プレスリリース

2000年4月24日

高浜発電所3号機の原子炉起動および調整運転の開始について

1.今回の定期検査を利用して実施した主な工事等

 (1)原子炉容器照射試験片取出工事
 中性子照射による原子炉容器の材料特性変化を定期的に把握するため、原子炉容器内部に設置している照射試験片を計画的に取り出しました。

 (2)原子炉容器供用期間中検査等
 原子炉容器の供用期間中検査(10年計画)として、原子炉容器の溶接部等について、抜き取り的に超音波による探傷検査を行い、健全性を確認しました。
 また、キャノピーシール健全性確認のため、制御棒駆動装置キャノピーシール全数について、渦流探傷検査(ECT)を実施し、健全性を確認しました。

 (3)余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事  (図-1参照
 アクシデントマネジメント対策(*1)として、炉心損傷を防止するため非常用炉心冷却系(ECCS)の再循環注入モード(*2)による長期的な炉心冷却方式の多様化を想定し、格納容器スプレイポンプを用いた再循環も可能となるよう、余熱除去(低圧注入)ポンプ出口配管と格納容器スプレイポンプ出口配管を接続しました。

 *1;アクシデントマネジメント対策
設計で考慮していた事故の範囲を大きく超え、炉心の損傷に至るような過酷事故(シビアアクシデント)に備え、現状の設備を有効に活用してその発生防止や発生後の影響を緩和することを考慮した対策。

 *2;非常用炉心冷却系の再循環注入モード
一次冷却材喪失事故時、非常用炉心冷却系により燃料取替用水タンクのホウ酸水を原子炉内に注入するが、燃料取替用水タンク水位が低下した際には、格納容器再循環サンプに溜まった冷却水を余熱除去ポンプ等により原子炉に再注入すること。

 (4)発電機負荷開閉装置設置工事  (図-2参照
 所内電源の信頼性向上対策として、発電機と主変圧器の間に、発電機負荷開閉装置を設置しました。

 (5)日本原子力発電 敦賀発電所2号機における一次冷却水漏えい事故を
    反映した検査の充実   (図-3参照
  • 再生熱交換器の中間胴本体抽出水出口付近母材部(第1、第2支持リング間1箇所)および連絡管溶接部、連絡管エルボ母材部(36箇所)において、超音波探傷検査(UT)を実施し、健全性を確認しました。
  • 熱成層による温度境界面の変動を受けやすい箇所(余剰抽出ライン他)2箇所について、超音波探傷検査(UT)を実施し、健全性を確認しました。
  • 原因が明らかになっていないフランス・シボー発電所の熱疲労について、類似箇所(溶接線と母材、39箇所)について、超音波探傷検査(UT)を実施し、健全性を確認しました。
  • 第3種管のうち、第1種管と同等の温度、圧力の一次冷却水が流れる再生熱交換器と原子炉冷却材系統間の充てん、および抽出系配管の突き合わせ溶接部については、従来の漏えい検査に加え、定期的(10年に25%)に超音波探傷検査(UT)を実施することとし、本定検では10箇所について実施し、健全性を確認しました。

2.蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査(ECT)および抜管調査の結果(図-4参照

 蒸気発生器伝熱管全数(10,118本)について、その健全性確認のため、渦流探傷検査(ECT)を実施した結果、A-蒸気発生器の伝熱管1本およびB-蒸気発生器の伝熱管3本の計4本(高温側の管板拡管部)に欠陥の可能性を示す有意な信号指示が認められました。
 この有意な信号指示は、同仕様の高浜4号機で認められたものと同様であることから、製作時に伝熱管を管板部で拡管する際、管内面で局所的に引張りの残留圧力が発生し、これと運転時の内圧が相まって、伝熱管内面から応力腐食割れが発生したものと推定されました。
 対策として、この伝熱管4本について、施栓しました。
 また、実機伝熱管のデータ充実の観点から、有意な信号指示が認められた伝熱管のうち、B-蒸気発生器の1本を抜管して調査を実施した結果は以下のとおりです。
  • 当該部位の内表面について浸透探傷検査(PT)を実施した結果、管板上面より約30mm下方に長さ約4mm、および約2mmの軸方向の指示が、また約56mm下方に長さ約4mmの軸方向の指示が認められました。
  • 損傷部の断面を光学顕微鏡で観察した結果、損傷はいずれも管内表面を起点としており、一次側からの応力腐食割れであることが確認されました。また、損傷の最大深さは約0.76mmでした。
  • 抜管後の管板管穴の内径を測定した結果、管理値内であるものの、損傷部付近で管板管穴内径がわずかに拡大している傾向が認められました。
  • 伝熱管外面を観察した結果、伝熱管拡管部上部では、二次側水の浸入跡が認められましたが、下部では浸入跡は認められませんでした。

3.燃料集合体の取替え

 
燃料集合体全数157体のうち49体を取り替えました。
(取替用燃料集合体のうち48体は新燃料集合体)

4.次回の定期検査の予定

 
平成13年夏頃



以 上  

<参考資料>
図-1 余熱除去系、格納容器スプレイ系配管接続工事概要図
図-2 発電機負荷開閉装置設置工事図
図-3 敦賀2号機 一次冷却水漏えい事故反映検査充実概要図
図-4 高浜3号機 蒸気発生器伝熱管のECT概要図
高浜発電所3号機での主要なアクシデントマネジメント策
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