プレスリリース

2002年5月23日

世界初の電力用高温高速SiCダイオードモジュールの開発について



 当社は、この度、株式会社日立製作所および株式会社クリー(CREE)社と共同で、次世代の電力変換設備の基盤装置として期待される素材であるシリコンカーバイド(SiC)を使ったダイオードモジュールを世界で初めて開発しました。

 現在、交流電流を直流に変換するなどあらゆる分野で、電力を制御するためにシリコン(Si)パワー半導体素子が使われていますが、Si材料は電力変換に伴う損失が大きく、耐圧が低いことや高温で動作できないなど、電気事業用途では性能的に限界に直面しています。このため、Si材料に比べ物理的・電気的に優れた特性を持つSiC材料が注目され、近年、日米欧で活発な開発競争が展開されています。当社はこれまで、(株)クリー社と共同で、世界に先駆けて12.3kV級高耐圧超高速SiCダイオード(平成12年2月21日お知らせ済み)と4.5kV級超低損失SiCトランジスタ(平成13年1月15日お知らせ済み)を開発することに成功しましたが、SiCは結晶欠陥が多く大面積チップの作製が困難なため、大電流化が可能なダイオードモジュールが形成できないという問題点がありました。

 今回、結晶欠陥部を避けてSiCチップを製作する技術の開発によりチップの大面積化を可能にしたことと、チップ間の高温圧接技術の開発により並列接続を可能にしたことにより、SiCダイオードチップを複数個内蔵したダイオードモジュールの開発に成功し、大電流化と耐高温化が実現しました。これまでのSiCダイオードは、電流容量が1~5A、動作が可能な温度は250℃まででしたが、開発したモジュールは耐圧5kV・電流容量200Aおよび耐圧3kV・電流容量600Aであり、350℃の高温下でも使用することができます。また、従来の電力用高耐圧Siダイオードに比べても、電力変換速度が10倍になるため損失低減ができること、Siでは不可能な高い動作温度が可能になるため、装置の小型化や効率化が可能になるといったメリットがあります。

 当面、電力用Siスイッチング素子と組み合わせて大電力用インバータを開発しますが、近い将来、SiCスイッチング素子もダイオードと一緒にモジュールに内蔵した大電力用インバータを開発し、電力用途への実用化・商品化を図ります。特に、レドックスフロー電池と組み合わせて小型高性能の瞬低対策装置や非常用電源、負荷平準化装置への適用を目指します。

 将来は、マイクロガスタービンや燃料電池などの分散型電源を系統に連系するインバータ装置等に適用することで省エネ化を図ります。また、電力会社間で電力を融通し合う系統間連系装置や系統安定化装置に適用できれば、超高圧送電線における事故等による電圧変動や周波数変動の影響範囲を最小限に食い止め、電力そのものの高品質を維持できます。さらには、電気自動車やリニアモーターカーのインバータ、レーザやX線源用の高耐圧電源、CRTディスプレーの駆動装置、高精細テレビやモバイル通信局用電波発信装置への活用も有望視されています。

 なお、本開発モジュールの詳細技術は、6月3日~7日に米国のサンタフェ市で開催されるIEEE主催のパワー半導体素子の国際学会ISPSD(International Symposium on Power Semiconductor Device's & ICs)で発表する予定です。

以 上  

<参考資料>


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