破面率が100%となる領域(上部棚領域)における吸収エネルギーをいう。
*5 関連温度
 落重試験とシャルピー衝撃試験により求められる非延性破壊が発生すると定義される温度。
*6 照射誘起型応力腐食割れ
 中性子・ガンマ線照射の影響によって材料の粒界近傍での化学組成や微細組織が変化する。その変化した材料と環境要因・応力要因が重畳することにより発生する応力腐食割れをいう。                
以  上
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