2022-4-13

届けたいのは、人生観を変える旅 TRAPOL合同会社 廣瀬 圭祐

  • TRAPOL合同会社(以下、TRAPOL)は、関西電力の起業チャレンジ制度の活用により2019年10月に設立。
  • 同社では、「現地の暮らしに溶け込む旅」をコンセプトに、旅行者と海外のローカルフレンドをつなぐサービスを提供。2021年には国内版「TRAPOL」を正式リリース。
  • 今回は、このサービスに込めた想いやリリースに至るまでの裏側、今後の展望などについて、設立当時からのメンバーである廣瀬圭祐氏に伺った。

PROFILE

廣瀬 圭祐(ひろせ けいすけ)
TRAPOL合同会社 COO

2018年に関西電力入社。エネルギー環境企画室を経て、2019年からTRAPOLでの勤務を開始。

かけがえのない人―ローカルフレンドとの出会い

「素敵な人との関わりを通じて、新たな価値観に出会える旅をより多くの人に届けたい。」これがTRAPOLの想いです。どんな絶景も、かけがえのない人との出会いにはかないません。自信を持って紹介できるローカルフレンドを探すため、必ず現地へ足を運び、一人でも多くの人に会うことをモットーにしています。現地の方にとって、暮らす地域に観光要素が持ち込まれることは、必ずしもウエルカムとは限りません。最初はなかなか心を開いていただけないこともありますが、こちらの熱意を伝えつつ、相手の地域に対する想いに耳を傾け、丁寧にコミュニケーションを重ねていくことで、ローカルフレンドとの信頼関係を築けるよう努めています。

転機―アメリカでの出会い

ー廣瀬さんがTRAPOLの立ち上げに携わったきっかけを教えてください。
大学生の時、初の海外旅行で一人でアメリカに滞在した際、強盗に遭いました。非常に衝撃的な事件でしたが、親身になって助けてくれた現地の学生と親友になり、お互いの国の文化や価値観などを語り明かすうちに、今までの常識が覆されるのを感じました。この旅先でのライフチェンジングな体験が、今の仕事に繋がっています。

タイトル決めは絶対に妥協しない

一つの旅をつくるまでには、プラン内容、プラン名(タイトル)、価格設定、広告の出し方など、さまざまなことを検討していきます。多くの方に「体験したい!」と思っていただけるよう、全ての工程において、仮説・検証を行い、こだわりぬきながら進めています。もちろん、一番重要なプラン内容については、提供できる体験とお客さまのニーズが上手くマッチするよう、ローカルフレンドとの相談やモニターツアーを通じて、ベストなプランを組み立てていますが、もう一つ力を入れているのがタイトルです。まず、お客さまに見てもらうには、目に留まるタイトルが何より大事であり、並々ならぬこだわりを持ってワードを選定しています。想定するお客さまの興味・関心や流行を踏まえ、思いつく限り関連ワードを書き出しますが、気づけば壁一面のホワイトボードが一杯になるほど。今までで特にこだわったタイトルは、「竹キャンドルに、竹製流しそうめん。伐採からDIYまで満喫する竹尽くしの旅」、「オーガニック農家の暮らしに溶け込む里山流の贅沢スローライフ旅」。考え抜いて決めたタイトルで、多くのお客さまに見ていただけたのかなと思っています。このように地道なプロセスを経て、一つの旅がリリースされるまでは3~4ヶ月ほどかかります。それでも、協力してくださったローカルフレンドを思い浮かべると、リリースした瞬間は達成感よりも、上手く行くだろうか・・・という不安が圧倒的に大きいです。その分、プランに多くの予約をいただけたときは、ほっとするとともに非常に嬉しいです。

広告が外れて大ピンチ。救ったのは・・

先述の「オーガニック・・・」のプランについては、ローカルフレンドが農家の方ということもあり、季節によってできることが変わるので、体験内容をその時々で柔軟に変更したいという要望がありました。一見簡単に対応できそうですが、これが実はすごく難しいオーダーでした。なぜなら、お客さまにとって、どのような体験ができるのか分からない旅には、予約するインセンティブが生まれないからです。旅の予約画面に、季節ごとに体験できることを全部記載する、反対に具体的な内容は記載せず、旅の世界観のみに特化した紹介の仕方にするなど試行錯誤を重ねましたが、いざ広告を打ってみると、ことごとく狙いが外れました。なかなか上手く行かない中で、対応の方向性を何度も変更するなど、ローカルフレンドの方にはご迷惑をお掛けしたと思います。最終的には、季節に応じた体験内容の一部と、世界観(情緒的な価値)を併せて記載することに加え、実際体験できたことは参加者に口コミを書いてもらい、情報としてストックしていく方法を取りました。そうすることで、旅の世界観を伝えながら、体験できる内容が人によって変わるという事実を理解いただくとともに、「自分の時は何が体験できるのか?」というプレミア感を醸成することに成功。最初は上手く行きませんでしたが、諦めずその状況を逆手にとることで、多くの申し込みに繋げることが出来ました。

今後の展望

TRAPOLは最新のアクティビティを体験できるサービスだと捉えられがちです。もちろん、そのような楽しみ方も良いのですが、旅先で自分と全く違う生き方をしている人と出会うことで、今までおさまっていたコミュニティから一歩踏み出し、新たな価値観に出会う絶好の機会にもなります。TRAPOLを通じて、少しでも多くの方に人生観を変える体験をしていただきたいという想いで、これからも一つ一つの旅を丁寧に作りこんでいきたいと考えています。そして、その先にある、「一人一人が自分の『好き』を追い求めて、自信を持って生きていける社会の実現」という目的地に向け、将来的にはTRAPOLという旅の枠を越え、新たな事業創出にも挑戦したいと考えています。これまでは、何でも一人で出来るよう、とにかくスキルを身に付けなければと思っていました。しかし実現したい社会を考えると、あまりに目的地が遠く、一人の力だけでは到底辿り着けません。そのため今は、仲間の大切さを痛感しています。自分の弱みを隠さず、仲間を頼りにしながら、遠くにある目標に向けて一歩ずつ前進していきたいと思います。

(聞き手)

関西電力株式会社 広報室 玉川