2022-10-26

「AIで変圧器の未来が見える!?」

写真左から、岩城さん、笠岡さん

株式会社かんでんエンジニアリング

  • 総合エンジニアリング企業として、電気・空調・情報通信などお客さま設備の設計・施工から設備のサポート・メンテナンスまで幅広い事業領域をフィールドとし、電力工事等で培った高度な技術力・提案力・現場力でお客さまのお困りごとを解決。
  • 今回は、油入変圧器の総合診断に携わる笠岡さん、岩城さんに、未来の機器状態を予測する新技術「AI診断」開発の裏側を伺いました。
~今回お話しを伺ったお二人~
株式会社かんでんエンジニアリング 石油・環境事業部 診断部 診断グループ
  • 笠岡 誠(かさおか まこと) グループマネジャー
  • 岩城 遼(いわき りょう)さん

絶縁油国内シェアNO.1メーカーのノウハウを活かした「油入変圧器の総合診断」

-油入変圧器の総合診断について具体的に教えて下さい。

岩城さん
私たちが所属するかんでんエンジニアリング診断部ではお客さまの安心・安全のため、工場などの様々な設備の診断を行っています。その中でも油入変圧器は、主要機器の一つです。変圧器の中は絶縁油で満たされており、その油を採油して分析室に持ち帰り、油中に溶けたガスの種類や量を分析することで、変圧器の内部異常を診断したり(油中ガス分析)、絶縁油自体の性能を調べたりできます。まさに人間の健康診断で行う血液検査のようなイメージですね。
笠岡さん
実は、かんでんエンジニアリングは、絶縁油を自社製造していて、国内シェアNO.1なんです。もともとは絶縁油の製造からスタートし、その知見を活かそうと始まったのが、この油中ガス分析による診断サービス。造るノウハウを持っているからこそ絶縁油のことも理解しており、診断精度や技術の高さには自負があります。油中ガス分析は年間1万件以上行いますが、関西のみならず全国から依頼をいただいています。

変圧器内部異常診断のパイオニアだからこそ開発できた未来予測AI

-新技術「AI診断」について教えてください。

岩城さん
このAI診断は変圧器内部の異常診断(油中ガス分析)に用います。この技術によって、変圧器の現在の異常箇所を診断するだけではなく、最大2年後までのガス推移を予測することで、「この先、変圧器がどのような状態になるのか?」という変圧器の未来を予測できるようになりました。開発には過去から蓄積した53万件ものビッグデータを活用しており、パイオニアとして50年以上実績を積み重ねてきたかんでんエンジニアリングだからこそ開発できた独自技術です。

ー開発することになったきっかけを教えて下さい。

笠岡さん
以前、エキスパートシステムという変圧器の異常箇所を予測するシステムを開発し、オプションとして回帰分析による最大1年後までの未来予測機能を付けていたのですが、簡易的でそれほど精度が高くありませんでした。お客様にとっては、現在の異常よりも、「将来機器がどうなるのか?」という予測のほうが、ニーズが高いことは分かっていたものの、予測精度を上げる手法がない状態でした。そんな中、別件でAIを扱い、「これを油中ガス分析にも導入すれば予測精度が上がるのでは?」と思いついたのが始まりです。

壁を乗り越え、スピーディーかつ精度の高い未来予測AIが誕生

笠岡さん
開発に着手してから3年ほど試行錯誤の末、2022年5月に無事営業を開始しました。開発は私が主に進めましたが、読み込むデータの選定や予測結果の精度確認など、グループメンバーにもたくさん協力してもらいました。思いがけなかった一番の壁は、システム同士の連携でした。今回は、従来システムに新たなAIシステムを追加するという進め方だったのですが、お互いのプログラミング言語が違ったんです。当初は深く考えておらず、AIシステムを都度呼び出し予測して、その結果を従来システムで読み出すことで対応しようと考えていたのですが、実際やってみると相当時間がかかることが判明しました。年間1万件以上の分析を行うためにはスピード面の改善が不可欠で、システム同士を直接連携させようとしたものの、方法は手探り状態・・・。最終的には海外のホームページを自力で読み解き、なんとか解決しました。非常に骨が折れましたが、1時間かかる動作が数分までに改善されてホッとしました!
精度へのこだわりはもちろん、例えば入力内容に不備があると、登録ボタンを押せないようにするなど、人によるミスを防ぐチェック機能も充実させました。

お客さまファーストの視点

ーAIはマンパワーの軽減のために使う、という先入観がありましたが、今回は違うんですね。

岩城さん
そうですね。その意味では、今回開発したAI診断はお客さまサービス向上のためのものです。今まで、「異常なし」と判定した機器は1年毎の定期診断をお勧めしていましたが、AI診断を行えば2年毎で十分となりコスト削減になります。また、異常の可能性がある機器については、将来どういった異常が起こりうるか、より精度よくお伝えできるようになりました。

ー診断の間隔が長くなると、会社として売り上げが落ちることになるのでは。

笠岡さん
短期的に見ればそうかもしれませんが、AI診断の導入によって、トータル的に当社のサービスを選んでいただけるようになれば嬉しいです。
開発はコストもかかりますし、苦労もありましたが、「お客さまの役に立つことは思い切ってやっていこう!」という会社やメンバーの思いがあったからこそ、今回のAI開発を実現できたのだと思います。

休日の過ごし方〜猫に癒やされる&サッカー観戦〜

ーお忙しいお二人ですが、休日の過ごし方や趣味を教えて下さい。

笠岡さん
中3・小5の子供がいます。上の子は受験生なので、休日は勉強を教えたり、息抜きにゲームに付き合ったりしています。また、1年前に猫を飼い始めたのですが、お世話をしているときは本当に癒やされます。

岩城さん
スポーツをするのも見るのも好きで、特にサッカー観戦が楽しみです。Jリーグが好きなので、以前はスタジアムまで足繁く通っていましたが、コロナの影響で最近は動画やテレビが中心です。観戦時は真剣そのものなので、妻は自分のことを遠巻きに見ています(笑)

(聞き手)
関西電力株式会社 広報室 村上、玉川